このコラムは、Podcastラジオ “社労士吉田優一の「給与設計相談室」” 第107回の配信をもとに書かれた記事です。
Podcastでは、給与・報酬の設計を中心に、会社を経営していくうえでぶつかる人事の課題についてお話ししています。ぜひフォローをお願いします!
近年、多くの企業で外国人雇用のニーズが高まっています。私が社労士として10年以上お客様と向き合う中で、外国人雇用に関するご相談は年々増加しています。
「外国人の方を雇いたいけれど、何から始めればいいのか」「日本人と同じように採用して問題ないだろうか」といった不安をお持ちの経営者や人事担当者の方は少なくありません。実際、適切な手順を踏まずに進めてしまうと、意図せず法律に抵触してしまうリスクが潜んでいます。
本記事では、外国人雇用において絶対に押さえておくべき基本事項から、現場で陥りがちな落とし穴、そして文化的な背景への理解まで、実務に即したポイントを解説します。
外国人雇用の第一歩は在留資格の正確な把握から
日本国内に居住している外国人であれば誰でも自由に働けるわけではありません。雇用が可能かどうかを判断する分岐点は在留資格にあります。在留資格とは、外国人が日本に滞在し、活動するための根拠となるものです。
たとえば、永住者の資格を持つ方であれば、日本人と同様に仕事内容の制限なく働くことができます。一方で、観光目的などの短期滞在では、アルバイトを含め一切の就労が認められていません。
実務で特に出会う機会が多いのが、技術・人文知識・国際業務という資格です。この資格は、通訳やデザイナー、エンジニアなど、その資格の内容に合致した専門的な業務に従事する場合にのみ認められます。もし、資格の内容とは異なる業務、たとえば単純作業などをさせてしまった場合、不法就労を助長したとみなされ、会社側が大きな不利益を被る可能性があります。まずは、その人が働ける資格を持っているかを確認することが、何よりも優先されるべき最初のステップです。

在留カードの確認と有効性判定を徹底する
在留資格を確認する最も簡単で確実な方法は、本人から在留カードを提示してもらうことです。カードには在留資格の種類や期限が明記されていますが、ここで注意が必要なのが、精巧に作られた偽造カードや、すでに失効しているカードの存在です。
近年、厚生労働省や出入国在留管理庁からも注意喚起がなされていますが、残念ながら不正なカードが出回っているという実態があります。そのため、目視だけで判断するのではなく、公的なシステムを活用した確認を怠らないようにしましょう。
具体的には、出入国在留管理庁が提供している在留カード等番号失効情報照会というサービスがあります。カード番号を入力することで、そのカードが現在も有効なものかどうかを即座に判別できるものです。採用の場において、こうした確認を丁寧に行うことは、決して相手を疑う失礼な行為ではありません。むしろ、法令を遵守し、健全な雇用環境を守るための実施すべき重要なリスク管理です。

留学生雇用は週28時間ルールの厳格な運用が鍵
日本の大学などに通う留学生をアルバイトとして雇用するケースも多いでしょう。留学生は本来、学業を目的として日本に来ているため、原則として就労は禁止されています。しかし、資格外活動許可を得ることで、一定の範囲内で働くことが可能になります。
ここで最も厳格に守らなければならないのが、労働時間の制限です。留学生が働ける時間は週28時間以内と定められています。このルールは非常に厳密です。
よくある誤解として、労働基準法における変形労働時間制のように、ある週は40時間働き、別の週を10時間にして平均化すればセーフではないか、という考え方がありますが、これはアウトです。この週28時間という制約は、労働基準法とは別の、入管法に基づくルールだからです。
また、もう一つの落とし穴が卒業後です。3月の卒業式を終えた後は、たとえ在留期間が残っていても、学生としての活動が終了しているため働くことはできません。卒業日をもって就労ができなくなる点は、本人も会社も十分な注意が必要です。
業務内容とのミスマッチを防ぐための資格確認
働ける資格を持っているから安心と考えるのはまだ早いです。特定の在留資格には、従事できる業務の範囲が細かく決められており、そこから外れることは許されません。
たとえば、教育の在留資格を持つ方が中学校や高校で教師として働いている場合、その人は中学校・高校での勤務については許可されています。しかし、同じ教えるという仕事であっても、その方が民間の英会話学校でアルバイトとして教えることは、原則として認められません。英会話学校での勤務は、一般的に技術・人文知識・国際業務という別のカテゴリーに該当するためです。
このように、一見すると似たような業務であっても、法律上の区分が異なるケースが多々あります。後から実は働けない資格だったと判明した場合、業務がストップするだけでなく、代わりの人員を急いで確保しなければならないなど、経営上の大きなダメージが発生してしまいます。一人ひとりの在留資格を細かく精査し、自社の業務に法的に従事できるのかをあらかじめ判定しておくことが、円滑な運用の鍵となります。

文化や宗教の違いを尊重した持続可能な労務管理
外国人雇用においては、法的な手続きだけでなく、文化や宗教といった価値観の違いへの配慮が、長期的な人材の定着に不可欠です。
たとえば、休暇に対する考え方です。日本には正月の文化がありますが、外国の方にはそれぞれの母国のカレンダーや伝統的な祝祭日があります。家族を大切にする文化圏では、母国の正月に合わせて1週間から2週間の長期帰省を希望されることも珍しくありません。また、家族が病気になった際の優先順位も、仕事を最優先する傾向がある日本的な価値観とは異なり、看病のために一時帰国や休職、時には退職を選択されるケースもあります。
宗教的な配慮も同様です。決まった時間のお祈りが必要な方のためにスペースを確保したり、食事制限がある方のためのメニューを配慮したりといった対応が求められる場面もあります。これらは外国人だからと一括りにするのではなく、一人ひとりのバックグラウンドを理解し、相互理解に努めることが重要です。採用段階で、帰省のタイミングや配慮が必要な事項について丁寧にすり合わせをしておくことが、互いに気持ちよく働くための秘訣と言えるでしょう。

まとめ
外国人雇用は、確かに日本人を雇用する際とは異なる複雑さや難しさがあります。しかし、多様な価値観を持つ人材を迎え入れることは、会社にとって新しい視点や活力をもたらす大きなチャンスでもあります。
重要なのは、法的リスクを確実に管理しながら、相手の文化を尊重し、誠実に向き合う姿勢です。在留資格の確認から日々の労務管理まで、細かなステップを一つずつ確実に踏んでいくことが、トラブルを未然に防ぐ最善の方法です。
私たち社会保険労務士法人ONE HEARTでは、今回お話ししたような外国人雇用に関する複雑な手続きや、会社の状況に合わせた就業規則の整備など、専門的な見地から幅広くサポートを行っています。急成長する組織において、後悔しない働き方の設計を共に進めていきましょう。
労務管理にお悩みをお持ちの方や、外国人雇用を検討されている方は、ぜひ当社のホームページよりお問い合わせください。初回のご相談は無料で承っておりますので、まずはお気軽にご連絡ください。皆様からのご相談をお待ちしております。
また、社会保険労務士法人ONE HEARTはITツールを組み合わせて、効率的な労務管理を作り、会社の発展に貢献します。急成長するスタートアップから、長年続く老舗企業まで、幅広いクライアント様をご支援させていただいています。
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執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)
社会保険労務士法人ONE HEARTの代表社労士。慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。こうした経営者の負担を軽減しながら、自らも模範となる会社づくりを実践したいという想いから、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立。


