コラム

平均賃金の計算方法|休業手当・解雇予告手当の例と注意点

平均賃金の計算方法|休業手当・解雇予告手当の例と注意点

平均賃金の計算方法は、労働基準法で定められた休業手当や解雇予告手当などを算出する際に基礎となる重要なものです。
この計算は、原則として「算定期間の賃金総額をその期間の総日数で割る」ことで行いますが、パート・アルバイトの場合の最低保障額や、計算に含める手当の範囲など、いくつかのルールがあります。
本記事では、具体的な計算例を交えながら、平均賃金の正確な算出方法と注意点を解説します。

平均賃金とは?まずは基本を理解しよう

平均賃金とは、労働基準法で定められた各種手当などを計算する際の基礎となる金額のことです。
これは、労働者に解雇予告手当や休業手当などを支払う必要が生じた際に、直近の賃金支払実態に基づいて「1日あたりの賃金額」を算出し、労働者の生活を保障することを目的としています。

計算方法は法律で具体的に定められており、企業は正しく算出しなければなりません。

労働基準法で定められた手当計算の基礎となる賃金

平均賃金は、労働基準法第12条で定義されています。
この規定の目的は、労働者が会社の都合で休業したり、解雇されたりした場合でも、普段の生活水準を維持できるよう最低限の保障を提供することにあります。

そのため、算定の基礎となる賃金には、基本給だけでなく残業代や通勤手当なども含め、実態に近い金額が反映される仕組みになっています。
この平均賃金を用いることで、公平かつ客観的な基準で各種手当の金額を決定できます。

解雇予告手当や休業手当など平均賃金が使われる5つの場面

平均賃金は、主に以下の5つの場面で計算の基礎として用いられます。
解雇予告手当:労働者を即時解雇する場合に支払う、30日分以上の平均賃金。
休業手当:会社の都合で労働者を休業させる場合に支払う、平均賃金の60%以上。

年次有給休暇(有休)の賃金:有給休暇を取得した日の賃金を、平均賃金で支払うと定めている場合に利用。
労災保険の休業補償給付:業務上の怪我や病気で休業した場合に支給される給付金の算定基礎となる。
減給の制裁:就業規則に基づく減給処分の制限額(1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならない)を算出する際に使用。

【原則】平均賃金の基本的な計算方法と計算式

平均賃金の原則的な計算は、月給制の正社員などを想定した方法です。
計算式は「算定事由が発生した日以前3ヶ月間に支払われた賃金の総額÷その期間の総日数(暦日数)」となります。
この計算式を3つのステップに分け、賃金総額に何が含まれるか、総日数の考え方はどうなっているかなどを具体的に解説します。

ステップ1:算定すべき事由が発生した日(起算日)を確認する

平均賃金を計算するための最初のステップは、起算日を特定することです。
起算日とは、「平均賃金を算定すべき事由が発生した日」を指します。
例えば、解雇予告手当であれば労働者に解雇を通知した日、休業手当であれば休業を開始した初日が該当します。

ただし、賃金締切日が定められている場合は、事由発生日の直前の賃金締切日から遡って3ヶ月間を計算期間とします。
例えば、月末締めの会社で8月10日に休業が始まった場合、直前の締切日である7月31日から遡り、5月、6月、7月の3ヶ月間が算定期間となります。

ステップ2:直前3ヶ月間の賃金総額を算出する

次に、起算日から遡った3ヶ月間の賃金総額を計算します。
この賃金総額は、税金や社会保険料などが控除される前の「総支給額」を指します。
基本給だけでなく、労働の対償として支払われるすべてのものが含まれますが、一部例外的に除外される賃金もあるため、どの手当が含まれるかを正確に把握することが重要です。

この賃金総額が、平均賃金を算出する計算式の分子となります。

計算に「含める」賃金(残業代・通勤手当など)

平均賃金の計算基礎となる賃金総額には、労働の対価として支払われるすべてのものが原則として含まれます。
具体的には、基本給、役職手当、資格手当、家族手当、住宅手当といった各種手当のほか、時間外労働に対する残業代、休日出勤手当、深夜手当も対象です。
また、公共交通機関の定期代として支払われる通勤手当や、皆勤手当なども賃金総額に算入する必要があります。

