
このコラムは、Podcastラジオ “社労士吉田優一の「給与設計相談室」” 第84回の配信をもとに書かれた記事です。
Podcastでは、給与・報酬の設計を中心に、会社を経営していくうえでぶつかる人事の課題についてお話ししています。ぜひフォローをお願いします!
休職をしていた従業員が復職する際、どのような状態であれば、会社として復職を許可しても問題ないでしょうか。休職者の病状確認を行わずに復職を認めてしまうと、トラブルに繋がる可能性があります。今回のコラムでは、復職可否の判断を行うために確認するべき事項についてお伝えします!
復職の流れ
まず、通常の復職の流れを見ていきましょう。休職期間の終了が近づいたら、主治医に診断書を書いてもらったり、復職が可能か意見を聞きます。そこで、復職可能という意見をもらい、会社としても異論がない場合は、復職します。
このケースでは、お互い復職を望んでいて、主治医も復職を認めていますので、復職できる可能性が高いでしょう。気をつけなくてはいけないのは、会社側は復職させるのは難しいと考えてい一方、休職者や主治医が復職可能と主張している場合です。
会社と休職者の対立
メンタル不調の方に起こりやすい事例を紹介しますとある休職者の方は、朝起きることができないため、会社からしてみると、復職は難しいと考えていました。しかし、本人は、無職になるのは怖い、今の会社で引き続きやっていきたいという理由で、病気が完治していないのにもかかわらず強く復職を望むケースがあります。。このような場合、会社としてどのように対応すれば良いのでしょうか。
復職の判断は客観的に行う
会社と休職者の意見が対立した場合、特に復職の判断を客観的に行うことが重要です。会社にとっては後述の安全配慮義務違反や不当解雇に問われるリスクがあります。労働者にとっては、復職の判断が間違っていると退職を余儀なくされ人生が大きく狂うというデメリットがあるためです。
会社は、従業員を安全に就業させることを義務付けられています。これを安全配慮義務と言います。
もし、休職者の病状を詳しく聞かないまま復職させて、十分に回復していない状態で仕事をしていたことが原因で病気が悪化したり、新しい怪我、新しい病気が出てきてしまったりすると、安全配慮義務違反を問われる可能性があるためです。
客観的な判断をするために、まず主治医の診断書や意見を聞きます。次に産業医に相談することをおすすめします。産業医とは、事業場において労働者の健康管理等について、専門的な立場から指導・助言を行う医師を指します。1事業所に50人以上従業員がいる場合は、産業医専任義務がありますので、産業医に事情を詳しく説明して、復職できるかの意見を聞いてみましょう。
産業医がいない場合は、顧問社会保険労務士や顧問弁護士などの人事労務の専門家に相談しましょう。自社の業務を理解したうえで専門的な見解を提示してくれますので、客観的な判断ができるでしょう。
内容を深掘りする必要性
会社は、医師の意見を十分に考慮したうえで、復職させるかどうかを最終的に判断しなくてはなりません。そのため、会社と休職者や、主治医と産業医の意見が対立している際は、より詳細に事実関係を調査する必要があります。
例えば、運転業務など、常に集中しなくてはならない業務として復職するのと、事務職として復職するのとでは、病気の内容や病状によって復職の可否の判断が変わってきます。メンタル不調の病気で、突発的に眠気が襲ってきてしまう症状がある方だと、居眠り運転をして大事故に繋がる可能性があります。トラック運転手などに復職させるのは危険だと判断することができます。
しかし、実際に復職の相談に乗ると、主治医が復職後の業務を知らないなど、正しく事実関係を把握しないまま、復職可能と診断し、診断書を出ているケースがあります。そのため、会社と主治医の意見が対立したら、主治医や産業医などの専門家に前提条件を詳細に伝えることで客観的に判断できる可能性が高まります。「当社の業務はこのような内容で、復職した後はこの業務をやっていただく予定だけれども、それでも復職できるのでしょうか。」という主旨の文章で丁重に説明すると、診断書が修正されることもあります。
出てきた診断書を鵜吞みにするだけではなく、自社の業務を適切に行うことができるかという観点で、復職の可否を判断することが重要です。そうすれば、会社にとっても、ご本人にとっても良い結論が出ると思います。
まとめ
最終的に、復職をさせる、させないという判断を行うのは会社です。しかし、これは会社側の都合で復職の判断をすることができるという意味ではなく、休業者の意向、主治医や産業医の意見を聞いたうえで、会社が客観的に判断を行い、決定するものです。
復職を検討しなければならない時がきたら、まずは休職者の病状を確認し、事実関係の整理を行いましょう。問題なく業務を遂行することができると判断できるまで、産業医や社会保険労務士と協力し、休職者に向き合っていくことが必要です。
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執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)
社会保険労務士法人ONE HEARTの代表社労士。慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。こうした経営者の負担を軽減しながら、自らも模範となる会社づくりを実践したいという想いから、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立。