コラム

 2026年4月改定 健康保険の扶養認定|社会保険の壁を契約書で判断

 2026年4月改定 健康保険の扶養認定|社会保険の壁を契約書で判断

このコラムは、Podcastラジオ “社労士吉田優一の「10分で労務がわかるラジオ」” 第201回の配信をもとに書かれた記事です。

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目次

2026年4月の健康保険制度改正により、被扶養者の認定基準が大きく変わります。

これまでの収入実績に基づく判断から、労働条件通知書や雇用契約書に記載された見込み収入を基にする方式へ移行します。

この変更は、いわゆる「年収の壁」を意識した働き控えを解消し、より柔軟な働き方を促進することが目的です。

本記事では、この新しい社会保険の扶養認定ルールについて、具体的な判断基準や実務上の変更点を解説します。

2026年4月から健康保険の扶養認定は労働契約書ベースに変わります

2026年4月から、健康保険の被扶養者認定における収入確認の方法が変更されます。

従来は過去の収入実績やその時点での収入状況から将来の年収を推計していましたが、改定後は原則として労働契約書などに明記された契約内容に基づいて判断されることになります。

この変更により、扶養認定の基準が明確化され、働く側も企業側も収入見込みを客観的に把握しやすくなります。

扶養認定の基準が「過去の実績収入」から「契約上の見込み収入」へ変更される背景

扶養認定の基準が変更される背景には、従来の制度が持つ曖昧さの問題がありました。

これまでは、過去の給与明細などを基に「将来1年間の収入見込み」を判断していましたが、交通費の扱いや月々の収入変動の評価が保険者(健康保険組合など)によって異なり、判断基準が不安定でした。

このため、労働者は常に収入の変動を気にする必要がありました。

今回の改定では、労働条件通知書や雇用契約書という客観的な書類を基準とすることで、誰にとっても公平で分かりやすい、安定した制度運用を目指しています。

「年収の壁」を意識した働き控え問題の解消が主な目的

今回の制度改正における最大の目的は、社会問題となっている「働き控え」の解消です。

いわゆる「130万円の壁」を超えると社会保険の扶養から外れ、自身で保険料を支払う必要が生じるため、多くのパートタイマーが年収を基準内に抑えようと労働時間を調整しています。

この働き控えは、深刻化する人手不足を助長する一因とされてきました。

契約上の収入で見込みを判断する新ルールは、繁忙期などの一時的な収入増を気にせず働ける環境を整え、労働者が能力を十分に発揮できる社会を目指すための重要な一歩です。

【新ルール解説】2026年4月以降の扶養認定の具体的な判断基準

2026年4月の制度改正後、健康保険の扶養認定は、より明確で客観的な基準に基づいて行われるようになります。

このセクションでは、新しい判断基準の核心となる「契約書での収入確認」、契約に含まれない「一時的な収入の扱い」、そして収入が基準額を超えた場合の「具体的な対応」について、詳しく解説していきます。

原則として労働条件通知書や雇用契約書の記載内容で年間収入を判断

2026年4月以降、被扶養者の収入要件(年間収入130万円未満)の確認は、原則として労働条件通知書や雇用契約書に記載された内容に基づいて行われます。

具体的には、時給や月給、所定労働時間、各種手当など、契約書に明記されている項目から年間の見込み収入額を算出します。

例えば「時給1,200円、1日の所定労働時間5時間、週4日勤務」という契約であれば、その内容を基に年収を計算し、基準額未満であるかを確認します。

これにより、月々の収入の変動に左右されず、契約時点での見込み額で安定した判断が可能となります。

契約外の残業代や賞与など一時的な収入の取り扱いについて

新しい扶養認定ルールでは、雇用契約書に定められていない臨時的な収入の扱いが重要なポイントです。

具体的には、突発的に発生した残業に対する割増賃金や、業績に応じて一時的に支給される賞与、インセンティブなどは、原則として年間見込み収入の算定基礎から除外されます。

