コラム

給料の間違いを発見した時の対処法|労働者・給与計算担当者別に解説

給料の間違いを発見した時の対処法|労働者・給与計算担当者別に解説

給料の金額に誤りを見つけた際、どのように対応すればよいか戸惑うことがあります。
会社側の計算ミスで給料を間違えた場合、労働者側はどこに相談すればよいのか、給与計算担当者はどう訂正・謝罪すべきか、それぞれの立場での正しい対応が求められます。

この記事では、給料の間違いという問題に対し、労働者と給与計算担当者それぞれの視点から、具体的な対処法や再発防止策を詳しく解説します。

給料の間違いは放置NG!労働者・会社双方に潜むリスク

給料の計算間違いは、たとえ少額であっても放置してはいけません。
労働者にとっては生活に直接影響するだけでなく、会社への不信感にもつながります。
一方、会社側にとっては、従業員との信頼関係を損なう大きな要因です。

会社の給与計算ミスを放置すると、労働基準法違反に問われ、遅延損害金の支払いや行政指導を受けるリスクも生じます。
信頼関係を維持し、法的な問題を避けるためにも、間違いが発覚した際は迅速かつ誠実な対応が不可欠です。

【労働者向け】給料が違う?まず給与明細で確認すべき5つの項目

「給料がいつもより少ない」と感じたら、まずは落ち着いて給与明細を確認しましょう。
給与明細書には、支給された総額だけでなく、控除された社会保険料や所得税の内訳など、給与計算の根拠となる情報が記載されています。
アルバイトであっても明細の確認は重要です。

支給金額や控除金額、各種手当など、紹介する5つの項目をチェックすることで、どこに間違いがあるのかを具体的に特定しやすくなります。

残業代・休日出勤手当は正しく計算されているか

給与の間違いで特に多いのが、残業代や休日出勤手当の計算ミスです。
まずはタイムカードなどの勤怠記録と給与明細を照らし合わせ、労働時間が正しく反映されているか確認しましょう。
時間外労働(残業)、休日労働、深夜労働には、それぞれ法律で定められた割増率が適用されます。

割増率を含めた計算が正しく行われているか、基礎となる時給の計算に誤りがないかもチェックすべき重要なポイントです。

社会保険料や税金が過剰に天引きされていないか

給与から天引きされる控除項目も確認が必要です。
健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料といった社会保険料や、所得税、住民税が正しく計算されているかを見ましょう。
これらの金額は、標準報酬月額や前年の所得、扶養家族の人数などに基づいて決まります。

特に、年の途中で扶養家族に変動があった場合や、引っ越しで住民税の納付先が変わった際などは、控除額の変更が正しく反映されていないケースがあります。

有給休暇が欠勤扱いになっていないか

有給休暇を取得したにもかかわらず、その日が欠勤として処理され、給与が不当に減額されていないかを確認することも大切です。
有給休暇は労働者の権利であり、取得した日は通常通り賃金が支払われなければなりません。
勤怠記録と給与明細の勤怠欄を照合し、有給休暇取得日が「欠勤」として扱われていないか、それに伴う欠勤控除が発生していないかを確かめましょう。

万が一、そのような処理がされている場合は、明確な誤りです。
有給休暇の給与計算については「有給休暇の給与計算と注意点」で詳しく紹介しています。

各種手当(住宅手当・役職手当など)は反映されているか

基本給以外にも、会社によっては様々な手当が支給されます。
例えば、住宅手当、役職手当、資格手当、家族手当などが挙げられます。
これらの手当が、雇用契約書や就業規則に定められた通りの金額で支払われているかを確認しましょう。

また、通勤にかかった実費を精算する交通費が正しく計算されているかもチェックポイントです。
昇進や引っ越しなどで手当の支給条件が変わった月に、反映が漏れるケースも少なくありません。

雇用契約書と基本給の金額は一致しているか

給与計算の基礎となる基本給の金額が、そもそも間違っている可能性もあります。
入社時に取り交わした雇用契約書や、労働条件通知書に記載されている基本給の金額と、給与明細に記載されている金額が一致しているかを確認しましょう。
もし金額に相違がある場合、契約違反にあたる可能性があります。

