学生が行うアルバイトでも、雇用保険の加入対象になるケースがあります。
原則として昼間学生は対象外ですが、夜間学生や休学中の学生など、特定の条件下では加入義務が発生します。
この記事では、学生が雇用保険の対象となる具体的な加入条件や、例外となるケース、加入するメリット・デメリットについて詳しく解説します。
自身の状況が加入対象に当てはまるかを確認しましょう。
学生は原則として雇用保険の対象外!その理由とは
原則として、大学や高校などに通う昼間学生は雇用保険の対象外となります。
これは、学生の本分が学業にあるとされており、アルバイトは一時的なものと見なされるためです。
雇用保険は労働者の失業時の生活を支える制度ですが、学生は失業の状態にあるとは考えにくいため、基本的には加入できません。
学生アルバイトが雇用保険に加入するための2つの条件
雇用保険に加入するためには、原則として昼間の学生ではないこと、および労働者としての基本的な要件を満たす必要があります。具体的には、「週の所定労働時間」と「雇用見込み期間」に関する2つの条件が定められており、両方を満たすことで加入対象者となります。ただし、夜間部や通信制の学生、休学中の学生、卒業見込みで継続勤務予定の学生などは例外的に加入対象となる場合があります。
1. 週の所定労働時間が20時間以上であること
雇用保険の加入要件の一つは、1週間の所定労働時間が20時間以上であることです。
所定労働時間とは、雇用契約書などで定められた、残業時間を含まない正規の労働時間を指します。
例えば、契約上は週10時間で、繁忙期に残業して週20時間を超えたとしても、この要件を満たしたことにはなりません。
契約上の労働時間が週20時間以上であることが必須です。
2. 31日以上の雇用見込みがあること
もう一つの要件は、31日以上継続して雇用される見込みがあることです。
これには、期間の定めがない雇用契約や、31日以上の雇用期間が定められている契約が含まれます。
また、雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇い止めが明示されていない場合や、過去に同様の契約で31日以上雇用された実績がある場合も、この要件を満たし、雇用保険の加入対象となります。
【学生向け】雇用保険の加入対象になる4つの例外ケース
「学生は原則対象外」というルールには、いくつかの例外が存在します。
夜間・定時制・通信制の学校に通う学生や、卒業後に同じ会社で働き続ける場合などが該当します。
これらのケースでは、学生であっても一般の労働者と同様に扱われ、加入要件を満たせば雇用保険の対象となります。
専門学校の学生も同様の条件で判断されます。
ケース1:夜間学部や定時制、通信教育の学生
夜間学部、定時制高校、通信教育課程に在籍する学生は、昼間学生とは異なり、雇用保険の適用対象となります。
これは、これらの学生が労働を主とし、学業との両立を図っていると判断されるためです。
したがって、週の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがあれば、一般の労働者と同様に雇用保険に加入する義務があります。
ケース2:卒業後も同じ会社で働き続ける場合
在学中にアルバイトをしていた会社に、卒業後も正社員や契約社員、派遣社員などとして継続して雇用されることが決まっている場合、卒業前から雇用保険に加入できます。
この場合、「卒業見込証明書」などを会社に提出することで、社会人として勤務を開始する前から被保険者資格を得ることが可能です。
入社手続きがスムーズに進むメリットがあります。
ケース3:休学中にアルバイトをする場合
大学などを休学している期間中は、学業が本分とはみなされないため、雇用保険の加入対象となります。
休学を証明する書類を会社に提出し、週20時間以上などの加入要件を満たしていれば、アルバイト先で雇用保険に加入することが可能です。
ただし、復学した場合は再び対象外となるため、会社への報告が必要です。
ケース4:会社が休業中に働く場合
事業所が一時的に休業する期間中に、臨時でアルバイトとして働く学生も雇用保険の対象となる場合があります。
これは厚生労働省の通達で定められている例外的なケースです。
例えば、季節限定で営業する施設などが閉鎖している期間に、事務作業などで雇用される場合がこれに該当する可能性があります。
具体的な適用については、勤務先やハローワークへの確認が必要です。
学生が雇用保険に加入する3つのメリット
学生が雇用保険に加入することには、将来に向けたセーフティネットを確保できるというメリットがあります。
