このコラムは、Podcastラジオ “社労士吉田優一の「10分で労務がわかるラジオ」” 第216回の配信をもとに書かれた記事です。
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「育休から戻ってくるスタッフに、時短勤務はいつまで認めればいいのでしょうか」
人事のご担当者から、こうしたご相談をいただく機会が増えています。産休・育休の取得はかなり一般的になりましたが、復帰したあとの働き方をどこまで整えるかは、会社ごとに対応が分かれているのが実情です。
共働き世帯が多数を占める今、子育て期のスタッフが無理なく働き続けられるかどうかは、採用力にも定着率にも直結します。それでも、制度が使える期間を正確に押さえている担当者はそれほど多くありません。しかも育児・介護休業法の分野はここ数年で改正が続いており、以前の知識のままだと実務と食い違ってしまう場面も出てきました。
今回は、育児のための短時間勤務が何歳まで使えるのかという基本と、労務担当者が押さえておきたい実務上のポイントを整理していきます。
育児のための短時間勤務は何歳まで?原則は子が3歳になるまで
結論からお伝えすると、育児のための短時間勤務、いわゆる時短勤務の対象となるのは、原則として子が3歳になるまでの期間です。
ここで大切なのは、これが会社の好意ではなく、法律上、企業が制度として用意しておくべきものだという点です。就業規則に定めがあるかどうかにかかわらず、対象となるスタッフから申し出があれば利用できる状態にしておく必要があります。
ただし、この「原則3歳まで」だけで話が終わるわけではありません。後ほど触れるとおり、会社が選択する制度の内容によっては、対象となる期間が実質的に長くなるケースがあります。まずは基本を押さえたうえで、自社の制度がどうなっているかを確認していただきたいところです。

育児中のスタッフの申し出を断ると、会社にどんなリスクが生じるか
実務でとくに注意していただきたいのが、申し出への対応です。
3歳未満のお子さんを養育するスタッフから「短時間勤務をさせてもらえませんか」と相談されたときに、「うちにはそんな制度はない」と突っぱねてしまう。これはルール違反にあたるため、避けなければなりません。
仮に頭ごなしに拒否した場合、すぐに損害賠償といった話に発展することは考えにくいものの、別のリスクが表面化します。スタッフが行政官庁に相談すれば、労働局などの調査につながり、会社の対応の誤りを指摘される事態になり得ます。
そして私が実務でより深刻だと感じているのは、人材流出のほうです。正当な権利が認められないと分かった時点で、時間をかけて育てたスタッフが退職してしまう可能性があります。しかも、そうした理由で辞める人が出ると、残ったスタッフにも「この会社では当然の権利すら使えないのか」という印象が広がります。一人の離職が、職場全体のモチベーション低下や連鎖退職につながることは決して珍しくありません。
働く側の視点も添えておきます。短時間勤務は正当に認められた権利です。社内に前例がないとためらう気持ちは分かりますが、育児休業からの復帰にあたって時短勤務を選ぶことは、世の中的にはごく一般的な選択です。まずは自分が使える制度を確認したうえで、会社に相談してみることをお勧めします。
柔軟な働き方を実現するための措置で、3歳以降の選択肢が広がる
ここからが、今回とくにお伝えしたいポイントです。
原則は3歳までとお伝えしましたが、小学校就学前のお子さんがいるスタッフに対して、短時間勤務を認める必要が出てくる場合があります。その背景にあるのが、2025年10月から施行された「柔軟な働き方を実現するための措置」です。
この仕組みでは、3歳から小学校入学前の子を養育するスタッフのために、会社が用意された選択肢の中から複数を選び、社内制度として運用することが求められます。選択肢として挙げられているのは、始業時刻等の変更、テレワーク等、保育施設の設置・運営等、就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇である養育両立支援休暇の付与、そして短時間勤務制度です。
注目していただきたいのは最後の選択肢です。自社の措置として短時間勤務制度を選んだ場合、育児のための短時間勤務は原則の3歳から小学校就学前まで延びることになります。「うちは3歳までのはず」と思い込んだまま運用していると、実際の制度と説明がずれてしまうおそれがあります。
なお、この対応は企業規模にかかわらず求められるものです。仕事と育児の両立支援の土台として、国が重視している仕組みだと受け止めています。

中小企業は柔軟な働き方の選択肢をどう選ぶべきか
では、限られた人員と資金で運営している会社は、どの選択肢を選べばよいのでしょうか。現場感覚からお話しします。
保育施設の設置・運営等は、コストと手間の面から、中小企業では現実的な選択肢になりにくいのが正直なところです。テレワーク等についても、製造業や店舗運営など、物理的に在宅勤務が成り立たない業種では選びにくいでしょう。
そうすると、残るのは始業時刻等の変更、養育両立支援休暇の付与、短時間勤務制度の三つです。
このうち短時間勤務制度は、日々の業務配分やシフトの組み替えが必要になるため、会社側の運用負荷が比較的高くなります。判断に迷った場合は、始業時刻等の変更と養育両立支援休暇の組み合わせを選ぶことで、運用の負担を抑えやすくなります。養育両立支援休暇は有給とすることまでは求められていないため、無給として設計し、まずは制度を回し始めるという進め方も可能です。
ただし、私は「負担の軽いほうを選べばよい」とは考えていません。育児に限らず、介護や治療との両立など、スタッフのライフステージは今後も多様になっていきます。目先の手間だけで決めるのではなく、自社の将来にとってどの措置が最適かを検討したうえで導入していただきたいと思います。

まとめ:自社の措置を見直し、後悔しない働き方を設計する
育児のための短時間勤務は、原則として子が3歳になるまでが対象です。そのうえで、柔軟な働き方を実現するための措置として短時間勤務制度を選んでいる会社では、対象期間が小学校就学前まで延びることになります。この違いを押さえておくことが、実務対応の出発点になります。
すでに施行されている制度にもかかわらず、「そうした措置があること自体を知らなかった」という企業様も少なくありません。自社としてどの措置を講じるかがまだ決まっていないのであれば、早めに社内の方向性を固めて対応を進めることをお勧めします。働く側も、自社が選んでいる措置を確認したうえで、遠慮せず会社に相談していただきたいと思います。
私たち社会保険労務士法人ONE HEARTでは、育児と仕事の両立に関する制度構築をはじめ、成長段階にある企業が「後悔しない働き方」を設計できるようサポートしています。今回取り上げたようなケースについても、各社の業種や人員体制に合わせた形で対応が可能です。
社会保険労務士法人ONE HEARTはITツールを組み合わせて、効率的な労務管理を作り、会社の発展に貢献します。急成長するスタートアップから、長年続く老舗企業まで、幅広いクライアント様をご支援させていただいています。初回のご相談は無料で承っております。企業もスタッフも安心して成長できる環境づくりを、一緒に進めていきましょう。
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執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)
社会保険労務士法人ONE HEARTの代表社労士。慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。こうした経営者の負担を軽減しながら、自らも模範となる会社づくりを実践したいという想いから、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立。