労働契約は法律で保護されており、会社側が一方的に労働者の不利益になるような変更はできないため、速やかな確認と指摘が必要です。

【労働者向け】給料の間違いを円満に指摘する伝え方と相談手順

給与明細を確認して間違いの確証を得たら、次に行うべきは会社への連絡です。
しかし、伝え方によっては人間関係がこじれてしまう可能性もあります。
感情的にならず、あくまで「事実確認」というスタンスで冷静に指摘することが、円満な解決への鍵となります。

ここでは、給料の間違いをスムーズに伝えるための具体的な手順とポイントを解説します。

STEP1:まずは直属の上司か給与計算担当者に事実確認を依頼する

給料の間違いに気づいたら、まずは直属の上司に報告・相談するのが一般的な流れです。
上司に伝えにくい場合や、給与計算担当者と直接話せる関係であれば、直接給与計算を担当する部門に問い合わせても問題ありません。
その際、「給与計算が間違っている」と断定的に指摘するのではなく、「給与明細について確認したい点があるのですが」と、低姿勢で切り出すのが角を立てないポイントです。

あくまで事実確認を依頼するという姿勢で臨みましょう。

STEP2:感情的にならず、給与明細を元に具体的に質問する

担当者に話をする際は、感情的になるのを避け、客観的な事実に基づいて質問することが重要です。
「給料が少ない」といった曖昧な伝え方では、相手も何を確認すればよいか分かりません。
給与明細や勤怠記録のコピーなど、根拠となる資料を提示しながら、「〇月分の残業時間が△時間として計算されているようですが、私の記録では□時間でしたので、ご確認いただけますでしょうか」というように、具体的にどこが違うのかを明確に伝えましょう。

STEP3:社内の相談で解決しない場合は労働基準監督署へ連絡する

上司や給与計算担当者に相談しても誠実な対応が得られない、あるいは説明に納得できない場合は、外部の専門機関に相談することを検討します。
その代表的な相談先が、労働基準監督署です。
労基は、会社が労働基準法などの法律を守っているかを監督する行政機関であり、労働問題に関する相談を無料で行っています。

賃金の未払いなど労働基準法違反の疑いがあれば、会社に対して調査や正勧告を行ってくれる場合があります。

【給与計算担当者向け】給料の間違い発覚!誠実に対応する3ステップ

給与計算の間違いが発覚した際、給与計算担当者は迅速かつ誠実な対応を求められます。
ミスは誰にでも起こり得ますが、その後の対応が従業員との信頼関係を大きく左右します。
まずは丁寧なお詫びと原因説明を行い、速やかに正しい給与額を訂正・精算することが不可欠です。

ここでは、給料の間違いが起きてしまった場合に給与計算担当者が踏むべき3つのステップを具体的に解説します。

STEP1:従業員へ速やかに謝罪し、ミスの原因と対応を丁寧に説明する

従業員から給与の間違いを指摘された場合、あるいは自社でミスを発見した場合は、何よりもまず対象の従業員へ速やかに謝罪することが最優先です。
給与は従業員の生活の基盤であり、その金額を間違えた場合は、真摯にお詫びの意を伝えなければなりません。
その上で、なぜ今回のミスが起きたのかという原因と、不足分や過払い分をどのように精算するのかという今後の対応について、丁寧に分かりやすく説明し、従業員の不安を取り除くことが重要です。

給与計算のミスは会社の信頼に直結します。

STEP2:給与の不足分を精算する具体的な方法(当月・翌月)

従業員に支払う給与が少なかった場合、原則として、間違いが発覚次第、速やかに不足分を支払いましょう。
銀行振込や現金手渡しなどの方法が考えられます。
また、不足分を支払うことで所得税や社会保険料の再計算が必要になる場合もあります。
従業員の同意が得られれば、翌月の給与支払い日に、上乗せして精算する方法も可能です。

その際は、どの項目をいくら調整したのかが分かるように、翌月の給与明細に調整額を明記することがトラブル防止につながります。

STEP3:給与を過払いしてしまった場合の返金手続きと注意点

本来の金額より多い給与を支払ってしまった過払いの場合、会社は従業員に対して返金を求める権利があります。
しかし、会社が一方的に翌月の給与から天引き(相殺)することは、労働基準法で原則として禁止されています。
給与の過払いが多いと気づいた際は、まず従業員に事情を説明し、返金方法について同意を得る必要があります。

