コラム

【安全衛生】従業員が50人になる前にやらなければいけないこと

【安全衛生】従業員が50人になる前にやらなければいけないこと

このコラムは、Podcastラジオ “社労士吉田優一の「給与設計相談室」” 第91回の配信をもとに書かれた記事です。

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目次

はじめに

「来月で従業員が50人になります。何か対応が必要ですか?」

このようなご相談をいただくことがよくあります。実は、この質問をいただいた時点で、すでに対応が遅れている可能性が高いのです。

スタートアップや成長企業において、従業員が増えていくことは喜ばしいことですが、労務管理の視点では、従業員数が常時50人になると、労働安全衛生法などの法律に基づき、会社がやらなければならない義務が一気に増えます。

多くの経営者様や人事担当者様が「50人になったら対応すればいい」と考えがちですが、実はそれでは手遅れになるケースが少なくありません。特にIPOを目指している企業や、コンプライアンスを重視する企業にとっては、ここでの対応の遅れが大きなリスクになることもあります。

今回は、従業員50人の壁を乗り越えるために、事前に準備しておくべき重要なタスクと、それを経営にどう活かすかについて解説します。

産業医の選任は「14日以内」という現実

従業員が50人になった時に、最初に対応が必要になるのが産業医の選任です。

法律上、一事業所あたりの労働者数が常時50人以上になった場合、事業者は産業医を選任しなければなりません。ここで注意すべきなのは、その期限です。選任すべき事由が発生した日、つまり50人になった日から14日以内に選任し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。

「50人になってから探す」では間に合わない理由があります。なぜなら、わずか14日間で自社に合った産業医を見つけ、契約を結ぶことは極めて困難だからです。

産業医の資格を持つ医師の数は限られており、さらに自社の社風や業界を理解してくれる先生となると、巡り合うのは簡単ではありません。期限に追われて慌てて選任した結果、形式的な契約になってしまい、実質的なメンタルヘルス対策や職場環境改善につながらないというケースも散見されます。

従業員数が40名を超えたあたりから産業医を探し始めることを強く推奨しています。50人になる前から顧問契約を結び、職場の安全衛生について相談できる体制を作っておくのが理想的な進め方です。

産業医の報酬を単なるコストと考える経営者の方もいらっしゃいますが、優秀な産業医は、休職者の復職判定や健康経営の推進において、経営視点でも大きなメリットをもたらします。コストではなく、会社を発展させるための投資と捉え、余裕を持って信頼できるパートナーを見つけておくべきでしょう。

衛生管理者は社内育成に数ヶ月かかる

産業医と並んで選任が必要になるのが衛生管理者です。

常時50人以上の事業場では、衛生管理者の選任が義務付けられますが、こちらは社内から選任するのが一般的です。ただし、誰でもなれるわけではなく、国家資格である衛生管理者免許が必要です。

衛生管理者の試験は、第一種、第二種ともにしっかり勉強しないと合格できない試験です。もし社内に有資格者がいない場合、人事担当者や総務担当者に取得してもらうことになりますが、勉強期間や試験日程の調整を考えると、数ヶ月のリードタイムが必要です。50人になったので明日から担当してくださいと辞令を出しても、資格がなければ違法状態になってしまいます。

産業医と同様、従業員数が40名台に乗った段階で、労務担当者にそろそろ衛生管理者の資格を取っておいてくださいとアナウンスし、受験準備を進めてもらうのがスムーズです。計画的に資格取得を促すことで、50人に達したその日から、法令に則った衛生管理体制をスタートさせることができます。

健康診断報告とストレスチェックで組織の健康状態を可視化する

従業員が50人以上になると、実施、報告の義務が強化されるのが定期健康診断とストレスチェックです。

誤解されやすい点ですが、定期健康診断や雇い入れ時の健康診断は、従業員数が1人であっても実施義務があります。50人未満だからといって健康診断をしなくてよいわけではありません。

50人以上になると変わるのは、定期健康診断結果報告書を労働基準監督署へ提出する義務が発生する点です。実施するだけでなく、結果を集計し、行政へ報告するプロセスが必要になります。これにより、会社としての健康管理体制がより公的にチェックされることになります。

また、常時50人以上の事業場では、年1回のストレスチェックの実施も義務化されます。これは従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐための仕組みで、高ストレス者への医師面接指導などが制度の骨子です。

ここで経営的に重要なのが集団分析です。個人の結果はプライバシー保護のため経営者でも勝手に見ることはできませんが、部署ごとの集団データであれば閲覧可能です。

営業部は他部署に比べて著しくストレス度が高いといったデータが出れば、そこには長時間労働やハラスメントなどの課題が潜んでいる可能性があります。この結果を元に、配置転換や管理職への指導を行うなど、組織改善のPDCAを回すための貴重なツールとして活用していただきたいと思います。

衛生委員会と休養室の設置

産業医、衛生管理者を選任したら、彼らを構成員として衛生委員会を設置し、月1回開催する必要があります。

衛生委員会では、長時間労働の状況確認、健康診断の結果分析、職場環境の改善策などを話し合います。毎月開催するのは大変だと感じるかもしれませんが、形骸化させずに運用することで、労務リスクの早期発見につながります。議事録の作成と保存も義務付けられているため、事務局となる人事担当者の負担を考慮し、早めに運用ルールを決めておくことが大切です。

意外と見落とされがちですが、非常に重要なのが休養室の設置です。労働安全衛生規則により、常時50人以上の労働者を使用する事業場、または常時30人以上の女性労働者を使用する事業場には、休養室を設けることが義務付けられています。

休憩室とは異なります。休養室は体調不良者が横になって休める保健室のような機能を指します。女性社員が30人以上いれば、全従業員が50人に達していなくても設置義務が生じます。また、原則として男性用と女性用を区別して設ける必要があります。

休養室の設置はオフィスレイアウトに関わるため、後から対応しようとすると物理的なスペース確保が難しくなりがちです。IPO準備中の企業では、労務デューデリジェンスや労働基準監督署の調査でこの不備を指摘され、スケジュールの足かせになるケースもあります。従業員数が増えてきたら、オフィスの移転やレイアウト変更の際に、この要件を考慮に入れるようにしましょう。

まとめ:安全衛生管理は先手が低コスト

ここまで、従業員数50名の壁にまつわる産業医、衛生管理者、健診、ストレスチェック、衛生委員会、休養室について解説してきました。

これらはすべて法律上の義務ですが、単なるやらされ仕事として捉えるのではなく、従業員が安心して働ける環境を作るための土台と考えてみてください。

ギリギリになってから慌てて対応すると、選択肢が狭まり、結果的にコストが高くついたり、リスクを抱えたりすることになります。40名を超えたあたりから準備を始めることで、余裕を持って体制を整えることができます。

社会保険労務士法人ONE HEARTでは、急成長企業の労務体制構築や、IPO準備に向けた労務コンプライアンスの支援に多くの実績がございます。そろそろ従業員が50人になりそうだ、今の労務体制で大丈夫か不安があるという経営者様や担当者様は、ぜひお早めにご相談ください。初回相談は無料です。

また、社会保険労務士法人ONE HEARTはITツールを組み合わせて、効率的な労務管理を作り、会社の発展に貢献します。急成長するスタートアップから、長年続く老舗企業まで、幅広いクライアント様をご支援させていただいています。

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執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)

社会保険労務士法人ONE HEARTの代表社労士。慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。こうした経営者の負担を軽減しながら、自らも模範となる会社づくりを実践したいという想いから、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立。

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