万が一失業した際の基本手当(失業保険)だけでなく、キャリアアップを目指すための教育訓練給付金や、ライフイベントに対応するための育児・介護休業給付金など、さまざまな支援制度を利用できる可能性があります。
失業時に基本手当(失業保険)を受給できる
雇用保険に加入する最大のメリットは、失業時に基本手当(いわゆる失業保険)を受け取れることです。
受給には、離職日以前2年間に被保険者期間が12か月以上あることなどの条件を満たす必要があります。
卒業後に就職したものの、やむを得ず離職した場合などに、次の仕事を見つけるまでの生活の支えとなります。
スキルアップに役立つ教育訓練給付金制度が使える
教育訓練給付金制度とは、働く人のスキルアップやキャリア形成を支援するために、厚生労働大臣が指定する教育訓練講座を受講・修了した場合に、費用の一部が支給される制度です。
雇用保険の被保険者期間が一定以上あることが条件となります。
将来のキャリアを見据え、専門的な知識や技術を身につける際に活用できます。
育児休業給付金や介護休業給付金の対象になる
雇用保険の被保険者であれば、育児や家族の介護のために休業する際に、国から給付金を受け取ることができます。
育児休業給付金や介護休業給付金は、休業中の生活を支える重要な制度です。
学生のうちに加入しておくことで、将来これらの制度を利用するための被保険者期間を満たしやすくなる可能性があります。
学生が雇用保険に加入する際のデメリット
学生が雇用保険に加入する際のデメリットは、主に金銭的な負担が発生する点です。
雇用保険料は毎月の給与から天引きされるため、その分だけ手取り額が減少します。
アルバイトの収入が限られている学生にとっては、この保険料の負担がデメリットと感じられる場合があります。
毎月の給与から保険料が天引きされ手取りが減る
雇用保険に加入すると、毎月の給与から雇用保険料が天引きされます。
雇用保険は、健康保険や厚生年金保険と並ぶ社会保険の一つであり、加入要件を満たす労働者は保険料を支払う義務があります。
保険料率は賃金総額に一定の率を掛けて計算されるため、収入が多いほど負担額も増え、結果として手取り額が減ることになります。
注意!昼間学生は雇用保険に加入していても失業手当をもらえない?
雇用保険の加入条件を満たし、保険料を支払っていたとしても、昼間学生の身分である限り、原則として失業手当は受給できません。
失業手当の受給には、「失業の状態」であることが絶対条件ですが、学業を本分とする昼間学生は、この条件に当てはまらないと判断されるためです。
これは非常に重要な注意点です。
失業手当の受給条件「失業の状態」とは
失業手当を受給するための「失業の状態」とは、「就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人の努力やハローワークの支援によっても職業に就くことができない状態」を指します。
この定義には、学業や家事に専念している人は含まれません。
したがって、学生でないことが受給の前提となります。
学業が本分である学生は受給対象外になる理由
昼間学生が失業手当の受給対象外となるのは、「学業が本分」であり、「いつでも就職できる状態」とはみなされないためです。
たとえ雇用保険適用事業所で働いて保険料を支払っていたとしても、在学中は失業手当の受給資格を満たしません。
ただし、卒業後に就職活動をする際には、在学中の被保険者期間が通算される場合があります。
自分が雇用保険に加入しているか確認する3つの方法
自分が雇用保険に加入しているかどうかは、いくつかの方法で確認できます。
まずは給与明細をチェックするのが最も簡単です。
もし不明な点があれば、ハローワークで正式な手続きを踏んで照会したり、会社から交付される書類で確認したりする方法があります。
これらの方法で加入状況を正確に把握しておきましょう。
給与明細の「雇用保険料」の項目をチェックする
最も手軽な確認方法は、毎月の給与明細を見ることです。
給与明細の控除欄に「雇用保険料」という項目があり、金額が記載されていれば、雇用保険に加入しています。
もし加入義務を満たしているはずなのに天引きされていない場合は、会社の担当部署に確認してみましょう。
ハローワークで「雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票」を提出する
ハローワークの窓口で「雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票」という書類を提出することで、自身の加入履歴を正式に確認できます。