現金での返金や、本人の同意を得た上で翌月の給与から調整するなどの方法が一般的です。
同意書を取り交わしておくと、後のトラブルを防げます。

給料の計算ミスが起こる5つの主な原因

給与計算のミスは、なぜ起きてしまうのでしょうか。
その原因は一つではなく、複数の要因が絡み合っていることがほとんどです。
単純な入力ミスから、法改正への対応漏れ、社内の情報共有不足まで、様々な原因が考えられます。

ミスの原因を正しく把握することは、効果的な再発防止策を講じるための第一歩です。
ここでは、給与計算で間違いが起こりやすい5つの主な原因について解説します。
給与計算のやり方については「給与計算のやり方を5つの手順で解説」で詳しく紹介しています。

手作業による単純な入力・計算ミス

給与計算をExcelや電卓などで行っている場合、手作業によるヒューマンエラーは最も起こりやすい原因の一つです。
例えば、勤怠データの転記ミス、時給や残業時間などの数字の入力間違い、計算式の誤りなどが挙げられます。
担当者の見間違いや思い込み、疲労などが重なると、こうした単純なミスが発生する可能性は高まります。

特に、多くの従業員の給与を限られた時間で処理しなければならない状況では、注意していてもミスを完全になくすことは困難です。

法改正(税率・保険料率の変更)への対応漏れ

社会保険料率や雇用保険料率、所得税の税率などは、毎年のように法改正によって変更されます。
特に、健康保険料率や介護保険料率は都道府県ごとに異なり、定期的に見直しが行われます。
これらの法改正の情報を正確にキャッチアップし、給与計算システムの設定や計算式に反映できていないと、全従業員の給与計算が間違ってしまうという事態になりかねません。

担当者が最新の法令を常に確認し、適切なタイミングで更新作業を行う必要があります。

従業員の労働条件変更(昇給・異動)の反映忘れ

従業員の昇給や降格、部署異動、扶養家族の増減といった労働条件の変更は、給与額に直接影響します。
これらの人事情報を、人事部から給与計算の担当部署へ正確かつタイムリーに伝達できていないと、給与計算への反映が漏れてしまうことがあります。
特に、給与計算の締め日直前に人事異動があった場合などは、情報連携が間に合わずに古い情報のまま計算してしまうリスクが高まります。

部署間のスムーズな情報共有体制が不可欠です。

複雑な勤怠管理による集計ミス

近年、働き方の多様化に伴い、フレックスタイム制や変形労働時間制、裁量労働制など、企業が採用する勤怠管理の方法は複雑化しています。
これらの制度は、それぞれ残業時間の計算方法が異なるため、正確な労働時間の集計が難しくなりがちです。

タイムカードや出勤簿を手作業で集計している場合、労働時間の数え間違いや、割増賃金の計算ミスが発生しやすくなります。
複雑な勤務形態が増えるほど、集計ミスのリスクは増大します。
変形時間労働制については「変形時間労働制における未払い賃金」で詳しく紹介しています。

担当者間の情報共有不足

給与計算業務を複数の担当者で分担している場合や、担当者の引き継ぎが行われた際に、情報共有が不足しているとミスが発生しやすくなります。
特定の従業員に関する個別の取り決めや、イレギュラーな対応事項などが口頭での伝達に留まっていると、担当者が変わった際にその情報が引き継がれず、計算ミスにつながることがあります。

業務手順をマニュアル化し、担当者間で情報を共有・可視化する仕組み作りが重要です。

給与計算の間違いを未然に防ぐための具体的な再発防止策

一度起こしてしまった給与計算のミスを、二度と繰り返さないためにはどうすればよいのでしょうか。
ミスを個人の責任にするのではなく、組織として仕組みで防ぐという視点が重要です。
ダブルチェック体制の構築やチェックリストの活用といったアナログな方法から、システムの導入による自動化、専門家へのアウトソーシングまで、具体的な再発防止策は様々です。

