このコラムは、Podcastラジオ “社労士吉田優一の「給与設計相談室」” 第124回の配信をもとに書かれた記事です。
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生理休暇は、多くの企業にとって「他社に聞きづらい」テーマの一つです。デリケートな内容を含むため、現場でのコミュニケーションにも配慮が必要となります。本稿では、経営者や労務担当者が押さえておくべき法的要件と、実務上の運用ポイントを整理します。
生理休暇が話題にしにくい理由
生理休暇について「どう対処すればよいかわからない」と悩む企業が多い背景には、性別による生理への理解度の違いがあります。特に男性の立場からは、自身で体験できない痛みや体調不良の程度を、実感を伴って理解することが困難です。
だからといって、安易に本人へ「どの程度辛いのか」と詳しく聞き出すことも、ハラスメントのリスクを考えると容易ではありません。このような現場でのコミュニケーションの難しさが、制度運用のハードルを高めている要因の一つといえます。こうした問題に対処する際は、まず法律の構造を整理し、客観的な基準を持つことが重要です。
生理休暇は任意の制度ではない
前提として正しく認識しておかなければならないのは、生理休暇はすべての会社に存在する休暇であるという点です。慶弔休暇や夏季休暇のように、会社が任意で設定するかどうかを決められる休暇とは性質が異なります。
労働基準法では、生理日に就業が著しく困難な女性が休暇を請求した場合、その者を就業させてはならないと定められています。そのため、就業規則に「生理休暇なし」と定めることや、運用として認めないことは法令違反となるため注意が必要です。女性労働者が安心して働ける環境を整えることは、公正な労務管理を行う上での基本といえます。
生理休暇を有給にするか無給にするか
生理休暇の制度設計において議論となるのが、「有給にするか、無給にするか」という点です。中小企業の多くは無給としています。これは、安易に有給化することで現場に不都合が生じるケースがあるためです。
実際にあった事例として、「女性に活躍してほしい」という社長の善意で生理休暇を有給にした会社がありました。しかし、制度設計に工夫がないまま運用した結果、生理休暇を頻繁に取得するスタッフと、辛い状況でも出勤するスタッフとの間で、給与が同じであることに対して不満が出るようになったのです。こうした女性同士の不平等感や、男性スタッフからの不公平感は、組織の調和を乱すリスクの要因となります。
生理休暇の制度設計と運用のポイント
残念ながら、善意で作った制度であっても、それを悪用する人が出てくる可能性は否定できません。例えば、月初から月末までほとんど出勤せずに生理休暇として申請し、給料を満額受け取ろうとする極端な事例の相談を受けたこともあります。
こうしたリスクを回避しながら、本来の目的である体調不良者の保護を両立させるための方策として、日数制限を設けるという手法があります。例えば、月1回までは有給とし、それを超える日数は無給とする、といった設計です。トラブルを未然に防ぎたいのであれば、最初から無給と設定することも、実務上は非常に無難で現実的な選択肢となります。
生理休暇における診断書の提出の可否について
経営者の方から「生理休暇が不正に利用されているのではないか」という相談を受けることがありますが、その際によく挙がるのが「診断書を提出させたい」という要望です。しかし、これには注意が必要です。生理休暇を申請する際、労働者に厳格な証明義務はなく、同僚の証言程度でも会社は休暇を認めなければならないというのが一般的な解釈だからです。
もし、あまりにも頻繁に取得があり、制度の悪用が疑われるような場合には、「生理の証明」としてではなく、「安全に働ける状態かどうかを確認する」という文脈で、主治医や産業医の意見を求めるのが適切です。強硬に「診断書がなければ認めない」といった態度をとることは、後に労働紛争に発展した際、会社側が著しく不利になる可能性があります。センシティブな問題だからこそ、産業医や顧問社労士等の専門家に相談して、慎重にアプローチするのが望ましいでしょう。
制度運用における留意点
生理休暇の運用においては、以下の点に留意することが重要です。
まず、プライバシーへの配慮です。申請手続きにおいて、本人が詳細な説明を求められることのないよう、簡潔な申請方法を用意することが望ましいでしょう。また、申請情報の管理についても、必要最小限の担当者のみが扱えるようにするなど、情報管理の徹底が求められます。
次に、制度の周知です。生理休暇は法律で認められた権利であることを、全従業員に対して明確に伝えることが大切です。特に新入社員や中途採用者に対しては、入社時のオリエンテーションで説明する機会を設けるとよいでしょう。
さらに、管理職への教育も欠かせません。生理休暇の申請を受ける立場にある管理職が、制度の趣旨や法的背景を正しく理解している必要があります。ハラスメントにならない対応方法についても、定期的な研修を通じて共有することが推奨されます。
まとめ
生理休暇は、単なる休暇制度の一つではなく、女性の健康保護と職場の公平性をどうバランスさせるかという、非常に奥深いテーマです。法律に則った公正で誠実な運用が求められます。
制度設計においては、有給・無給の選択、日数制限の設定、診断書の取り扱いなど、慎重に検討すべき要素が多くあります。また、運用面では、プライバシー保護、適切な周知、管理職教育といった取り組みが不可欠です。
自社の実情に合った制度を構築し、適切に運用していくことで、すべての従業員が安心して働ける職場環境を実現することができるでしょう。専門家の助言を得ながら、継続的に制度を見直し、改善していくことが重要です。
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執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)
社会保険労務士法人ONE HEARTの代表社労士。慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。こうした経営者の負担を軽減しながら、自らも模範となる会社づくりを実践したいという想いから、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立。


