コラム

時短勤務なのに残業命令?違法性や拒否する方法、残業代の計算まで解説

時短勤務なのに残業命令?違法性や拒否する方法、残業代の計算まで解説

このコラムは、Podcastラジオ “社労士吉田優一の「10分で労務がわかるラジオ」” 第215回の配信をもとに書かれた記事です。

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目次

時短勤務を選択しているにもかかわらず、会社から残業を命じられて困惑していませんか。

子どもの迎えなど、家庭の事情で時間を調整しているのに残業を求められると、違法ではないかと疑問に思うかもしれません。

この記事では、時短勤務中の残業命令の法的な位置づけを解説します。

残業を正当に拒否するための法律に基づく手続きや、万が一残業した場合の残業代の正しい計算方法を理解し、ご自身の状況を適切に判断して対応できるようになります。

時短勤務中の残業命令は違法?まずは法律上の基本ルールを理解しよう 

結論から言うと、時短勤務中の従業員に対する残業命令が、直ちに違法となるわけではありません。

会社が従業員に残業を命じるには、労働基準法に基づく労使協定(36協定)の締結など、いくつかの法的要件を満たす必要があります。

この要件を満たしていれば、時短勤務者への残業指示も原則として可能です。

ただし、育児や介護を理由に時短勤務をしている従業員には、残業を免除・制限する特別な法律上の権利が認められています。

「時短勤務=残業免除」ではない!法律上の関係性を解説 

「時短勤務」と「残業免除」は、どちらも育児・介護休業法に定められた制度ですが、それぞれ独立した別の制度です。

時短勤務は、1日の所定労働時間を原則6時間に短縮する制度のことを指します。

一方、残業免除は、所定労働時間を超える労働を免除する制度です。

したがって、時短勤務制度を利用しているからといって、自動的に残業が免除されるわけではありません。

残業を免除してもらうためには、時短勤務の申請とは別に、後述する「所定外労働の制限」を会社に請求する手続きが必要です。

残業命令の前提となる「36協定」の役割とは 

そもそも会社が従業員に残業を命じるためには、労働基準法第36条に基づく労使協定、通称「36(サブロク)協定」を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。

この協定には、残業させることができる業務の種類や上限時間などが定められています。

会社が36協定を締結せずに残業を指示したり、協定で定めた上限時間を超えて労働させたりすることは法律違反となります。

つまり、有効な36協定の存在が、残業指示の法的な前提条件です。

時短勤務者が残業免除を申請できる法的根拠 

育児や介護を行う労働者の残業を避けるための法的根拠の一つとして、「育児・介護休業法」があります。この法律には、育児や介護を行う労働者を支援するため、所定労働時間を超える労働を制限・免除する「所定外労働の制限」や「時間外労働の制限」などの制度が定められています。

小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者などがこの制度を会社に請求した場合、会社は原則として残業をさせてはなりません。この権利は、時短勤務(育休後)を利用しているかどうかにかかわらず行使できます。

育児・介護休業法に基づく!残業を合法的に断るための3つの制度 

育児・介護休業法には、子育てや介護を行う労働者の負担を軽減し、仕事と家庭の両立を支援するために、残業を拒否または制限できる3つの制度が設けられています。

これらの制度は、労働者が自ら会社に請求することによって利用できる権利です。

具体的には「所定外労働の制限」「時間外労働の制限」「深夜業の制限」があり、それぞれ対象者や制限の内容が異なります。

これらの制度を正しく理解し活用することで、法的な根拠をもって残業を免除してもらうことが可能です。

【原則残業なし】所定時間を超える労働を免除する「所定外労働の制限」 

「所定外労働の制限」とは、会社の定めた所定労働時間(例:1日6時間)を超える労働を免除してもらう制度です。この請求が認められると、会社は原則としてその従業員に所定労働時間を超える残業を命じることができなくなります。対象となるのは、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員です。

ただし、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は請求を拒否できるとされていますが、その判断は厳格になされるべきものです。

【上限時間を設定】月24時間・年150時間を超える残業を制限する「時間外労働の制限」 

育児・介護休業法に基づく「時間外労働の制限」とは、法定労働時間(原則1日8時間)を超える残業の上限を、月24時間・年150時間以内に制限する制度です。

この制度も「所定外労働の制限」と同様に、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員が申し出ることができます。