これは、あくまで契約上の所定労働に対する収入を基準とするためです。

ただし、毎年決まった時期に定額の賞与が支給されるなど、実質的に給与の一部とみなされる場合は算定に含まれる可能性があるため、個別の契約内容の確認が重要です。

繁忙期などで一時的に収入が130万円を超えた場合の具体的な対応

雇用契約上の年収は130万円未満であっても、繁忙期に対応するための残業などで、結果的にその年の収入が130万円を超えてしまうケースも想定されます。

新制度では、このような一時的な事情による収入増であれば、原則として扶養の資格を維持できます。

ただし、その場合、被保険者は保険者に対し、収入増が契約外の業務による一時的なものであることを証明するための「申立書」などを提出する必要があります。

これにより、契約内容に変更がない限り、予期せぬ収入増で即座に扶養から外れるといった事態を避けることができます。

「130万円の壁」はどう変わる?パート・アルバイトの働き方への影響

今回の制度改正は、「130万円の壁」が廃止されるわけではありませんが、その捉え方や影響を大きく変える可能性があります。

契約内容を基準とすることで、これまで多くのパート・アルバイト労働者が行ってきた「働き控え」を緩和し、より柔軟な働き方を後押しすることが期待されます。

ここでは、具体的な働き方の変化や契約時に注意すべき点について解説します。

契約上の年収が130万円未満なら突発的な残業で超えても扶養を維持しやすく

新制度の最大のメリットは、扶養を維持しやすくなる点です。

これまでは、少し残業が増えただけで年収が130万円を超えてしまい、扶養から外れるリスクがありました。

しかし改定後は、雇用契約書で定められた年収が130万円未満であれば、突発的な残業によって一時的に収入が増加しても、扶養資格を失う心配が大幅に軽減されます。

契約外の一時的な収入が年収算定から除かれることで、年末の繁忙期などにも収入の壁を気にせず、安心して仕事に取り組めるようになります。

これにより、これまで行ってきたような期末の就業調整が不要になる可能性があります。

扶養内で働き続けたい人が契約時に確認すべき給与項目

今後、扶養内で働き続けることを希望する場合、雇用契約を結ぶ際の書類確認がこれまで以上に重要になります。

特に、2026年の制度開始を見据え、2025年のうちから契約更新などのタイミングで内容を精査することが望ましいでしょう。

確認すべき項目は、時給や月給といった基本給、週の所定労働時間、固定的に支払われる諸手当です。

これらの項目から算出される年間見込み収入が、130万円未満に設定されているかを必ず確認してください。

また、交通費は非課税であっても社会保険の収入計算には含まれるため、その金額も忘れずに合算して判断する必要があります。

【担当者必見】扶養認定手続きで必要になる書類と実務上の変更点

2026年4月の制度改正は、企業の給与計算や社会保険手続きを担当する実務者にとっても大きな変更点となります。

扶養認定の申請時に求められる書類が変わり、社内での準備や従業員への周知が不可欠です。

2025年中に対応方針を固め、スムーズな移行ができるよう、今から変更点を正確に把握しておくことが求められます。

扶養申請時に提出が必要となる「労働条件通知書」の写し

2026年4月以降の扶養認定手続きにおける最も大きな変更点は、申請時に「労働条件通知書」または「雇用契約書」の写しの提出が原則として必須になることです。

これにより、保険者は客観的な証拠に基づいて年間見込み収入を迅速かつ正確に判断できるようになります。

企業の人事・労務担当者は、従業員から扶養家族の追加申請があった際に、これらの書類を確実に添付してもらう必要があります。

そのため、労働条件通知書を適切に交付し、従業員がいつでも参照・提出できるよう管理体制を整えておくことが重要です。

被扶養者本人による「見込み年収の申立書」の役割

労働条件通知書だけでは収入見込みの判断が難しいケースに対応するため、「見込み年収の申立書」が重要な役割を担います。

例えば、複数の勤務先を掛け持ちしている場合や、歩合給など月々の収入が変動しやすい契約形態の場合、契約書だけでは年収の見通しが立てにくくなります。

また、繁忙期に残業が増えた際に、それが一時的なものであると証明する場合にもこの申立書が用いられます。

被扶養者本人が収入の実態や見込みを申し立て、保険者がそれを補足情報として審査に活用するための書類です。

企業の人事・労務担当者が事前に準備しておくべきこと

企業の人事・労務担当者は、制度改正に向けて計画的な準備が求められます。

まずは、扶養内で働くパート・アルバイト従業員に対し、今回の制度変更の内容と、今後の手続きの変更点について、2025年中を目途に説明会を開くなどして丁寧に周知することが重要です。

その上で、従業員の働き方の意向を再確認し、必要であれば雇用契約の見直しを検討します。

また、2026年4月からの申請に備え、労働条件通知書を漏れなく発行・保管するフローを確立し、問い合わせに対応できる体制を整えておく必要があります。

2026年4月の健康保険扶養認定改定に関するよくある質問

健康保険の扶養認定における制度改正は、働き方や手続きに直接影響するため、多くの疑問が寄せられています。2026年5月1日更新の情報によると、令和8年4月1日以降に適用されると記載されています。ここでは、特に質問の多い「残業代の扱い」「必要書類」「130万円の壁の今後」という3つのポイントについて、Q&A形式で分かりやすく解説します。

2026年4月からの扶養認定では、雇用契約書にない残業代は本当に年収に含まれないのですか?

はい、原則として含まれません。

雇用契約書で定められていない突発的な残業による手当や一時金は、見込み年収の算定から除外されます。

ただし、毎月一定時間の残業が恒常的に発生しているなど、実態として給与に組み込まれていると判断される場合は、契約内容の見直しが求められ、年収に含まれる可能性もあります。

扶養に入るための手続きで、具体的にどの書類を準備すればよいですか?

従来の被扶養者(異動)届などに加え、新たに「労働条件通知書」や「雇用契約書」の写しの提出が原則として必要になります。

これは、契約上の収入を客観的に証明するためのものです。

また、複数の仕事を掛け持ちしている場合など、契約書だけでは判断が難しいケースでは、収入状況を補足説明するための「申立書」の提出が求められることもあります。

今回の健康保険法改定で「130万円の壁」は実質的になくなると考えてよいのでしょうか?

いいえ、「130万円の壁」自体が廃止されるわけではありません。

年間収入130万円未満という基準は維持されます。

今回の改定は、その収入を判断する方法が「過去の実績」から「将来の契約内容」に変わるという点がポイントです。

これにより、契約上の年収が基準未満であれば、突発的な残業などを気にせず働きやすくなるため、壁の影響が緩和されると理解するのが適切です。

まとめ

2026年4月から、健康保険の扶養認定基準は、過去の収入実績ではなく、労働条件通知書や雇用契約書に基づく見込み収入で判断される方式に変更されます。

この改定により、契約上の年収が130万円未満であれば、繁忙期などの一時的な収入増で扶養から外れるリスクが大幅に軽減されます。

扶養内で働く方は自身の雇用契約内容を正確に把握し、企業担当者は従業員への周知と新しい申請手続きへの準備を進めることが重要です。

また、社会保険労務士法人ONE HEARTはITツールを組み合わせて、効率的な労務管理を作り、会社の発展に貢献します。急成長するスタートアップから、長年続く老舗企業まで、幅広いクライアント様をご支援させていただいています。

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執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)

社会保険労務士法人ONE HEARTの代表社労士。慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。こうした経営者の負担を軽減しながら、自らも模範となる会社づくりを実践したいという想いから、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立。

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