手続きには、本人確認書類(運転免許証など)と印鑑が必要です。
会社が手続きを忘れていて未加入になっていないかなどを正確に知りたい場合に有効な方法です。
会社から交付される「雇用保険被保険者証」で確認する
雇用保険に加入すると、事業主を通じて「雇用保険被保険者証」が交付されます。
通常は入社手続きの際に渡され、退職時まで会社が保管するケースも多いです。
この雇用保険被保険者証が手元にあるか、会社に保管されているかを確認することで、加入の有無を把握できます。
転職や失業手当の受給手続きの際に必要となる重要な書類です。
【企業担当者向け】学生アルバイトの雇用保険手続きと注意点
企業担当者は、学生アルバイトを雇用する際に雇用保険の加入義務を正しく判断する必要があります。
夜間学生や休学中の学生など、加入対象となるケースを見落とさず、適切な手続きを行うことがコンプライアンス上、非常に重要です。
加入要件を満たしているにもかかわらず手続きを怠ると、罰則の対象となる可能性があります。
雇用保険の加入手続きに必要な書類と流れ
学生アルバイトが加入要件を満たした場合、企業は「雇用保険被保険者資格取得届」を、雇用した月の翌月10日までに管轄のハローワークへ提出する必要があります。
夜間学生や休学中の学生など、学生であることを証明する書類(学生証のコピーや在学証明書、休学証明書など)の添付を求められる場合があるため、事前に確認しておくとスムーズです。
加入義務があるのに未加入だった場合の罰則
加入義務があるにもかかわらず、事業主が雇用保険の加入手続きを怠った場合、罰則が科される可能性があります。
過去に遡って保険料を納付する義務が生じるほか、労働保険徴収法に基づき、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることもあります。
学生だから加入できないと安易に判断せず、個々のケースを正確に確認することが重要です。
学生 雇用保険に関するよくある質問
ここでは、学生の雇用保険に関して、学生はもとより企業の担当者からも寄せられることが多い質問について解説します。
アルバイトの掛け持ちや親の扶養、保険料の計算など、具体的な疑問について簡潔にまとめました。
アルバイトを掛け持ちしている場合、雇用保険はどうなりますか?
雇用保険の加入は、原則として一つの勤務先で行います。これは、主に生計を維持している勤務先での加入となります。それぞれのアルバイト先で週20時間以上の労働条件を満たしている場合でも、最も賃金の高い事業所で加入手続きを行うのが一般的です。
ただし、2022年1月1日からは、65歳以上の労働者を対象とした「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が新設されました。この制度では、複数の事業所での勤務時間を合算して要件を満たすことで、雇用保険に加入することが可能です。
なお、上記制度の対象ではない場合、一つの勤務先で雇用保険の加入条件を満たさない場合は、雇用保険の対象外となります。
雇用保険に加入すると、親の扶養から外れてしまいますか?
雇用保険への加入と、税法上・社会保険上の扶養は別の制度です。
雇用保険に入ったこと自体が、直ちに扶養から外れる理由にはなりません。
ただし、アルバイトの年収が一定額(一般的に103万円や130万円など)を超えると扶養から外れるため、自身の収入額には注意が必要です。
雇用保険料は給料からいくら引かれますか?
雇用保険料は、毎月の給与総額に定められた雇用保険料率を掛けて計算します。
この料率は年度ごとに見直されます。
まとめ
原則として昼間学生は雇用保険の対象外ですが、働き方や学生の状況によっては加入対象となります。
特に夜間・通信制の学生や休学中の学生、卒業後も同じ会社で働く予定がある学生のアルバイトは、加入要件を確認する必要があります。
「週の所定労働時間が20時間以上」かつ「31日以上の雇用見込み」という2つの条件を満たす場合は、雇用保険の手続きが必要です。
オンラインで完結

個別無料相談を
ご利用ください
執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)
社会保険労務士法人ONE HEARTの代表社労士。慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。こうした経営者の負担を軽減しながら、自らも模範となる会社づくりを実践したいという想いから、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立。