一般的な労働基準法上の時間外労働の上限(原則月45時間・年360時間)と比べて大幅に制限されるため、長時間労働を抑制できます。

これらの制度は、残業をゼロにすることは難しいものの、長時間の残業を防ぐ効果が期待できます。

【夜勤が不可に】22時~翌5時の労働を免除する「深夜業の制限」 

「深夜業の制限」は、午後10時から午前5時までの間の労働、いわゆる深夜労働を免除してもらう制度です。

この請求が認められれば、会社はその従業員を深夜の時間帯に勤務させることができません。

対象者は「時間外労働の制限」と同じく、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員です。

交代勤務などで夜勤がある職場において、子育てや介護との両立を図るために重要な制度となります。

残業免除を会社に申請するための具体的な手続きと流れ 

これらの残業免除・制限の制度を利用するためには、従業員から会社への正式な請求手続きが必要です。

一般的には、制度の利用を開始したい日の1ヶ月前までに、書面で会社に申し出ることが求められます。

申請書には、請求期間(1回につき1ヶ月以上1年以内)、残業ができない事情、養育する子の氏名や生年月日などを記載します。

会社の就業規則などに申請手続きに関する規定があるはずなので、まずは人事部などに確認しましょう。

この手続きを踏むことで、残業を正当に拒否する権利が生まれます。

時短勤務で残業した場合の残業代は?割増賃金が発生する仕組み 

時短勤務中にやむを得ず残業した場合、その労働時間に対しては当然、残業代が支払われなければなりません。

しかし、残業代の計算、特に割増賃金が発生するかどうかは、その日の実働時間が何時間に達したかによって異なります。

重要なのは「所定労働時間」と「法定労働時間」の違いを理解することです。

単に時短勤務の終了時刻を超えただけでは、必ずしも法律で定められた割増賃金の対象になるとは限りません。

割増なしの「法定内残業」:時短の定時後から実働8時間まで 

「法定内残業」とは、会社の定めた所定労働時間は超えているものの、労働基準法で定められた法定労働時間(原則1日8時間、週40時間)の範囲内で行われる残業のことです。

例えば、6時間の時短勤務者が7時間働いた場合の1時間がこれに該当します。

この法定内残業に対する残業代には、法律上の割増義務はありません。

そのため、通常の時給と同額の賃金が支払われるのが一般的です。

ただし、会社の就業規則によっては独自の割増率が設定されている場合もあります。

25%以上の割増あり「法定外残業」:実働8時間を超えた時点から 

「法定外残業」とは、法定労働時間である1日8時間を超えて行われた残業を指します。

この時間帯の労働に対しては、会社は通常の賃金の25%以上の割増率で計算した残業代(割増賃金)を支払う義務があります。

例えば、6時間の時短勤務者が9時間働いた場合、8時間を超えた1時間分が法定外残業となり、割増賃金の対象です。

この割増率は、休日労働や深夜労働と重なるとさらに加算されます。

時短勤務における残業代の計算例 

具体的な計算例を見てみましょう。

時給1,500円、所定労働時間が6時間の時短勤務者を例にします。

実働7時間の場合:所定の6時間を1時間超えていますが、法定労働時間(8時間)の範囲内です。

この1時間は法定内残業となり、残業代は「1,500円×1時間=1,500円」です。

実働9時間の場合:所定の6時間を3時間超えています。

このうち、実働7時間目と8時間目の2時間は法定内残業となり「1,500円×2時間=3,000円」。

実働8時間を超えた1時間は法定外残業となり、割増賃金が発生します。

「1,500円×1.25×1時間=1,875円」。

合計の残業代は4,875円となります。

【育児・介護休業法】残業免除の対象者は小学校就学前まで拡大されています

働きながら子育てをする従業員を支援するため、育児・介護休業法は改正が行われてきました。

2025年4月1日に施行された改正法により、残業の免除・制限に関する制度がさらに拡充されています。

この法改正は、より多くの子育て世代が仕事と家庭の両立をしやすくすることを目的としており、特に「所定外労働の制限(残業免除)」の対象者が大幅に拡大された点が大きなポイントです。

事前に内容を把握し、自身の権利として活用できるよう準備しておくことが望ましいです。

法改正によって残業免除の対象となる子どもの年齢が変わる 

以前の法律では、原則として所定外労働の制限(残業免除)を請求できるのは「3歳に満たない子」を養育する従業員に限られていました。

しかし、現在の法律では、この対象が「小学校就学の始期に達するまでの子」を養育する従業員へと拡大されています。

これにより、3歳以上小学校就学前の子を持つ親も、原則として残業自体の免除を請求できるようになり、より柔軟な働き方の選択が可能になっています。

制度をスムーズに活用するためのポイント

拡充された制度をスムーズに活用するために、意識しておきたいポイントがあります。

まずは、自社の就業規則で申請手続きのフロー(1ヶ月前までの書面申請など)を確認・把握しておきましょう。

また、制度の利用にあたっては、パートナーと家事・育児の分担や、今後の働き方について改めて話し合っておくことも重要です。

制度の利用をスムーズに進めるためには、職場での業務の引き継ぎや円滑なコミュニケーションも不可欠となります。

権利を正しく理解し、家庭内での調整や職場への共有を進めておくことをお勧めします。

まとめ 

時短勤務中の残業命令は、直ちに違法となるわけではありませんが、従業員には法律で認められた権利があります。

育児・介護休業法に基づき「所定外労働の制限」を申請すれば、残業を合法的に拒否することが可能です。

もし残業した場合は、実働8時間を超えた分については割増の残業代が支払われる必要があります。

残業が常態化している場合は、上司への相談や人事部への報告といった対処法を検討しましょう。

残業免除の対象も小学校就学前まで拡大されているため、自身の権利を正しく理解し、適切な対応をとることが大切です。

社会保険労務士法人ONE HEARTはITツールを組み合わせて、効率的な労務管理を作り、会社の発展に貢献します。急成長するスタートアップから、長年続く老舗企業まで、幅広いクライアント様をご支援させていただいています。

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吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)

執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)

社会保険労務士法人ONE HEARTの代表社労士。慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。こうした経営者の負担を軽減しながら、自らも模範となる会社づくりを実践したいという想いから、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立。

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