計算から「除外する」賃金(賞与・臨時手当など)

一方、以下の賃金は平均賃金の計算から除外されます。
1.臨時に支払われた賃金:結婚手当、傷病見舞金、退職金など、発生が不確定で一時的なもの。
2.3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金:年2回や3回支給される賞与(ボーナス)など。
3.労働協約で定められていない現物支給:食事や住宅の提供など、金銭以外で支払われるもののうち、労働協約に規定がないもの。

なお、給与から控除される所得税や社会保険料は、差し引く前の金額で計算します。

ステップ3:直前3ヶ月間の総日数(暦日数)で割り算する

算出した賃金総額を、算定期間の「総日数」で割ります。
ここで注意すべき点は、分母となる日数が「労働日数(実際に出勤した日数)」ではなく、「暦日数(カレンダー上の日数)」であることです。
したがって、土日祝日などの所定休日も日数に含まれます。

例えば、算定期間が5月1日から7月31日までの場合、総日数は31日(5月)+30日(6月)+31日(7月)=92日となります。
この暦日数で割ることで、1日あたりの平均賃金が算出されます。

【計算例】月給制正社員の場合のシミュレーション

具体的な例で計算してみましょう。
月給制正社員、月給35万円(基本給30万円、諸手当5万円)
賃金締切日:毎月25日
算定事由の発生日:8月10日

算定期間の特定:直前の賃金締切日は7月25日。そこから3ヶ月遡るため、算定期間は4月26日~7月25日となる。この間の賃金支払対象期間は5月、6月、7月の3ヶ月間。
賃金総額の算出:35万円×3ヶ月=105万円
総日数の算出:算定期間は5月(31日)+6月(30日)+7月(31日)=92日
平均賃金の計算:105万円÷92日≒11,413.04円
この場合、1日あたりの平均賃金は11,413円04銭となります。

【例外】パート・アルバイトなどの最低保障額の計算方法

日給制や時給制で働くパート・アルバイトのように、労働日数が少ない労働者の場合、原則通りの計算方法では平均賃金が著しく低くなる可能性があります。
このような不利益を避けるため、労働基準法では「最低保障額」という例外的なルールが設けられています。
この計算では、原則の計算結果と最低保障額を比較し、高い方の金額を平均賃金として採用します。

具体的には、賃金総額を実労働日数で割り、その金額に60%を乗じて算出します。

最低保障額とは?日給・時給制で労働日数が少ない場合のルール

最低保障額は、日給、時給、出来高払制などで働く労働者の生活を保障するための仕組みです。 これらの労働者は月によって出勤日数が変動しやすく、たまたま出勤が少ない月に算定事由が発生すると、暦日数で割る原則計算では平均賃金が非常に低くなってしまいます。 そこで、労働者の不利益を救済するために、もう一つの計算方法が用意されています。

平均賃金の最低保障額の計算式は、賃金の一部が月・週その他一定の期間によって定められた場合は、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と、「賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の100分の60」の合算額となります。この計算結果が原則計算の結果を上回る場合は、こちらを平均賃金とします。

2つの計算結果を比較して高い方の金額を採用する

パート・アルバイトなどの平均賃金を計算する際は、必ず2つの方法で計算し、その結果を比較する必要があります。
原則の計算:直前3ヶ月の賃金総額÷その期間の総日数(暦日数)
最低保障額の計算:(直前3ヶ月の賃金総額÷その期間の実労働日数)×60%

この2つの金額を算出した後、どちらか高い方の金額をその労働者の平均賃金として採用します。
これにより、労働日数が少ない月があっても、賃金実態からかけ離れた低い金額になることを防ぎ、労働者を保護しています。

【計算例】時給制パート・アルバイトの場合のシミュレーション

時給1,200円のパートタイマー
賃金締切日:毎月末日
算定事由の発生日:7月15日
算定期間(4月~6月)の賃金と労働日数:
4月:60,000円(50時間/10日間労働)

5月:48,000円(40時間/8日間労働)
6月:72,000円(60時間/12日間労働)
原則計算
賃金総額:60,000+48,000+72,000=180,000円
総日数:30日(4月)+31日(5月)+30日(6月)=91日
平均賃金①:180,000円÷91日≒1,978円
最低保障額の計算
実労働日数:10+8+12=30日
平均賃金②:(180,000円÷30日)×60%=3,600円
原則計算(1,978円)と最低保障額(3,600円)を比較し、高い方である3,600円がこの労働者の平均賃金となります。

