コラム

契約社員の5年雇止めは違法?無期転換ルールで企業がとるべき対応を解説

契約社員の5年雇止めは違法?無期転換ルールで企業がとるべき対応を解説

1年契約や6か月契約など、期間を決めて雇用している契約社員がいる企業にとって、注意が必要なのが「無期転換ルール」です。有期契約労働者は、更新を重ねて通算5年を超えると「無期労働契約に変えてほしい」と会社に申込みができるようになり、会社はこれを断ることができません。

そのため、5年が近づいた有期契約労働者の契約更新は、労務担当者にとって判断に迷いやすいポイントと言えます。

「5年を超える前に契約を終了させても問題ないのか?」
「後から『更新は5年まで』と上限を設けることはできるのか?」

本記事では、労務担当者が押さえておくべき無期転換ルールの基本から、5年直前の雇止めが違法となるケース、2026年10月施行の最新の法改正まで、分かりやすく解説します。

この記事でわかること
・無期転換ルールの仕組みと、無期転換申込権が発生する条件
・5年直前の雇止めが違法(無効)と判断されるケース
・雇止めを検討する際に企業がとるべき対応ステップ
・2024年4月・2026年10月の法改正で求められる労働条件の明示

無期転換ルールの基本と申込権が発生する条件

無期転換ルールへの対応を考えるうえでは、まず制度の仕組みと、どのタイミングで有期契約労働者に権利が発生するのかを正確に把握しておくことが欠かせません。

まず、無期転換ルールの概要と、企業側に拒否権がないという重要なポイントを確認します。次に、無期転換申込権が発生する条件と通算期間の数え方、カウントがリセットされる「クーリング期間」、そしてルールが適用されない特例について、具体例を交えながら整理します。

有期労働契約が通算5年を超えると無期労働契約に転換できる「無期転換ルール」

無期転換ルールとは、同一の企業との間で有期労働契約が更新され、通算の契約期間が5年を超えた場合に、有期契約労働者の申込みによって期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できる制度です。
2013年4月1日に施行された改正労働契約法に定められており、有期契約労働者の雇用の安定を図ることを目的としています。

労務担当者が特に押さえておくべきなのは、有期契約労働者が申込みをした時点で、会社はその申込みを承諾したものとみなされるという点です。つまり、会社が「無期転換は認めない」と拒否することはできず、申込みがあった時点の契約期間が満了した翌日から、無期労働契約が始まります。

無期転換するための3つの条件

無期労働契約に転換するには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。

①同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が2回以上締結されていること(1回以上更新されていること)

②有期労働契約の通算期間が5年を超えていること(2013年4月1日以降に開始した契約が対象)

③有期契約労働者が、通算5年を超える契約の期間中に無期転換の申込みをすること

実務上、誤解が多いのが「申込権が発生するタイミング」です。申込権は通算5年が経過した時点ではなく、「通算5年を超えることになる契約」が始まった時点で発生します。

(例1)契約期間1年の場合
1年契約を4回更新すると通算5年となり、5回目の更新で始まる6年目の契約期間中に申込権が発生します。

(例2)契約期間3年の場合
1回目の更新で始まる2回目の契約(4年目〜6年目)の時点で通算期間が5年を超えることになるため、通算4年目の時点ですでに申込権が発生します。

このように、契約期間によっては、通算5年が経過する前に申込権が発生する点に注意が必要です。

通算期間がリセットされる「クーリング期間」

無期転換ルールの通算期間は、契約と契約の間に一定以上の空白期間がある場合にリセットされます。これを「クーリング」と呼びます。

原則として、空白期間が6か月以上あればクーリングが成立し、それ以前の契約期間は通算の対象から外れます。ただし、空白期間の前の通算契約期間が1年未満の場合は、その期間の2分の1以上(1か月未満の端数は1か月に切り上げ)の空白期間があればクーリングが成立します。

