
このコラムは、Podcastラジオ “社労士吉田優一の「給与設計相談室」” 第42回の配信をもとに書かれた記事です。
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2022年、政府が今後5年間でリスキリングに1兆円の予算を投じる方針を発表しました。国がここまでの予算を割くということは、日本企業にとって、リスキリングは重要なものなのでしょうか。今回はリスキリングの重要性とリスキリングを推進することによる経営者のメリットを解説いたします!
リスキリングの重要性
まず、リスキリングという言葉について説明します。スキルという、能力の意味を持つ英語を進行形にし、もう一度や再設定の意味を持つREを付け加えた言葉で、日本語で言うと、「学び直し」という意味を持ちます。
正確な定義としては、「新しい職業をつくるために、今の職業で必要とされているスキルの大幅な変化に適用するために必要なスキルを新たに獲得すること」です。
ここ数年でDXやクラウドなど、IT関係の単語が当たり前のように飛び交い、働き方が激変しています。この環境下では、とあるスキルを持った方が新卒で入社し、そのスキルだけで定年まで働くことは難しくなってしまいました。
そのため、社会人になった後に学び直しの機会を作ることによって、 社会から求められている仕事をできるようにする。これがリスキリングを行う目的です。確かに、社会人をしていると、仕事しながら何かを学ぶことになりますし、お金も時間もかかるので、きちんと機会を与えられないと、なかなか難しいですよね。
政府の予算投入
2022年に政府が1兆円の予算を投じることを決めたことも、学び直しを行うには、政府の後押しが必要と判断した結果と言えます。リスキリングを進めて、成長産業に労働力を活かし、移動させたい、という意図があるのでしょう。
リスキリングというと、IT関連の勉強をするイメージが強いですが、それだけではありません。成長産業にはいろいろな種類があるので、そこに対して学び直し、新しいスキルを得たうえでその成長産業に転職することによって、成長産業の労働力確保と日本全体の成長を確保していこうというのが、このリスキリングの目的です。
具体的な支援として、令和4年12月から厚生労働省が行っている人材開発助成金に「事業展開等リスキリング支援コース」が創設されました。こちらは令和4年~8年度の期間限定の助成金ですが、新規事業の立ち上げなどの事業展開に伴い、事業主が雇用する労働者に対して新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させるための訓練を計画に沿って実施した場合等に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。
OFF-JTにより実施される訓練であること、実訓練時間数が10時間以上であること、事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練もしくは、事業展開は行わないが、事業主において企業内のDX化等を進める場合に これに関連する業務に従事させる上で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練であること等の要件がありますので、該当する場合は、厚生労働省のHPを確認の上、申請を行うとよいでしょう。
経営者のメリット
従業員のリスキリングを推進することは、経営者にとってもメリットがあります。例えば、DXを求められている企業にとっては、従業員のリスキリングを推進することによって、そのITによる業務効率化を図ることができます。業務効率化によって、労働力や業務委託費の削減が可能となり、結果として利益の増加に繋がります。
また、既存の従業員をリスキリングで育成することで、外部から高額な人材を採用する必要がなくなり、組織全体のスムーズなDX化が期待できます。
DXは特定の人たちだけでできるものではありません。管理職のAさんだけがITに詳しくても成立せず、その部下の方も、お客様も含めて全体としてITに慣れていかなくてはいけません。とても大変なことですが、先ほど紹介した助成金を受給しながら行うことで費用面が軽減されるので、ぜひ今のタイミングでリスキリングを推進していきたいですね。
人材流出を防ぐために必要なこと
リスキリングを行った際に考えられるデメリットとしては、スキルが向上した従業員が他社に移ってしまうことです。やはり能力が高ければ高いほど需要がありますので、どうしてもそのリスクは存在します。
しかし、転職のリスクがあるからと何も教えずに活躍の場を奪うべきではありません。能力の高い従業員から選ばれるように、面白そうな新規事業をやってみたり、評価制度をきちんと整備したり、良い会社作りを行うことが重要になります。
まとめ
リスキリングは、個人のキャリアだけでなく、企業の競争力を高め、日本全体の経済成長を後押しする、重要な政策です。経営者は、この波に乗り遅れないよう、リスキリングを推進し、従業員がこの会社で働きたいと思える会社を作っていく必要があります。政府の予算が割り当てられている今、助成金を活用しながら、積極的に従業員のスキルアップと会社環境の整備を実施していきましょう。
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執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)
社会保険労務士法人ONE HEARTの代表社労士。慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。こうした経営者の負担を軽減しながら、自らも模範となる会社づくりを実践したいという想いから、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立。