コラム

【未払い賃金】「インターンにすれば給与は支払わなくてよい」は本当か

【未払い賃金】「インターンにすれば給与は支払わなくてよい」は本当か

このコラムは、Podcastラジオ “社労士 吉田優一の「給与設計相談室」” 第32回の配信をもとに書かれた記事です。

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リスナーさんからこのような質問がありました。「学生インターンの受け入れをしようと考えており、1か月程度、実際の業務に携わってもらう職場体験のような形を想定しています。この場合、給与を支払う必要はありますか?」

職場体験と聞くと給与を支払わなくてもよい印象を持ちますが、本当にそれでよいのでしょうか?今回はインターンの給与について、どのような場合に支払いが必要になるのか、回答いたします!

目次

インターンとは

よく耳にするインターンとは、就職活動市場で使用されている、職業体験を指すインターンシップの略です。文部科学省等が出している「インターンシップ推進に当たっての基本的考え方」では、我が国の大学等におけるインターンシップについては、「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」として幅広くとらえられている。と記載されています。

インターンに参加すると、その企業や職種について詳しく知ることができます。自分に向いている職種を探すことや、実際に参加した企業の選考に進むかどうか判断するために、インターンに参加する学生は、近年増加傾向にあります。

学生インターンに給与は必要?

学生インターンに給与の支払いが必要かどうかは、インターンの内容によって異なります。企業が学生インターンの受け入れを行う理由と一緒に、詳しく見てみましょう。

企業が学生インターンを受け入れる理由は、大きく2つあります。1つ目は労働力の確保です。労働力不足は深刻な社会問題のため、インターンを実施することによって、学生に業務を担ってもらうことを目的としています。この場合は、労働基準法の労働者として最低賃金が適用されるため、それ以上の給与を支払わなくてはなりません。

2つ目は採用を目的としている場合です。就職活動が解禁になってから企業説明をしていると多くの会社の中に埋もれてしまいます。インターンを行うことで、早期から企業の魅力を学生に伝えることができ、優秀な人材を確保することができます。このように、インターンの目的が企業紹介や職場見学といった要素が強いものであれば、雇用契約ではないため、給与を支払わなくても良いと考えられます。

また、後者の目的の場合でも、リスナーさんからのご質問にあったように、実際に仕事を経験してもらうこともあります。1か月程度、実際の業務に携わってもらうとなると、初めは企業の紹介だったとしても、その後はほかの従業員と同じ業務を行うことが推測されるため、給与の支払いは必要になるでしょう。

契約の形態

それでは、いざ学生インターンを受け入れることが決まった時、雇用契約と業務委託契約のどちらを締結すればよいのでしょうか。学生インターンの場合は、雇用契約の形態に該当することが多いため、雇用契約を締結するのが良いと考えます。

業務委託契約を結ぶには、会社側が細かい指示を出さずに仕事の依頼を行い、仕事を受けた側が自分で考えて仕事を完了できる状態でないといけません。ほとんどの場合、学生はその職業の経験がないので、会社側から細かい指示を受けながら仕事を行う雇用契約に該当するでしょう。

雇用契約を締結しておくべき理由

先程、インターンの目的が企業紹介や職場見学であれば、給与を支払わなくても良いとお伝えしました。しかし、給与を支払わなければ何の契約も締結しなくてよいというわけではありません。1日でも会社の中に入ってもらうということは、会社の機密情報を見てしまう可能性があります。情報漏洩を防ぐためにも、最低限、秘密保持契約は必要だと考えます。

契約形態が雇用契約と業務委託契約のどちらに該当するかわからない場合にも、雇用契約を結んでおくことをおすすめします。もし何かあった場合に、秘密保持契約等を含む雇用契約を締結しておけば、会社が指示を出せるようになるためです。

また、形だけの業務委託契約を結んでしまうと、実際の労働時間と給与の金額を比較した際に、最低賃金を割ってしまい、罰せられる可能性もあります。故意ではないにしろ、自社を守るためにも、雇用契約を締結しておくと安心です。

まとめ

  • インターンの内容に応じて給与の支払いが必要になる場合がある
  • 学生インターンは主に雇用契約形態での受け入れが一般的
  • 情報漏洩防止等の理由から、秘密保持契約含む雇用契約を締結することを推奨

インターンは1日しか参加しないから給与を支払わなくてよいというものではなく、インターン中に行ったことが、業務であるかどうかによって給与の支払いが必要になります。契約形態は、可能な限り雇用契約を締結し、社内にてインターンを行う場合は、情報漏洩のリスクにも注意しましょう。

インターンを実施すると、学生は職場の雰囲気を確認したり、実際の業務を経験出来たりするため、入社後のミスマッチによる離職を防ぐ効果も期待できます。給与の支払いが必要な場合をきちんと理解し、雇用契約を締結する準備を行ったうえで、企業の採用活動に積極的に取り入れていきましょう。

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吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)

執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)

慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。効率的な労務管理の手法を広めつつ、自ら会社経営を実践するために社会保険労務士法人ONE HEARTを設立し独立開業。

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