(例)空白期間の前の通算契約期間が10か月の場合
10か月 × 1/2 = 5か月
→ 5か月以上の空白期間があれば、通算期間はリセットされます。

※無期転換を避ける目的で形式的に6か月の空白期間を設け、実質的に同じ業務で再雇用するような運用は、労働契約法の趣旨に照らして望ましくないとされています。また、無期転換を免れる目的で、就業実態を変えないまま派遣や請負の形態を偽装し、形式的に契約相手を別の会社に切り替えた場合は、通算契約期間はリセットされません。

無期転換ルールが適用されない特例

有期雇用特別措置法により、一定の有期契約労働者については無期転換ルールの特例が設けられています。

①年収1,075万円以上で、高度な専門的知識等を持ち、完了までに5年を超える期間が予定されているプロジェクトに従事する「高度専門職」

②定年後に引き続き同じ企業(またはグループ会社)で雇用される「継続雇用の高齢者」

これらの有期契約労働者については、事業主が雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けることで、無期転換申込権が発生しない(または発生までの期間が延長される)仕組みです。また、大学等の研究者・教員等については、通算期間を10年とする特例があります。

※特例は認定を受けて初めて適用されます。定年後再雇用者を多く抱える企業は、自社が認定を受けているかを必ず確認しておきましょう。

5年直前の雇止めは違法?判断のポイントを解説

有期労働契約は、契約期間の満了によって雇用関係が終了するのが原則です。そのため、無期転換を避ける目的で5年を超える前に契約を終了させること自体が、直ちに違法となるわけではありません。

しかし、契約の更新を長年繰り返してきた場合など、一定の状況下では雇止めが無効と判断されることがあります。

ここでは、その判断基準となる「雇止め法理」の考え方と、雇止めが無効・有効と判断されやすいケース、そして実務で最も紛争になりやすい「更新上限の後付け」について解説します。

雇止めが無効になる可能性がある「雇止め法理」

「雇止め法理」とは、労働契約法に定められたルールで、一定の条件を満たす場合に企業による雇止めを制限するものです。具体的には、次のいずれかに当たる場合に適用されます。

①過去に反復して更新されており、実質的に無期労働契約と同じ状態になっている場合

②有期契約労働者が契約の更新を期待することについて、合理的な理由がある場合

これらに該当する有期契約労働者が契約の更新を申し込んだ場合、会社がこれを拒否すること(雇止め)に客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められないときは、会社は従前と同じ条件で申込みを承諾したものとみなされます。つまり、雇止めは認められず、契約が更新されることになります。

雇止めが無効と判断されやすい5つのケース

裁判例では、有期契約労働者の「更新への合理的な期待」の有無が、次のような事情から総合的に判断されます。


なお、「無期転換を避けたい」ということだけを理由とする雇止めは、それ自体が客観的に合理的な理由とは評価されにくい点に注意が必要です。

契約更新の上限を後から設定した場合の注意点

実務上、最も紛争に発展しやすいのが、長年更新してきた有期契約労働者に対し、無期転換が近づいた段階で「通算5年まで」「次回の更新が最後」といった更新上限を新たに設けるケースです。

すでに更新への合理的な期待が生じている有期契約労働者の場合、上限条項を盛り込んだ契約書に署名を得ていても、それだけで期待が消滅するとは限りません。裁判所は、その署名が当該労働者の自由な意思に基づくものといえるかを慎重に判断します。特に「署名しなければ今回の更新もしない」という状況で得た同意は、自由な意思によるものとは認められにくい傾向にあります。

実際に、約30年にわたり更新を重ねてきた有期契約労働者について、後から設けた5年上限を理由とする雇止めが無効とされた裁判例(博報堂事件・福岡地裁令和2年3月17日判決)があります。一方で、契約当初から通算5年の更新上限が明示され、有期契約労働者が内容を理解したうえで契約していたことなどから、雇止めを有効とした裁判例(日本通運(川崎・雇止め)事件・東京高裁令和4年9月14日判決)もあります。

結論を分けるのは、「いつ・どのように上限を示し、どれだけ丁寧に説明したか」です。更新上限を設けるのであれば、初回の契約時から明示しておくことが最も確実な予防策と言えます。

