このコラムは、Podcastラジオ “社労士 吉田優一の「給与設計相談室」” 第30回の配信をもとに書かれた記事です。
Podcastでは、給与・報酬の設計を中心に、会社を経営していくうえでぶつかる人事の課題についてお話ししています。ぜひフォローをお願いします!
会社から従業員へ支払う対価は、給与として支払うべきか、福利厚生として還元するべきなのか、迷ってしまいますよね。今回のテーマは、給与と福利厚生のバランス。給与がどのくらいあれば福利厚生を導入すべきなのか、導入のタイミングや制度設計のポイントを解説いたします!
給与と福利厚生どちらで還元すべき?
従業員への労働の対価は、まず給与で還元することをおすすめします。なぜなら、給与を一定金額以上支払わないと、モチベーションの低下や退職者の増加につながってしまうためです。求人票を見る際、求職者は福利厚生ではなく、給与から確認します。そのため、他の求人と比較して低くない程度の金額になるまでは、給与で還元していくのがよいでしょう。
会社経営が安定したら福利厚生の検討を
それでは、福利厚生はいつから導入すればよいでしょうか。会社の経営が安定したらという答えが一般的ですが、これでは少し漠然としています。具体的には以下の基準をクリアしたら、導入の検討をおすすめしています。
・会社の現預金が潤沢にある
・売上が安定している
・利益をしっかり出している
・給与が業界水準に達している、もしくはそれ以上支給できている状態になっている
まずは会社の状況と従業員に支払っている給与額、業界の給与水準の確認をしましょう。福利厚生は必須ではないため、そこの基準がクリアできていれば力を入れる、プラスαとして考えることがおすすめです。
目的を持った制度設計
会社の利益も安定し、現預金にも余裕ができて、いざ福利厚生を作るとなった場合、どのような制度を導入すればよいでしょうか。それは、どういう方に会社で活躍してほしいのか目的に応じて設定することが必要になります。
例えば、我々社労士のように勉強し続けないといけない業種であれば、書籍やセミナー代の補助、子育て世代が多い職場では、ベビーシッター代の補助などが挙げられます。自社にはどんな社員がいて、どういう制度を必要としているか考えて設定することによって、そこに魅力を感じている人が入社してくるようになります。
他社がやっている、人気があるという理由で導入を行っても、自社の社員には必要とされていないことがあります。制度を有効に活用してもらうためにも、導入の際は目的を明確にしておきましょう。
魅力的な福利厚生
私が魅力的だと思った福利厚生は、労働時間の中に自由時間があるような制度です。例えば、早帰りができたり、労働時間中に副業をしても良かったり。週5日、労働時間40時間という枠組みは変えないまま、自由に使える時間があるのは制度として面白いな、と思います。
育児や介護を行いながら働く方は近年増加しているので、早帰りなど、時間の融通が利くものは、労働者にとって、とても魅力的です。会社にとっても、お金を掛けずに導入することができるので、何から導入しようか迷った際に、制度の1つ目として検討してみるのはいかがでしょうか。
導入後は簡単に廃止できないことに注意
福利厚生は、一度導入すると簡単に廃止が難しいことに注意が必要です。一旦導入した制度を廃止すると、労働条件の不利益変更に該当してしまうためです。不利益変更を行うには、原則としてスタッフさん一人一人の個別同意が必要になります。
個別合意ではなく、就業規則によって不利益変更をおこなうには、スタッフへの説明や変更が必要なのか、などさまざまな論点や必要事項があります。就業規則の変更によって、労働条件を不利益変更する場合、後でトラブルにならないように専門家に相談することをおすすめします。
このような手続きの煩雑さからも、制度の導入は目的を持って、慎重に行うことをおすすめします。
まとめ
- 給与>福利厚生
- 自社に合う目的を持った制度設計が大切
今回は給与と福利厚生のバランスについてお話しさせていただきました。労働者は、まず、給与が業界の水準よりも低くないか気にする傾向にあります。そのため、業界水準までは給与を上げることに注力し、余力ができたら福利厚生の検討を行いましょう。
福利厚生を導入するフェーズになったら、どのような方に使用してもらう制度なのか、ターゲットと目的を決めることから始めましょう。自社で活躍してほしい人材に向けた制度を導入することによって、そこに魅力を感じてくれる方が集まり、定着にも繋がるようになります。
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執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)
慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。効率的な労務管理の手法を広めつつ、自ら会社経営を実践するために社会保険労務士法人ONE HEARTを設立し独立開業。