平均賃金の計算で間違いやすい注意点

平均賃金の計算には、原則や最低保障以外にもいくつかの特殊なルールが存在します。
例えば、入社して間もない従業員や、産前産後休業などで長期間休んでいた従業員のケースでは、通常とは異なる計算方法が適用されます。

また、計算結果に端数が出た場合の処理方法も知っておく必要があります。
これらの注意点を事前に把握し、計算ミスを防ぐことが重要です。

雇い入れ後3ヶ月未満の場合の計算はどうする?

従業員を雇い入れてから3ヶ月未満の期間に平均賃金を算定する事由が発生した場合、算定期間は「雇い入れ後の期間」そのものとなります。
例えば、入社して2ヶ月で休業手当の支払いが必要になった場合は、その2ヶ月間の賃金総額を、その期間の総日数で割って平均賃金を算出します。

もし入社当日に算定事由が発生した場合など、計算が困難な場合は、厚生労働省令で定める基準に従うことになります。

産前産後休業や業務上の怪我による休業期間の扱いは?

平均賃金の計算において、特定の理由による休業期間は、算定期間の賃金総額と日数の両方から除外されます。
これは、休職などで賃金が支払われなかった期間を含めると、平均賃金が不当に低くなるのを防ぐためです。
対象となる期間は以下の通りです。

業務上の負傷または疾病による療養のための休業期間
産前産後休業期間
育児休業、介護休業期間
会社の都合による休業期間
試用期間
これらの期間が算定の3ヶ月間に含まれる場合は、その日数と期間中に支払われた賃金を差し引いて計算します。

計算結果に1円未満の端数が出た場合の処理方法

平均賃金を計算した結果、1円未満の端数(銭単位)が生じることがあります。
この場合の端数処理について、労働基準法に明確な規定はありませんが、行政通達により「最後の銭未満の端数は切り捨てる」とされています。
したがって、特別な定めがなければ、小数点以下は切り捨てて問題ありません。

ただし、労働者の不利益にならないように、労使間の合意に基づいて四捨五入や切り上げで処理することも可能です。

平均賃金 計算方法に関するよくある質問

平均賃金の計算方法に関して、特によく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q. 賞与(ボーナス)や退職金は平均賃金の計算に含めますか?

いいえ、含めません。
賞与(ボーナス)は「3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」に該当するため、算定基礎から除外されます。
ただし、年4回以上支払われる場合は賃金総額に含めます。

退職金は、恩恵的に支払われる一時金と解釈され、労働の対価ではないため計算には含みません。

Q. 試用期間中に解雇された場合の平均賃金はどうなりますか?

試用期間中の賃金と日数を基に計算します。
雇い入れ後3ヶ月未満のケースと同様に、実際に雇用されてからの期間が算定期間となります。

例えば、入社後1ヶ月の試用期間中に解雇を通知された場合、その1ヶ月間の賃金総額をその期間の総日数で割って平均賃金を算出します。

Q. 計算が複雑です。簡単に計算できるツールはありますか?

はい、あります。
カシオが運営する計算サイト「keisan」など、数値を入力するだけで自動計算できるツールが便利です。
また、社会保険労務士事務所のウェブサイトにもシミュレーターが用意されていることがあります。

厚生労働省や各都道府県の労働局が、計算用のエクセルシートを配布している場合もあります。

まとめ

平均賃金は、労働基準法に基づき休業手当や解雇予告手当などを算出するための基礎となる金額です。
計算は、原則として「直前3ヶ月の賃金総額÷その期間の総日数(暦日数)」で算出します。
パートタイマーなど労働日数が少ない場合は、労働者の不利益とならないよう最低保障額と比較し、高い方の金額を採用します。

計算に含める賃金・除外する賃金や、休業期間の控除など細かなルールがあるため、正確な算定には正しい知識の習得が不可欠です。


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吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)

執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)

社会保険労務士法人ONE HEARTの代表社労士。慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。こうした経営者の負担を軽減しながら、自らも模範となる会社づくりを実践したいという想いから、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立。

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