このコラムは、Podcastラジオ “社労士吉田優一の「給与設計相談室」” 第16回の配信をもとに書かれた記事です。
Podcastでは、給与・報酬の設計を中心に、会社を経営していくうえでぶつかる人事の課題についてお話ししています。ぜひフォローをお願いします!
労働日が1日減るという週休3日制ですが、労働者にとっては嬉しい制度ですよね。私も会社員時代に週休3日制を導入すると言われたらとても喜んでいたと思います。一方で経営者にとって、導入するメリットはあるのでしょうか。
どのような場合に導入を検討するべきなのか?導入時に気を付けることは?そのような疑問に社労士が回答いたします!
週休3日制の目的
働く方のニーズが多様化している今、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題となっています。この課題を解決するための選択肢の1つとして週休3日制があります。
今より1日休日が増えることによって、空いた1日を育児や介護の時間に充てたり、大学院等での学び直しや副業を行ったりすることができるようになります。
週休3日制の方法
週休3日制の方法は主に2つあります。
1つ目は純粋に労働日を減らす方法です。1日8時間労働を週5日から週4日にするものです。週の総労働時間は40時間から32時間へと減少するので、その分しっかりとお休みを取ることができます。
2つ目は1日の労働時間を増やして労働日を少なくする方法です。例えば、1日8時間の労働を週5日行っていた方が、1日10時間の労働を週4日行う形にして週休3日にするという方法です。
2つ目の方法だと、通勤が1日減るので毎日通勤に1時間以上かけている方にはメリットがあるのではないでしょうか。一方で、出勤日は毎回労働時間が長めになるため、体への負担は大きくなってしまいます。また、今までと労働時間が変わっていないため、本来の趣旨から少し外れてしまうかもしれません。
上手に活用している企業の特徴
週休3日制を上手に活用している企業には特徴があります。それは採用したい人物像が明確になっているということです。
労働者は仕事型と生活型の大きく分けるとこの2種類のどちらかに該当すると考えています。仕事型の労働者は、仕事をプライベートよりも重視する傾向があります。生活型の労働者は、その逆です。
仕事型の労働者は、今後のキャリアを考えて現在の仕事を選択しているケースが多く、キャリアや自身の収入に大きな関心があります。残業や休日出勤も苦にならず、休日にセミナーや交流会に参加する方が該当すると考えています。
一方、生活型の労働者は、仕事を選ぶ基準が家から職場が近いことであったり、今の生活を変えなくても困らない収入を得ることができるという部分に重きを置いたりする方が該当します。
週休3日制導入が上手くいくのは後者の採用を希望しているパターンです。生活型の方は、休みが増えることによってライフワークバランスを充実させることができるでしょう。反対にバリバリの営業さんが週休3日になってしまうと、お客様と休みの日程が合わず、結局休みのうち1日は仕事をしていたというケースも出てしまうため、労働者側からも働きづらいといった意見が出てきてしまうことが予想されます。
また、制度を導入する際には、全員が週休3日でなくても問題ありません。基本的には週休2日だけれども、一部の部門は週休3日制をとることもできるという形で導入することも可能です。求人でも多様な働き方をアピールすることができるので、生活型の方の採用を希望している企業は導入の検討をしても良いでしょう。
導入による懸念点
制度の導入によって一番気になるのは給与形態です。労働日を1日減少させる場合、単純に考えるとお給料が5分の4になってしまいます。しかし、労働条件の不利益変更にあたるため、勝手に給与を下げることはできません。
この場合効果的なのは、今まで通りの給与をもらって週休2日で働くか、給与が8割になってしまうけれど、週休3日にするかという選択肢を労働者に選択してもらうことです。自ら選択したので、労働日数が減った分給与が下がることに対しても納得していただけるでしょう。
その他に、週休3日制を制度として1度導入してしまうと、運用が上手くいかなかったときに元に戻すことが難しいという懸念もあります。また週休2日に戻す場合、少なくとも週休3日制を使用している従業員全員の同意を得なくてはならないため、単に週休3日制が流行しているから導入するのではなく、検討を重ねたうえでメリットがあると判断した場合に導入を行いましょう。
まとめ
週休3日制を導入すると働き方の選択肢を広げることができます。今まで通りがつがつ働きたい方には週休2日、プライベートの時間に重きを置きたい方は週休3日といった、働き方によって変えることもできますし、育児や介護で忙しい時には週休3日、子育てが落ち着き、多くの時間を仕事に充てられるようになったら週休2日というふうに、人生のステージによって変更することも可能です。
経営者にとっては求人の強みになり、労働者にとっては休日が増えるというお互いにとって良い制度です。採用したい人物像と週休3日制の働き方がマッチングする場合には、ぜひ一度導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)
慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。効率的な労務管理の手法を広めつつ、自ら会社経営を実践するために社会保険労務士法人ONE HEARTを設立し独立開業。