雇止めが有効と認められやすいケース

一方で、雇止めが有効と判断されやすいケースもあります。

①経営状況が著しく悪化し、人員削減が避けられない場合(整理解雇に準じた検討が必要)

②重大な規律違反、著しい能力不足、長期の無断欠勤など、勤務状況に重大な問題がある場合

③特定のプロジェクトの完了までなど、契約当初から更新しないことが明確に合意されていた場合

※いずれの場合も、その事実を客観的な資料で示せることが前提となります。

5年直前の雇止めを検討する際の実務対応ステップ

無期転換が近い有期契約労働者の雇止めを検討する際は、手続きを一つでも誤ると、後の紛争で会社側に不利な事情となりかねません。

ここでは、労務担当者が実際に踏むべき対応を、契約実態の確認から予告、理由証明書の交付、記録と専門家への相談まで、4つのステップに分けて解説します。

ステップ1:対象者の契約実態を確認する

まずは、対象となる有期契約労働者の契約の実態を洗い出します。確認すべき主な項目は次のとおりです。

①更新回数と通算契約期間(申込権がすでに発生していないか、申込みを受けていないか)

②過去の契約書・労働条件通知書の内容(更新上限や判断基準の記載があるか)

③更新手続きの方法(毎回、期間満了前に契約書を交わしていたか)

④業務内容と、上司の言動

※すでに無期転換の申込みを受けている場合は、その時点で無期労働契約が成立しています(開始は現在の契約期間満了の翌日)。そのため、現在の契約期間の満了をもって雇用を終了させることは雇止めではなく解雇にあたり、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性がなければ、その解雇は無効となります。

①~④を確認したうえで、その有期契約労働者に更新への合理的な期待が生じていると考えられる場合は、雇止めが無効となるリスクが高いと判断できます。その場合は、雇止め以外の選択肢も含めて検討することが重要です。

ステップ2:30日前までに予告し、理由を丁寧に説明する

「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」により、3回以上更新している、または1年を超えて継続勤務している有期契約労働者を雇止めする場合は、少なくとも契約期間満了日の30日前までに予告しなければなりません(あらかじめ更新しない旨を明示している場合を除く)。

予告の際は面談の場を設け、雇止めの理由を具体的に説明します。

※無期転換申込権が発生する前に、更新の条件として申込権を放棄させることは、公序良俗に反し無効と解されています。同意書への署名を急がせるような対応も、かえって紛争リスクを高めるため避けてください。

ステップ3:雇止め理由証明書の交付に備える

「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」により、上記の予告の対象となる有期契約労働者から請求があった場合、会社は雇止めの理由を記載した証明書を遅滞なく交付しなければなりません。雇止めの予告をした後だけでなく、雇止めをした後に請求された場合も、同様に交付が必要です。

理由は「契約期間満了のため」だけでは足りず、「前回の更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため」「担当していた業務が終了・中止したため」など、具体的に記載する必要があります。証明書に記載した理由は、紛争になった際に会社の主張の根拠となるため、後から変更することのないよう、事前に社内で十分に検討しておきましょう。

ステップ4:記録を残し、専門家に相談する

面談の日時や内容、説明に使用した資料、有期契約労働者の反応などは、必ず記録に残しておきます。紛争に発展した場合、会社が説明を尽くしたことを示す重要な証拠となります。

また、雇止めの有効性は個別の事情によって判断が分かれるため、判断に迷う場合は、早い段階で社会保険労務士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

【2024年4月・2026年10月施行】有期契約労働者への労働条件明示ルール

無期転換や雇止めをめぐるトラブルを防ぐため、有期契約労働者に対する労働条件の明示ルールは、近年段階的に強化されています。

【2024年4月施行】更新上限と無期転換に関する明示義務

2024年4月1日から、労働基準法施行規則等の改正で有期契約労働者への労働条件の明示事項として、次の内容が追加されました。

①すべての有期労働契約の締結時・更新時:更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無とその内容

②無期転換申込権が発生する契約の更新時:無期転換の申込みができること(申込機会)

