このコラムは、Podcastラジオ “社労士 吉田優一の「給与設計相談室」” 第17回の配信をもとに書かれた記事です。
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最近あいている時間にアマゾンプライムでアニメや映画を見ることにはまっています。その中でもキングダムというアニメが好きなのですが、この物語の中には仕事に通ずるところがたくさんあると感じています。
今回はキングダムを通じて取り入れた方がよいと思う制度、「論功行賞」について解説いたします!
論功行賞とは
論功行賞の説明を行う前に、キングダムについて簡単に解説させていただきます。キングダムとは、春秋戦国時代と呼ばれる紀元前の時代に、秦という中国の一国の王様が戦争を経て中華統一を目指す物語です。主人公の信という少年は、名もない下僕の身分から天下の大将軍に憧れて、秦の王様の下で武勲をあげながら成長していきます。
物語中の論功行賞とは、戦が終わった後に武将や兵隊を表彰する制度のことをいいます。強い武将を倒した人、大きな武勲を立てた人が大勢の前で表彰され、金の授与や昇格が行われるわけです。信が戦場に出陣し、強い敵将を倒した後に執り行われる論功行賞のシーンは、キングダムを最初から見ている視聴者として、とても胸が熱くなります。表彰の制度というのは、この時代からあったのですね。
表彰制度とは
日本で行われている表彰制度とは、なんらかの功績について従業員を褒めたたえる制度です。よくあるのは、営業成績が優秀な方や永年勤続している場合、社会的功績を残した際に表彰を行うというものです。
表彰制度は必ず取り入れなくてはならない制度ではないため、取り入れている企業と取り入れていない企業があります。中小企業で取り入れているところは意外と少なく、大企業や伸びているスタートアップ企業では取り入れていることが多い印象です。
中小企業でこそ導入してほしい理由
私は中小企業こそ、表彰制度を取り入れるべきだと考えています。というのも表彰制度は、労働者の士気を高め、会社の業績や生産性の向上等を図ることを目的として設けるものだからです。大企業と比べると、中小企業の方がどうしても福利厚生や給与が少ない傾向にあります。従業員にやりがいを持って働いてもらうために、金銭以外の報酬を意識して経営を行っていきましょう。
例えば、従業員に難しい仕事に取り組んでもらったとします。それだけで終わってしまうとただのやりがい搾取になってしまいますが、その結果「難しい仕事に取り組んだ」という給与以外の報酬である経験を手に入れることができます。
さらに表彰されることによって、会社がその従業員の努力を認めていることが明確になり、ほかの従業員からも頑張りを認知してもらうことができるので、従業員はやりがいを感じることができるでしょう。
少し話は変わりますが、最近はSNSが普及しており、情報の発信を通じて多くの人が承認欲求を持っていると感じています。褒められたらうれしいというのは、大人も子供も関係ありません。表彰制度があることによって承認欲求を満たすことができ、仕事に対する士気も上がっていくでしょう。
表彰を行うことが難しい場合
従業員の人数が少ないなどの理由で表彰を行うことが難しい会社はどのようにすればよいでしょうか。そのような場合には、給与を上げたり賞与を出したりするときに、なぜこの金額になったのかを伝えて従業員の頑張りを認めることが大切です。
以前、こんな事例に出会いました。社長がよかれと思って給与を上げた従業員さんがいましたが、その給与は会社の給与水準よりもだいぶ高いものでした。社長は今後の仕事への取り組みに対して期待を込めて給与を上げたのですが、そのことをきちんと伝えていなかったために、従業員は、自分は仕事ができると勘違いしてパワハラをするようになってしまったのです。これは珍しいケースではありますが、給与が上がった理由をきちんと伝えていなかったがために、勘違いが生まれてしまうことがあります。表彰制度がない場合は、昇給の際になぜ給与が上がったのか、理由をしっかりと説明することによって、頑張りを認めたり、期待している役割を知ってもらったりすることが大切になります。
まとめ
- 論功行賞とは、功績の有無や大きさに応じてふさわしい賞を与える表彰制度
- 金銭以外の表彰制度でも社員のモチベーションアップに繋がる
論功行賞は昔から行われていたこともあり、従業員のモチベーションを上げるにはとても良い制度です。表彰制度を導入する場合は就業規則に記載しなくてはならないので、多少の手間はかかってしまうかもしれませんが、褒められたり認められたりすることによって従業員はやりがいを感じることができるでしょう。会社が重きを置いていることに対して表彰制度を取り入れると企業理念に沿った運営をしやすくなるため、経営者の方のためにも表彰制度を取り入れることをお勧めいたします。
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執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)
慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。効率的な労務管理の手法を広めつつ、自ら会社経営を実践するために社会保険労務士法人ONE HEARTを設立し独立開業。