コラム

【業種別】飲食店の労務管理 (経営編)

【業種別】飲食店の労務管理 (経営編)

このコラムは、Podcastラジオ “社労士吉田優一の「10分で労務がわかるラジオ」” 第184回の配信をもとに書かれた記事です。

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目次

飲食店が長く続くかどうかを決める「コスト意識」の本質

「あれほど賑わっていたお店が、気づけばなくなっていた」

こんな光景を、街を歩きながら目にしたことのある方がいらっしゃるのではないでしょうか。飲食業界は廃業率が高いことで知られており、綿密な出店計画を立てた大手チェーンでさえ退店を余儀なくされることがあるほど、経営の難易度は決して低くありません。

多くの飲食店経営者の方とお話しする中で、長期にわたって店舗を存続させている方々にはある共通点があることに気づきます。それは、高い「コスト意識」を持ち合わせているという点です。飲食店は店舗という物理的な空間の中で営まれ、客席数によって売上の上限がある程度決まっています。デジタルサービスのように売上が青天井で伸び続けるビジネスとは、根本的に構造が異なります。

この限られた売上の中で利益を出し続けるためには、人件費・地代家賃・原材料費という三大コストをいかに一定の範囲内に収め続けるかが、経営の核心となります。「コストが抑えられているからこそ、利益が生まれる」という意識を持てるかどうか。その一点が、飲食店経営の明暗を分けると言っても過言ではありません。

人件費コントロールの鍵となる「適切な人員配置」

飲食店の労務管理においてコスト意識を現場へ落とし込む際、最も重要なテーマとなるのが「人件費のコントロール」です。ただし、これは単純に人を減らすという話ではありません。時間帯ごとの「適正人数」に合わせてシフトを設計し、過不足のない人員配置を実現することが本質です。

ピークタイムには5名必要な店舗でも、開店直後であれば3名で十分なケースはよくあります。人が多すぎれば人件費が膨らんで収益を圧迫し、少なすぎればお客様が呼んでもスタッフが来ない、注文が通らないといった場面が生じ、お客様の不満がSNSへの低評価という形で可視化されます。

適切な人員が配置されていれば、サービスの質が向上するだけでなく、絶妙なタイミングで次の一杯をお勧めするといった積極的な接客も生まれ、結果として客単価の押し上げにもつながります。労務管理とは、経営者が後回しにしがちな事務作業ではなく、店舗の売上を直接左右する経営戦略そのものだと私は捉えています。

シフト管理を安定させる「雇用契約の明確化」

人員配置を最適化しようとするとき、多くの経営者が直面する壁のひとつが、スタッフとの「契約の曖昧さ」です。求人票や雇用契約書に「シフトによる」とだけ記載していると、誰がいつ出勤するかが不透明なまま運用されがちになります。その結果、「この曜日は人手が足りないが、あの曜日は余っている」という慢性的な過不足が生じます。

長期にわたって安定した店舗運営を続けている経営者ほど、各スタッフと「週何回、何時から何時まで」という就労条件を可能な限り明確に取り決め、シフトを計画的にコントロールしています。人手不足が深刻な昨今、予定通りに人員を確保することが容易でないのは事実です。それでも、曖昧な運用を惰性で続けるか、スタッフとの信頼関係を丁寧に積み上げながら明確な契約関係を整えていくか。この姿勢の積み重ねが、安定して機能する店舗とそうでない店舗の差を生み出します。

雇用契約を明確にすることは、スタッフの定着やトラブルの未然防止にも直結します。誠実な契約関係の構築こそが、安定した店舗経営の土台です。

多店舗展開で注意したい「勤怠管理システム」の選び方

複数店舗を運営する経営者にとって、各店舗の収支をリアルタイムで把握することは経営上の重要な関心事です。近年では注文管理やシフト管理が一体となったレジシステムが普及し、当日の売上と人件費を即座に照合して目標達成状況を確認できる環境が整ってきました。

ただし、ここには労務管理上の落とし穴があります。レジシステムに付属する勤怠機能は、飲食業界で広く導入されている「1か月単位の変形労働時間制」のように集計ルールが複雑な制度には、十分に対応できないケースが少なくありません。変形労働時間制とは、一定期間の中で労働時間を柔軟に配分できる制度ですが、集計を誤ると意図しない未払い残業が発生するリスクを有しています。

収支管理の利便性を優先してレジ付属の機能で賄うか、「KING OF TIME」といった専門の勤怠システムと組み合わせて管理を徹底するか、これは経営判断を要する場面です。利便性と精度をどう両立させるかが、多店舗経営における労務管理の要諦と言えます。

見落としがちな「労働時間の範囲」と潜在的リスク

飲食店の現場では、日常の細かな時間が「労働時間に該当するかどうか」という論点が、想定外のリスクへと発展することがあります。制服への着替えにかかる時間、開店前のミーティング、あるいは自宅や店舗でマニュアルを習得する時間などが、その典型例です。

業務命令に基づいて行われる時間や、業務遂行に必要な準備・学習に充てた時間は、労働時間とみなされる可能性が高いものです。こうした時間を管理対象外のまま放置すれば、知らぬ間に未払い残業が積み上がり、後になって大きな問題へと発展しかねません。先述した変形労働時間制の運用ミスとあわせて、多店舗展開を進める飲食店で散見される課題です。

リスクを未然に把握し、適切な労働条件を整備することは、スタッフが安心して長く働ける職場をつくることに直結します。法令を正しく理解した上で健全な職場環境を維持することが、信頼される店舗であり続けるための基盤となります。

まとめ

飲食店における労務管理は、コスト圧縮の手段ではなく、利益を生み出し店舗を存続させる経営の根幹です。適切な人員配置、明確な雇用契約、正確な勤怠集計、そして労働時間の範囲に対する正しい認識。これらが揃ってはじめて、収益力と働きやすさを両立した店舗運営が実現します。

現在のシフト運用や勤怠管理に課題を感じている方、多店舗展開に伴って労務管理が複雑化してきた方、変形労働時間制の運用が適切かどうか確認したい方は、ぜひ一度ご相談ください。

社会保険労務士法人ONE HEARTでは、飲食業界をはじめとする各業種の労務管理課題に、公正・誠実な立場で向き合っています。初回相談は無料ですので、まずはホームページよりお気軽にお問い合わせください。

また、社会保険労務士法人ONE HEARTはITツールを組み合わせて、効率的な労務管理を作り、会社の発展に貢献します。急成長するスタートアップから、長年続く老舗企業まで、幅広いクライアント様をご支援させていただいています。

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吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)

執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)

社会保険労務士法人ONE HEARTの代表社労士。慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。こうした経営者の負担を軽減しながら、自らも模範となる会社づくりを実践したいという想いから、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立。

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