このコラムは、Podcastラジオ “社労士吉田優一の「10分で労務がわかるラジオ」” 第190回および第191回の配信をもとに書かれた記事です。
▼第190回
▼第191回
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「毎年、気づいたら法改正が来ていて、対応に追われてしまうんです」
こうした声を、経営者や労務担当者の方から繰り返し耳にします。日常業務の合間に法改正の動向を追い続けるのは、容易なことではありません。しかし2026年以降は変化の密度が高く、早期に全体像を把握しておかなければ、気づかないうちに対応が後手に回るリスクがあります。
今回は、施行が確定している改正から、現在政府内で議論の進む将来の動向まで、経営者・労務担当者の方が今から意識しておくべき主要テーマを整理してお伝えします。
カスタマーハラスメント対策と就活セクハラ防止の義務化|2026年10月施行
2026年10月には、ハラスメント対策に関する2つの義務化が予定されています。
まず、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策の義務化です。カスハラとは、顧客や取引先による著しい迷惑行為を指します。些細なミスに対して過剰に激高し、「土下座しろ」と要求するような行為が典型例です。これまで企業の対応は各社の裁量に委ねられていましたが、義務化によってクレーム対応マニュアルの策定や従業員向け相談窓口の設置が明確に求められるようになります。対応を放置すれば安全配慮義務違反のリスクも生じるため、制度整備は早いほど安心です。
次に、就職活動中の求職者・応募者に対するセクシュアルハラスメント(就活セクハラ)防止措置の義務化です。採用の場における立場を利用した悪質な行為を防ぐため、就業規則への明文化や、既存の社内研修への求職者への配慮の組み込みが求められます。「採用活動は社外の話」という認識では、対応が遅れてしまいます。中小企業を含め、採用フロー全体を今一度見直しておくことが重要です。
障害者雇用率の引き上げと在職老齢年金の緩和|2026年施行
2026年には、採用・人員計画に直接影響する制度変更が2つ予定されています。
2026年7月から、障害者雇用の法定雇用率が2.5%から2.7%に引き上げられます。対象となる事業主の範囲も拡大し、従業員数37.5人以上の企業が新たに義務の対象となります。採用・受け入れ体制の整備には相応の時間がかかるため、1〜2事業年度前から準備を始めることが現実的な目安になります。
2026年4月からは、在職老齢年金の減額基準が緩和されます。在職老齢年金とは、在職中に厚生年金を受け取る高齢者に対して、収入が一定水準を超えると年金を減額する仕組みです。今回の緩和により、高い能力を持つシニア層が給与水準を意識して働き方を控えるケースが減り、ベテラン人材がより活躍しやすい環境が整います。シニア活用を人材戦略の柱に据えている企業にとっては、採用・処遇設計の両面で追い風となる変更です。
ストレスチェックの義務化拡大|全事業所へ(2028年4月まで)
現在、ストレスチェックは従業員数50人以上の事業所に義務付けられていますが、遅くとも2028年4月までに、中小零細企業を含むすべての事業所へ対象が拡大される見込みです。
運用上の重要な注意点として、ストレスチェックの回答内容は人事権を持つ経営者や上司が直接閲覧することができません。社内だけで制度を完結させようとすると仕組みの設計が難しくなるため、外部専門機関への委託や、既存の労務管理システムへのオプション追加などを早めに検討しておくことをお勧めします。
義務化への対応は直前に慌てて整えるものではなく、余裕をもって選択肢を比較・検討するものです。また、メンタルヘルス対策の充実は、採用力や従業員定着率にも影響を与えるテーマです。法的義務としてだけでなく、職場環境の改善という視点からも、今から自社の実情に合った体制を考え始めることに意義があります。
労働基準法の大改正案|進行中の議論と今後の展望
ここからは、現在政府内で検討が進んでいる、まだ確定していない内容についてお伝えします。将来の人事・労務制度を設計するにあたっての参考としてご覧ください。
現時点で議論の俎上に載っているテーマは多岐にわたります。労基法の事業所基準が法人単位、連続勤務に対する上限規制の設置、法定休日の特定義務化、勤務間インターバル制度の義務化、有給休暇取得時の賃金算定方式の統一、業務時間外の連絡を制限するいわゆる「つながらない権利」のガイドライン整備、副業・兼業者の割増賃金計算ルールの見直し、特定業種における労働時間特例の廃止など、いずれも実務への影響が大きいテーマばかりです。
これらは早ければ2027年4月頃の施行になると私は想定しています。確定情報ではありませんが、方向性を把握したうえで就業規則や労働時間管理の仕組みを整えておくことで、将来の制度改訂の際の手戻りを最小限に抑えることができます。なお、今後の政権運営の方向性によって政策の優先順位が変わる可能性もあるため、動向を継続的に確認しながら対応を検討していただくことが賢明です。
まとめ|2026年以降の法改正対応はONE HEARTにご相談ください
今回取り上げた法改正は、カスハラ対策・就活セクハラ防止の義務化(2026年10月)、障害者雇用率の引き上げと在職老齢年金の緩和(2026年)、ストレスチェックの義務化拡大(2028年4月まで)、そして今後の労働基準法改正という4つの大きな流れに整理できます。
いずれも採用・定着・職場環境に直結するテーマです。「まだ先の話」と思っていても、制度整備には相応の準備期間が必要です。早い段階で全体像を把握し、優先順位をつけて対応を進めることが、結果的に企業の負担を抑えることにつながります。
社会保険労務士法人ONE HEARTでは、成長途上の企業が安心して事業に集中できるよう、複雑化する法改正への対応と、実態に即した労務体制の構築を専門的にサポートしています。「自社はどこから手をつければよいのか」という段階からでも、お気軽にご相談ください。初回のご相談は無料で承っております。
また、社会保険労務士法人ONE HEARTはITツールを組み合わせて、効率的な労務管理を作り、会社の発展に貢献します。急成長するスタートアップから、長年続く老舗企業まで、幅広いクライアント様をご支援させていただいています。
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執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)
社会保険労務士法人ONE HEARTの代表社労士。慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。こうした経営者の負担を軽減しながら、自らも模範となる会社づくりを実践したいという想いから、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立。


