このコラムは、Podcastラジオ “社労士吉田優一の「10分で労務がわかるラジオ」” 第173
回の配信をもとに書かれた記事です。
Podcastでは、給与・報酬の設計を中心に、会社を経営していくうえでぶつかる人事の課題についてお話ししています。ぜひフォローをお願いします!
「問題のある社員への対応を続けているのですが、いつ終わるのか見通しが立たなくて…本当に疲れました」
そう打ち明ける経営者の方が、後を絶ちません。ハラスメントを繰り返すスタッフ、なかなか成果につながらないメンバー、職場の空気を乱す社員。問題の性質や深刻さはさまざまでも、対応に疲弊する経営者の表情は似ていたりします。問題社員対応において、経営者はいったいどこに最もストレスを感じているのか。社労士として多くの現場に関わってきた立場から、その構造を整理します。
問題社員対応のストレスの正体は「終わりが見えない」こと
結論を先にお伝えすると、経営者が最も疲弊するのは「解決の時期が見通せない」という状態そのものです。
多くの経営者はハイパフォーマーです。受験勉強も、資格取得も、事業の立ち上げも、明確な期限を設けてそこから逆算し、行動することで結果を積み上げてきた方が多い印象を持っています。「いつまでに何をなすか」を自然に考えられることが、その方の強みであり、成功体験の核心にあります。
しかし、問題社員対応は、その成功体験が通用しない稀有な局面です。相手があることである以上、意識や行動が変わるタイミングは一方的には決められません。強引に期限を設定すれば、今度は「指導の行き過ぎ」や「パワーハラスメント」という別のリスクが生じます。これまで積み重ねてきた問題解決のアプローチが、ここでは活かせない。打ち手が定まらないまま時間が過ぎていく感覚が、経営者を静かに、しかし確実に消耗させていきます。
問題社員対応には、ほとんどの場合「終わり」がある
ですが、問題社員への対応が永遠に続くわけではありません。これまでの経験を振り返ると、誠実に向き合い対話を重ねた場合、多くは数ヶ月のうちに解決の目途が立つことが多いです。なかには1回の面談で関係性が好転するケースもあります。
「この先もずっと同じ対応を続けなければならないのか」という閉塞感に陥っている経営者でも、この話をお伝えするだけで表情が和らぐことがあります。期限を定められないもどかしさと、出口が見えない焦り。この二つが重なることで、ストレスは必要以上に大きくなります。逆にいえば、「適切に向き合えば、いずれ必ず区切りがつく」という認識を持つだけで、対応への構えがおのずと変わってくるのです。
長期化しているように感じても、適切なアプローチを続けることで状況は変化します。経営者自身が精神的に安定した状態で臨むことが、対応の質にも直結します。
問題社員対応の第一歩は「期待成果」の言語化
では、実際の対応はどこから始めるべきか。最初に取り組むべきは、「この会社で求める期待成果を、本人と明確にすり合わせる」ことです。
「自社での合格点とはどのような状態か」。この認識が、会社側と社員側でかみ合っていないケースが驚くほど多くあります。経営者の目には「自発的に動くのが当然」「目標を超えることが前提」と映っていても、その社員は「指示に応じて仕事をこなせば、契約上の義務は果たしている」と考えているかもしれません。どちらが正しいという話ではなく、労働基準法の観点では、指示に従って働くことが労働者に求められる基本的な役割とされています。法律的な枠組みと職場への期待値の間には、こうした構造的なずれが存在します。
だからこそ、「自社ではこういう姿勢や貢献を期待している」という内容を、面談の場できちんと言葉にして伝えることが不可欠です。あいまいなまま話し合いを重ねても、認識のずれは埋まらず、同じ問題が繰り返されるだけです。
本来は入社時点で丁寧に伝えるべきことですが、採用に追われてその機会を逃したというケースも少なくありません。ハラスメントなど明確に問題のある行動への対応においても、「その行動をやめること」だけでなく「チームにこう貢献してほしい」という前向きな期待を組み合わせて伝えることが、対話の質を高めます。批判や指摘だけではなく、期待を示すことで、社員が自身の可能性を見直すきっかけにもなります。
議論が膠着したとき、経営理念が場を動かす
期待成果を伝えようとすると、「会社にも問題がある」と反論されることがあります。研修の不足、評価基準のあいまいさなど、会社側の至らない点を持ち出され、話し合いが互いの欠点を指摘し合う展開になってしまうケースです。こうなると議論は膠着し、前進が難しくなります。
こうした局面で力を発揮するのが、経営理念や経営目標を対話の軸に据えることです。「私たちはこういう会社を目指している」という共通の方向性を示すことで、「どちらが悪いか」という二項対立から「その目標に向かうために、互いに何ができるか」という視点へと議論を引き上げることができます。
会社側に改善すべき点があれば真摯に受け止める姿勢を示しながら、「共に前進しよう」という流れをつくる。経営理念という共通の軸は、膠着した場を動かす静かな力を持っています。問題の解決を「勝ち負け」ではなく「組織として前に進むための対話」として位置づけることで、双方にとって納得感のある着地点を探りやすくなります。
まとめ
問題社員対応で経営者が感じる最大のストレスは、「終わりが見通せない」という感覚に起因します。期限を切って成果を積み上げてきたからこそ、この種の対応に独特の消耗感を覚えるのは、ある意味で自然なことです。しかし適切に向き合えば、多くの場合は数ヶ月で区切りがつきます。対応の糸口は「期待成果の言語化」と「経営理念を軸にした対話」にあり、この二つを意識することで、状況は着実に変わり始めます。
社会保険労務士法人ONE HEARTでは、問題社員対応に悩む経営者・労務担当者の方からのご相談を承っています。「何から手をつければよいかわからない」という段階からでも、具体的な対応の方向性を丁寧に整理いたします。初回相談は無料ですので、まずはホームページからお気軽にご連絡ください。
また、社会保険労務士法人ONE HEARTはITツールを組み合わせて、効率的な労務管理を作り、会社の発展に貢献します。急成長するスタートアップから、長年続く老舗企業まで、幅広いクライアント様をご支援させていただいています。
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執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)
社会保険労務士法人ONE HEARTの代表社労士。慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。こうした経営者の負担を軽減しながら、自らも模範となる会社づくりを実践したいという想いから、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立。


