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賞与の基本知識|金額の決め方や計算方法をわかりやすく解説

賞与の基本知識|金額の決め方や計算方法をわかりやすく解説

このコラムは、Podcastラジオ “社労士吉田優一の「10分で労務がわかるラジオ」” 第211回の配信をもとに書かれた記事です。

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目次

賞与(ボーナス)の支給義務や算出根拠、従業員のモチベーションをいかにして向上させるかなど、経営者には多くの悩みがつきものです。

従来の「基本給の〇ヶ月分」という決め方で良いのか、法的なリスクはないかといった疑問を抱えている方も少なくありません。

この記事では、賞与とは何かという基礎から、会社の経営方針に合わせた決め方、具体的な計算方法、社員の納得感を高める運用ポイントまでを網羅的に解説します。

読み終えることで、自社に最適な持続可能な賞与制度の骨子を判断できるようになります。

賞与の支給は会社の義務?押さえるべき法的ルールと就業規則の役割 

賞与の支給義務を定めた法律はないため、賞与制度がなくても法的に問題視されることはありません。

しかし、就業規則や雇用契約書、労働協約などで支給条件や金額の計算方法、支給時期などを定めている場合は、その内容が労働契約の一部となり、会社は従業員に対して支払い義務を負います。

そのため、業績悪化時に減額や不支給の可能性がある場合は、その旨を就業規則に明記しておくことが、後のトラブルを避ける上で極めて重要です。

法的義務の有無を正しく理解した上で、次にどのような種類の賞与があるのかを検討することが求められます。

会社の経営方針に合わせた賞与の決め方|3つの主要な種類を解説 

賞与(ボーナス)の決め方は一通りではなく、会社の経営方針や財務状況、従業員に何を期待するかによって選択すべき方式が異なります。

主に「基本給連動型賞与」「業績連動型賞与」「決算賞与」の3種類があり、それぞれにメリットとデメリットが存在します。

自社の状況に合わせて、これらの特徴を理解し、最適な方法を選択または組み合わせて運用することが、効果的な賞与制度を構築する第一歩です。

安定的な運用が可能な「基本給連動型賞与」 

基本給連動型賞与とは、その名の通り「基本給の〇ヶ月分」という形で支給額を決定する、従来から多くの企業で採用されてきた方法です。

この方式のメリットは、計算がシンプルで分かりやすく、従業員も支給額を予測しやすいため、生活設計を立てやすい点にあります。

一方で、個人の成果や会社の業績が直接反映されにくいため、貢献度の高い社員のモチベーションを高めにくいという側面も持ち合わせています。

また、業績が低迷している状況でも、基本給を基にした固定的な人件費が発生するリスクがあります。

社員の貢献意欲を引き出す「業績連動型賞与」 

業績連動型賞与は、会社全体の営業利益や部門の目標達成度、さらには個人の成果評価に基づいて支給額が変動する方式です。

この方法の最大のメリットは、従業員の努力や貢献が賞与額に直接結びつくため、目標達成への意欲を高めやすい点にあります。

また、会社の業績が好調なときには多くの賞与を支給し、不調なときには人件費を抑制できるため、経営リスクの軽減にもつながります。

ただし、評価制度の設計や運用が複雑になりがちで、評価の公平性が担保されないと、かえって従業員の不満を招く可能性も考慮しなくてはなりません。

税負担の軽減も期待できる「決算賞与」 

決算賞与とは、通常の夏・冬の賞与とは別に、事業年度の終了後、会社の最終的な利益が確定した段階で、従業員に利益を還元するために支給される特別な賞与です。

支給は確定的なものではなく、あくまで業績が好調だった場合に限られます。

従業員にとっては予期せぬ収入となり満足度向上に貢献するほか、会社にとっては、一定の要件を満たせば支給額を損金として算入できるため、法人税の節税効果が期待できるという大きなメリットがあります。

ただし、毎年支給されるとは限らないため、従業員の期待を過度に煽らないような配慮も必要です。

賞与の計算方法|支給総額の決め方から社会保険料・税金の控除まで 

賞与の計算は、会社が支払う総額(原資)を決めるところから始まり、個々の従業員への配分、そして社会保険料や税金の控除を経て、最終的な手取り額が確定します。

従業員に「結局いくらもらえるのか」を正確に伝えるためにも、経営者はこの一連の流れを把握しておく必要があります。

このプロセスは大きく4つのステップに分かれており、それぞれで適切な計算を行うことが求められます。

ステップ1:賞与の支給総額となる「原資」を決める 

最初に、会社が賞与として支払う全体の予算、すなわち「原資」を決定します。

この原資の計算方法に決まったルールはありませんが、一般的には会社の業績に基づいて算出されます。

例えば、「営業利益の〇%を原資とする」「売上高経常利益率を基準にする」「目標利益を超過した分の〇%を充てる」といった方法が用いられます。

重要なのは、過去のデータや将来の事業計画を踏まえ、無理のない範囲で、かつ従業員の期待にも応えられるような適切な金額を設定することです。

この原資が、個々の従業員にいくら分配できるかの基礎となります。

ステップ2:社員個人の評価を反映した「支給額」を算出する 

次に、決定した原資を各従業員に分配する計算を行います。

この段階で、個人の評価が支給額に反映されます。

具体的な計算方法としては、「基本給連動型」であれば「基本給×支給月数×評価係数」といった式が、「業績連動型」であれば「基準額×評価係数(部門業績+個人評価)」といった式が考えられます。

