このコラムは、Podcastラジオ “社労士吉田優一の「給与設計相談室」” 第6回の配信をもとに書かれた記事です。
Podcastでは、給与・報酬の設計を中心に、会社を経営していくうえでぶつかる人事の課題についてお話ししています。ぜひフォローをお願いします!
スタートアップによくある悩み。それは、限られた予算で優秀な人材をいかに確保するかではないでしょうか。事業のフェーズによっては候補者にいい条件が提示できず採用に困っている会社も少なくありません。
今回は採用につなげるための報酬設計や注意点について解説していきます。
明るい将来像を提示する
優秀な人材を確保するには、会社の将来像を共有し、実現できるキャリアを提示することが大切です。極端な話ですが、年収が倍増したとしても、未来が見えない会社やキャリアとしてのステップアップが望めない会社では、求人応募は集まりにくいといえます。
・3年後の会社の利益は2倍に増える計画だから、その分給与も今より◯◯円多く支払うことができる
・あなたがこのような活躍をしてくれたらその分給与がこのくらい上がる
このように、会社がいかに自分を求めているか意識してもらい、会社の成長のために必要な人材であることを訴求することが、採用への一歩です。
「目の前の給与」以外の4つの要素
スタートアップは資金に余裕がないことが多いです。そのようなときは、次の要素を組み込むと採用の可能性が広がるでしょう。
①給与テーブルを作成してキャリア像を明確にみせる
給与テーブルとは給与を設定する表のことです。社員の実力に対応する等級を基準とし、給与テーブルをもとに給与額を決めます。
引用:https://smarthr.co.jp/recruit/
これはSmartHRの給与テーブルの一部です。
SmartHRは給与テーブルを社内外に公表していることで有名です。
メリットとして考えられるのは、今後の自分の頑張り次第でどのように給与が上がるのかが明確になることです。モチベーションアップにつながり、パフォーマンスの向上が期待されます。
さらに社外に公表することで、SmartHRへの転職を検討している人も応募しやすくなります。実際、給与テーブルを公開したことによって求人応募が増えたとされています。
このように給与テーブルを作成し、候補者に提示することはメリットが多いのです。
しかし作成するマンパワーがない会社もあるでしょう。そのようなときは次のポイントが参考になります。
②休日の多さ
休日の条件を、週休3日に設定することも有効です。
昨今の会社では週休2日がスタンダードです。しかし、近年週休3日制を提唱する会社が増えてきています。
例:サイボウズ(株)、Yahoo!JAPAN、佐川急便(株)、(株)ファーストリテイリング
お子さんがいる方でパートナーも働いているとしたら、給与の額よりも休日が多い方に重きを置いている人もいるでしょう。そういう方にとっては魅力的な条件になります。
ランスタッドが2022年に行った調査によれば、週休3日制を「選択したい」、「すでに選択している」という人の合計は約70%という結果が出ています。
はたらこネットが2018年に行った同主旨のアンケートでは58%という結果だったことから(調査実施主体や回答母集団の差異はあるため一概に比較はできませんが)、週休3日への世の中の意見がポジティブに傾いていることが考察されます。
③働く場所
以前はオフィスに出社するのが普通でしたが、コロナの影響で一気にリモートワークが増えました。通勤時間がなくなることは働きやすさに繋がります。
出社しなくても仕事ができる環境を整備し、自宅などで働ける環境を提供して、柔軟な働き方が可能であることを提示します。
④幅広い経験
スタートアップなら、今の会社に居続けても得られない営業、経理、採用、制度設計、ファイナンスなどの経験をすることができます。多様な業務に携われることで、今後の自分のキャリアアップになることはもちろん、試行錯誤しながら働いていく中で問題解決能力の向上にもつながっていくことでしょう。
一昔前なら、給与よりも様々な経験を積みたい、今の会社ではできないことをやりたい、と考え、スタートアップに飛び込んでいく人はいました。
しかしこの条件には注意が必要です。
少し前に比べて、ブラックなスタートアップに関する情報や記事が増え、「経験」だけを売りに採用活動をすることが炎上につながるなど、難しくなっています。
給与以外を訴求する上での注意点
いざ採用し働いてもらうことになり、会社も成長してきたにも関わらず低い給与のまま働かせる社長はいると思いますか?
答えは、います。とても残念なことですが。
都合のいいことを言って低い給与で働かせ、結果トラブルに繋がったという相談は、少なからず当社にも寄せられます。
入り口の給与を高く設定できなかったとしても、そこから先の給与・経験・環境などさまざまな方法で本人のキャリアにプラスになることを後押ししてあげることによって、従業員とのトラブルは少なくなるのではないでしょうか。
まとめ
今回のコラムでは、給与の他にどのような条件を提示すれば優秀な人材が確保できるかを解説してきました。
将来像をみせる、休日を増やす、リモートワークにする、様々な経験を与える、と多様な要素がありますが、最後は経営者として今まで提供してもらった労働力に還元するという姿勢が大切になるのではないでしょうか。
採用活動の際は、ぜひこのコラムを参考にしてみてください。
—
いかがでしたか?
社会保険労務士法人ONE HEARTはITツールを組み合わせて、効率的な労務管理を作り、会社の発展に貢献します。急成長するスタートアップから、長年続く老舗企業まで、幅広いクライアント様をご支援させていただいています。
ONE HEARTに労務のご相談をしたい方、ONE HEARTでのお仕事に興味がある方、吉田とお話ししてみたい方など、ホームページの問い合わせフォームやtwitterのDMからお気軽にご連絡いただけると幸いです!
執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)
慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。効率的な労務管理の手法を広めつつ、自ら会社経営を実践するために社会保険労務士法人ONE HEARTを設立し独立開業。