このコラムは、Podcastラジオ “社労士吉田優一の「10分で労務がわかるラジオ」” 第222回の配信をもとに書かれた記事です。
Podcastでは、給与・報酬の設計を中心に、会社を経営していくうえでぶつかる人事の課題についてお話ししています。ぜひフォローをお願いします!
「アルバイトの契約書には『シフトによる』としか書いていないのですが、これで大丈夫でしょうか」
飲食店や小売店を経営されている方から、こうしたご相談をよくいただきます。勤務日や勤務時間をあらかじめ決めず、その都度シフト表で決めていく働き方は、人員配置を柔軟にできる反面、ルールがあいまいなまま運用されやすい面があります。
そのあいまいさが、有給休暇の申請を断ってしまう、会社都合でシフトを減らして賃金を払わないといった労務トラブルの火種になりがちです。
こうした状況を踏まえ、2026年6月に厚生労働省は「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」を改正しました。この留意事項は2022年に初めて示されたもので、労働条件通知書に始業時刻と終業時刻を明確に記載することなど、シフト制を適切に運用するための考え方がまとめられています。シフト制を採用している企業の方は、一度目を通しておくことをおすすめします。
本記事では、今回の改正内容にも触れながら、シフト制で起こりやすい実務上の問題と対応策を解説します。

シフト制で有給休暇を申請されたら?シフト決定後の申請への対応
シフト制の職場で特に問題になりやすいのが、年次有給休暇の扱いです。
シフトが組まれた後に従業員が有給休暇を申請すると、その日は人手が足りなくなってしまいます。そこで飲食業や小売業では、シフトを組む前に有給休暇を使いたい日を募集し、その日を休みにしたうえでシフトを作成している店舗も多いのではないでしょうか。
この運用は、従業員が確実に休めて会社も人員を確保できるという点で、一定のメリットがあります。ただし注意したいのは、シフト決定後に申請してきた従業員に対して「うちはシフト前に集めているから使えない」と断ってしまうことです。これは労働者の権利行使を妨げることになり、労働基準監督署の調査などが入った際に会社側が厳しい立場に置かれます。
店舗運営が大変なことは私もよく理解しています。それでもこの場合は、管理職や正社員がカバーするなどの工夫が求められます。申請したアルバイトスタッフを叱ってしまうようなことは避けてください。
シフト制の変更希望には社内ルールで公平に対応する
学生アルバイトなどからは、「夏休みだからたくさん入りたい」「テスト前だから減らしてほしい」といった相談が寄せられることがあります。
こうした交渉をすること自体は自由ですが、本来は契約内容に基づいてシフトに入るのが前提です。会社がその希望をすべて受け入れる義務はなく、「約束した日なので出勤してください」と伝えることもできます。
とはいえ、人手不足の今、ある程度柔軟に応じる必要があるのも事実でしょう。大切なのは、どこまで融通を利かせるのかを社内のルールとしてあらかじめ決めておくことです。
ルールがないまま場当たり的に対応していると、強く要望する人ほど希望が通り、真面目な人が無理をしてシフトを埋めたり、希望どおりに入れなかったりという不公平が生まれます。「この会社は公平ではない」と感じた真面目な従業員から辞めていく事態を防ぐためにも、公平なルール作りを意識したいところです。
シフト削減や短縮に潜む未払い賃金のリスク
会社都合でシフトを短縮、休業させる場合
「台風で客足が見込めないから今日は休みでいいよ」「お客様が帰ったので1時間早く上がりましょう」。こうした指示をしたうえで、その分の給料を支払っていないケースは少なくありません。
しかし、従業員から「本来は働けたし、働く意思もあったのだから賃金をもらえるはずだ」と主張されると、会社側は不利な立場に立たされます。会社都合でシフトを削ったり短縮したりした場合、休業手当(会社側の事情で休ませた際に支払う手当)や、本来の賃金全額を請求されるリスクがあるためです。
客足が落ちたことを理由に早上がりをお願いする場合は、一方的に指示するのではなく、丁寧にお願いをして本人の同意を得ることが大切です。合意のうえでシフトを短縮したと説明できる状態にしておきましょう。
問題のある従業員のシフトを削る対応は避ける
能力不足や問題行動のある従業員に対し、シフトを減らして退職に追い込もうとするケースも見受けられますが、この方法はおすすめできません。
雇用契約がある以上、一方的なシフト削減は、削った分の賃金を請求されるリスクを生みます。さらに、その従業員がそのまま退職した場合、退職の経緯に違法性がないか、本当に退職の合意があったのかといった問題にも発展しかねません。
深刻なパワーハラスメントを行う社員への緊急的な措置であれば理解できる面もあります。しかし労務管理の原則は、能力不足には教育を、問題行動には注意と指導を行うことです。
シフト制の有給休暇、付与日数の計算方法が明確に
年次有給休暇の日数は週の所定労働日数に応じて決まり、勤務日数が少ない人には比例付与(所定労働日数に比例して付与日数を調整する仕組み)が適用されます。ところが「シフトによる」という契約では週何日勤務の人なのかがわからず、付与日数の判断に悩む担当者の方が多くいました。
今回の留意事項の改正で、この点の考え方が示されました。所定労働日数を算出しがたい場合、入社から半年後の最初の付与は、その半年間に実際に働いた日数の実績をもとに判断してよいとされています。それ以降の毎年の付与も、過去1年間の労働日数の実績をもとに付与日数を決める形になります。
なお、これは労働基準法そのものが変わったわけではなく、現行法のもとでの取扱いが具体的に示されたものです。これまでも実務上は過去の実績で判断せざるを得ない場面がありましたが、行政として考え方が明示されたことで、今後の管理は進めやすくなるはずです。
まとめ
いわゆるシフト制には判断に迷うグレーゾーンが多く、あいまいな運用を続けているとトラブルに発展するおそれがあります。シフト決定後の有給休暇申請を断ること、会社都合のシフト短縮で賃金を支払わないこと、シフト削減で退職を促すことは、いずれも会社のリスクを高める対応です。一方で、有給休暇の付与日数については、今回の留意事項の改正によって考え方が明確になりました。
本来は「シフトによる」を出発点にするのではなく、スタッフごとに週何日、何時間働くのかを決めておくことが望ましいと私は考えています。会社にとっては人件費の見通しが立てやすくなり、働く側にとっても収入の見通しが立てやすくなるからです。
私たち社会保険労務士法人ONE HEARTでは、急成長を遂げる企業の皆様が後悔しない働き方を設計できるよう、法的な誠実さを保ちながら、現場の実態に即したアドバイスを提供しています。シフト制の労働条件の定め方や有給休暇の管理、シフト変更のルール作りなどにお悩みの経営者様や人事担当者様は、ぜひ当社のホームページからお問い合わせください。
初回のご相談は無料で承っております。貴社の状況に合わせたシフト管理のあり方を、一緒に考えていきましょう。
社会保険労務士法人ONE HEARTはITツールを組み合わせて、効率的な労務管理を作り、会社の発展に貢献します。急成長するスタートアップから、長年続く老舗企業まで、幅広いクライアント様をご支援させていただいています。
ONE HEARTに労務のご相談をしたい方、ONE HEARTでのお仕事に興味がある方、吉田とお話ししてみたい方など、ホームページの問い合わせフォームやX(旧twitter)のDMからお気軽にご連絡いただけると幸いです!
オンラインで完結

個別無料相談を
ご利用ください
執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)
社会保険労務士法人ONE HEARTの代表社労士。慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。こうした経営者の負担を軽減しながら、自らも模範となる会社づくりを実践したいという想いから、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立。