評価係数は、査定期間中の目標達成度や勤務態度、貢献度などに基づいて決定されます。

従業員一人ひとりにいくら支払うかを決定する、賞与計算の中核をなすプロセスです。

ステップ3:賞与から天引きされる「社会保険料」の計算 

従業員個人の賞与額(総支給額)が決定したら、そこから天引きされる社会保険料の計算を行います。

賞与からは、毎月の給与と同様に健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料(40歳以上)、雇用保険料が控除されます。

健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料の計算は、賞与額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に、それぞれの保険料率を乗じて算出します。

雇用保険料は、賞与の総支給額に雇用保険料率を乗じて計算します。

これらの計算により、会社負担分と従業員負担分の双方が確定します。

ステップ4:前月の給与を基に算出する「源泉所得税」の計算 

最後に、源泉所得税を計算します。

賞与の所得税計算は、毎月の給与とは異なる方法で行われます。

まず、賞与の総支給額からステップ3で計算した社会保険料の合計額を差し引きます。

次に、前月の給与から社会保険料を控除した金額と、扶養親族の人数を確認します。

この2つの情報をもとに、国税庁が公表している「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」から所得税率を特定し、その税率を賞与の課税対象額(総支給額-社会保険料)に乗じることで、源泉所得税額が算出されます。

社員の納得感を高める賞与査定のポイント|評価制度との連携が鍵 

賞与の金額に対する不満は、従業員のモチベーション低下や離職の直接的な原因となり得ます。

そのため、賞与の査定においては、支給額そのもの以上に、その金額に至ったプロセスの透明性と公平性が極めて重要です。

従業員が「自分の働きが正当に評価され、目標の達成が報われた」と感じられるような仕組みを構築するには、評価制度との緊密な連携が不可欠です。

具体的なポイントを押さえることで、従業員の納得感を高めることができます。

評価基準を明確にし、就業規則に記載する 

従業員の納得感を高める第一歩は、評価基準を明確にすることです。

どのような行動や成果が評価され、賞与にどう反映されるのかを、誰が見ても理解できるように言語化する必要があります。

例えば、営業職であれば売上目標の達成率、技術職であれば製品開発の進捗度など、職種に応じた具体的な指標を設定します。

そして、その評価基準を賃金規程や就業規則に明記し、全従業員に周知徹底することが重要です。

これにより、評価の客観性と透明性が担保され、会社としての方針が一貫していることを示せます。

査定期間と評価項目を具体的に設定する 

評価の公平性を保つためには、いつからいつまでの期間の働きを評価するのかという「査定期間」を明確に定める必要があります。

例えば、「4月1日から9月30日までの働きを評価し、12月の賞与に反映する」といった具体的な期間を設定します。

同時に、評価項目も具体的に設定することが求められます。

評価項目には、売上高や契約件数といった「定量的項目」と、業務改善への貢献やチームワークといった「定性的項目」をバランス良く組み合わせることで、多角的な視点から個人の達成度を評価できます。

評価結果を伝えるフィードバック面談を実施する 

賞与の支給前に、評価結果を本人に直接伝えるフィードバック面談の場を設けることは、従業員の納得感を醸成する上で非常に効果的です。

この面談では、単に評価ランクや支給額を通知するだけでなく、なぜその評価になったのかという根拠を具体的に説明します。

査定期間中の良かった点や成果を具体的に称賛し、今後の成長のために改善すべき点を建設的に伝えることで、従業員は評価への理解を深めるとともに、次期の目標に向けたモチベーションを高めることができます。

丁寧なコミュニケーションが、信頼関係の構築につながります。

まとめ 

賞与の支給は法律で義務付けられてはいませんが、就業規則や雇用契約書に定めがある場合は支払い義務が発生します。

賞与の決め方には、安定的な「基本給連動型」、貢献意欲を引き出す「業績連動型」、節税効果も期待できる「決算賞与」といった種類があり、会社の経営方針に合わせて選択することが重要です。

なお、賞与の計算は原資の決定から個人の支給額算出、社会保険料・税金の控除という手順で行われます。

公平な評価基準と丁寧なフィードバックは、従業員の納得感を高め、エンゲージメント向上に不可欠な要素です。

また、社会保険労務士法人ONE HEARTはITツールを組み合わせて、効率的な労務管理を作り、会社の発展に貢献します。急成長するスタートアップから、長年続く老舗企業まで、幅広いクライアント様をご支援させていただいています。

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吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)

執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)

社会保険労務士法人ONE HEARTの代表社労士。慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。こうした経営者の負担を軽減しながら、自らも模範となる会社づくりを実践したいという想いから、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立。

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