自社の状況に合わせて、これらの対策を組み合わせることが効果的です。
給与計算を効率化する方法については「給与計算を効率化する5つの方法」で詳しく紹介しています。

複数人によるダブルチェック体制を構築する

最も基本的かつ効果的な再発防止策は、複数人によるダブルチェック体制を構築することです。
一人の担当者が計算した結果を、必ず別の担当者が検算・確認するフローを徹底します。
これにより、単純な入力ミスや計算間違いといったヒューマンエラーを大幅に減らすことが可能です。

担当者同士がお互いの業務をチェックすることで、緊張感が生まれ、より慎重な作業につながるという効果も期待できます。
責任者による最終承認のプロセスを設けることも有効です。

確認作業を効率化するチェックリストを作成・運用する

給与計算の過程で確認すべき項目をリスト化し、毎回そのリストに基づいてチェック作業を行うことも有効な再発防止策です。
例えば、「今月の法改正・料率変更は反映したか」「昇給・異動者の情報は更新したか」「新入社員・退職者の処理は完了したか」といった項目をリストアップします。
チェックリストを活用することで、確認作業の抜け漏れを防ぎ、誰が作業しても一定の品質を担保できるようになります。

定期的にリストの内容を見直し、更新することも重要です。

勤怠管理・給与計算システムを導入して自動化する

手作業によるミスを根本的に防ぐためには、勤怠管理システムや給与計算システムを導入し、業務を自動化することが最も効果的です。
勤怠システムを導入すれば、従業員の打刻データが自動で集計され、残業時間や深夜労働時間なども正確に算出されます。
さらに、給与計算システムと連携させることで、集計された勤怠データが自動で給与計算に反映されるため、転記ミスがなくなります。

法改正にも自動で対応するシステムが多く、担当者の負担を大幅に軽減できます。
給与計算DX化については「給与計算DX化のメリットと進め方」で詳しく紹介しています。

専門家(社会保険労務士など)へのアウトソーシングを検討する

社内に給与計算の専門知識を持つ人材がいない場合や、担当者の負担が大きい場合には、専門家へ業務をアウトソーシングするのも有効な選択肢です。
社会保険労務士などの専門家は、労働法や社会保険に関する最新の知識を有しており、法改正にも迅速かつ正確に対応してくれます。
給与計算業務を外部に委託することで、社内のリソースを他のコア業務に集中させることができ、結果として生産性の向上にもつながります。

給料 間違いに関するよくある質問

ここでは、給料の間違いに関して多くの人が抱く疑問について、Q&A形式で解説します。

給料の間違いを請求できる期間に時効はありますか?

はい、賃金請求権には時効があり、現在は3年です。
過去の給料に間違いがあった場合でも、3年以内であれば未払い分の請求が可能です。

以前は2年でしたが、2020年4月の民法改正に伴い変更されました。
時効が成立する前に会社へ請求の意思表示をすることが重要です。

多く払いすぎた給料を従業員が返してくれない場合、どうすればいいですか?

まずは誠意をもって交渉し、返還を求めることが基本です。
それでも従業員が返還に応じない場合は、内容証明郵便で返還請求を行う、あるいは「不当利得返還請求訴訟」といった法的措置を検討することになります。
ただし、訴訟は時間も費用もかかるため、最終手段と考えるべきです。

会社が倒産した場合、未払いの給料は請求できますか?

会社の財産から優先的に支払いを受けられる可能性があります。
「未払賃金立替払制度」を利用できる場合があります。
これは、会社に代わって独立行政法人労働者健康安全機構が、未払い賃金の一部を立て替え払いする制度です。

なお、会社が存続している場合の給与未払いには、遅延損害金も請求できます。

まとめ

給料の間違いは、労働者と会社の双方にとって重要な問題です。
労働者側は、間違いに気づいたらまず給与明細を冷静に確認し、具体的な根拠を持って上司や給与計算担当者に相談することが大切です。
一方、給与計算担当者側は、ミスが発覚したら速やかに謝罪し、誠実な対応と正確な精算を行うことで、信頼関係の悪化を防がなければなりません。

退職後であっても、時効期間内であれば未払い分の請求は可能です。
ミスを未然に防ぐためのダブルチェック体制やシステム導入などの再発防止策を講じ、正確な給与計算を徹底することが求められます。


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吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)

執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)

社会保険労務士法人ONE HEARTの代表社労士。慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。こうした経営者の負担を軽減しながら、自らも模範となる会社づくりを実践したいという想いから、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立。

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