このコラムは、Podcastラジオ “社労士吉田優一の「給与設計相談室」” 第12回の配信をもとに書かれた記事です。
Podcastでは、給与・報酬の設計を中心に、会社を経営していくうえでぶつかる人事の課題についてお話ししています。ぜひフォローをお願いします!
ここだけの話ですが、経営者からの相談で意外と多いのが「解雇」に関する相談です。
「解雇したい従業員がいるのだけど、注意する点はありますか?」そんな質問をいただいた時に必ずお伝えしているポイントをまとめました。
大前提:「解雇」はいかなる理由でもおすすめしません!
「従業員の態度が悪いから」、「ウチの会社とは合わないから」などの理由で解雇を検討することは、どの経営者も一度は経験することかもしれません。実際に当社にも、同じような相談が寄せられています。
本題に入る前に、「解雇」と「自己都合退職」について簡単に説明します。
「解雇」とは、従業員との合意なく会社から従業員への一方的な通告により雇用契約を終了させることです。
「自己都合退職」とは、もっともポピュラーな退職方法です。「転職希望」や「家庭の都合」などを退職理由とし従業員が退職届を出し、会社が承諾し、両者が合意した上で、従業員は退職します。
「解雇」と「自己都合退職」の違いは両者が合意しているかどうか、という点です。
「解雇」は合意していないため、あとで揉める可能性があります。一方、「自己都合退職」は両者が合意しているため、揉める可能性が低いです。
「解雇」を語る上で一番重要なことは、世の中の常識に照らし合わせて、よほど酷いケースでないと、解雇できないという点です。中小企業の経営者が解雇したいと思う多くのケースでは解雇できません。例えば、「コミュニケーション能力が低い」や「仕事の成果がいまいち低い」という理由ぐらいでは解雇することは、難しいと考えてください。
もし解雇したいと思ったら、まずは自社と合わないと感じる行動や言動を客観的に書き出してみることをおすすめします。
たとえば、組織やチームメンバーに対して敬意を持って話してくれない、言葉に棘がある、相手の気持ちを考えられない、といった従業員の発言や行動は、どの会社でもあることだと思います。このような理由で解雇することは、基本的に難しいので、まずは対象となる従業員に助言や指導するところから始めるのがおすすめです。
迷惑行為や、周りの人にパワハラを行っている従業員には注意指導が必要です。
指導を行っても改善されない場合は、解雇できるかもしれません。しかし、解雇はいかなる場合でもおすすめしません。
その理由は次の見出しで説明します。
勝っても負けても、得られるものはない
解雇された従業員は、どのような行動に出るでしょうか?もちろんそのまま退職するケースもありますが、裁判所に解雇通知書を持って行き、司法の判断を仰ぐケースがあります。
解雇が有効と認められた場合
たとえ解雇が有効と認められ、希望通り従業員を解雇できたとしても、売上が伸びたり会社の経営がうまくいくわけではありません。
裁判で争っている間も、中小企業だと社長が弁護士対応しなければならないケースが多いと思います。そのような場合、社長が会社にかける時間が削減されてしまいます。
解雇が無効と認められた場合
解雇が無効だと決定されると、会社の損害は甚大です。
裁判費用に加え、弁護士との相談費用や時間もかかります。さらに解雇していた間の期間の給与を支払わなければなりません。労働者が復職を希望した場合、一度裁判で争った人を復職させ、一緒に働くことになります。これは大変なことだと思います。
そうした時には労働者と話し合いを持ち、多額の解決金を支払ったりして、退職をお願いすることになりますが、その際の金銭的な負担は莫大です。
以上のように、裁判で勝っても負けても会社に利益はありません。
従業員の行動や言動が法に触れていたり、何度指導を行っても改善されない場合は弁護士に相談しましょう。会社として解雇や処罰を行うなどして、厳正な態度で対応をするべきです。
大事なことは「話し合い」
解雇を検討する前に、まずは話し合いをしましょう。
「うちの会社で働いてどうですか?」とフラットな形で面談してみると、従業員の方から相談してくれるケースはよくあります。そうすれば会社としても解決できる方法や活躍できる場所を一緒に考えることができます。解雇という手段を取らなくても円満退職できるかもしれません。
まとめ
今回のコラムでは「解雇」したいと思った時に思い出していただきたい行動をご紹介しました。結論はずばり「話し合い」です。
会社として従業員を解雇することは可能ですが、いかなる理由があろうとも私は決しておすすめしません。
まずは辞めさせたいと思った理由を整理し、フラットに面談をしてみてください。
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社会保険労務士法人ONE HEARTはITツールを組み合わせて、効率的な労務管理を作り、会社の発展に貢献します。急成長するスタートアップから、長年続く老舗企業まで、幅広いクライアント様をご支援させていただいています。
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執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)
慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。効率的な労務管理の手法を広めつつ、自ら会社経営を実践するために社会保険労務士法人ONE HEARTを設立し独立開業。