③無期転換申込権が発生する契約の更新時:無期転換後の労働条件

あわせて告示も改正され、最初の契約締結後に更新上限を新たに設けたり、短縮したりする場合は、あらかじめその理由を有期契約労働者に説明することが求められるようになりました。また、無期転換後の労働条件を決める際は、正社員などとの均衡を考慮した事項について説明するよう努めなければなりません。

※更新上限を設けること自体は禁止されていません。ただし、明示を怠れば労働基準法違反となるだけでなく、説明が不十分な場合も、雇止めの有効性を争われた際に会社側に不利な事情となります。

【2026年10月施行】パート・有期雇用労働法の改正による明示事項の追加

有期契約労働者との契約更新のたびに交付する労働条件通知書には、2026年10月1日施行のパートタイム・有期雇用労働法施行規則の改正により、記載すべき事項がさらに加わりました。

有期契約労働者を雇い入れる際(契約の更新も新たな雇入れにあたります)には、従来から求められている「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」に加えて、新たに「正社員との待遇の相違の内容や理由について説明を求めることができる旨」を明示する必要があります(法律上の用語は「通常の労働者」ですが、労働条件通知書では「正社員」など自社での呼称に置き換えて記載できます)。この明示を怠った場合は、10万円以下の過料の対象となります。なお、厚生労働省の通達では、円滑に説明を求められるよう、担当部署などの申出先もあわせて明示することが望ましいとされています。

また、同時に改正された雇用管理指針では、有期契約労働者から待遇の相違について説明を求められた際は、「資料を活用して口頭で説明する方法」または「説明すべき事項をすべて記載した分かりやすい資料を交付する方法」のいずれかで説明することが求められています。さらに、正社員への転換制度の内容や実績を有期契約労働者に明示するよう努めることも求められるようになりました。

よくある質問

ここでは、無期転換ルールや5年直前の雇止めについて、労務担当者から寄せられることの多い質問にお答えします。

5年経てば自動的に無期労働契約に切り替わるのですか?

自動的には切り替わりません。
通算契約期間が5年を超えた有期契約労働者が、契約期間中に会社に対して「無期転換の申込み」をすることで、初めて無期労働契約が成立します。

ただし、申込みがあった時点で会社は承諾したものとみなされ、拒否することはできません。
申込みは口頭でも有効なため、会社としては申込みを受けた日時や方法を記録し、書面で受理しておくことが大切です。

無期転換を避けるために、5年直前で雇止めすることはできますか?

雇止めそのものが直ちに違法となるわけではありません。
しかし、契約が何度も更新されてきた実態や、上司から更新を期待させる言動があった場合には、「雇止め法理」によって雇止めが無効と判断される可能性があります。

無期転換の回避だけを理由とする雇止めは合理的な理由とは認められにくいため、慎重な判断が必要です。更新上限を設けるのであれば、初回の契約時から明示しておくことが最も確実な予防策です。

無期転換後は、正社員と同じ待遇にしなければならないのですか?

必ずしもその必要はありません。
無期転換後の労働条件は、就業規則などで別段の定めをしない限り、直前の有期労働契約と同じ条件(期間の定めがなくなるだけ)となります。法律上、正社員と同じ待遇にする必要はありません。

ただし、正社員就業規則に「期間の定めのない従業員に適用する」と定めている場合は、無期転換社員にも正社員就業規則が適用され、退職金などが意図せず正社員と同じ扱いになるおそれがあります。無期転換社員向けの就業規則を整備し、定年や配置転換の範囲を含め、どの規則が適用されるのかを明確にしておきましょう。

まとめ

無期転換ルールでは、通算契約期間が5年を超えた有期契約労働者から申込みがあれば、会社は無期労働契約への転換を拒否できません。そのため、5年が近づいた有期契約労働者の契約更新は、労務担当者にとって慎重な判断が求められる場面です。

5年直前の雇止めは直ちに違法となるわけではありませんが、更新を重ねて「契約は更新されるだろう」という合理的な期待が生じた有期契約労働者を、無期転換の回避だけを目的に雇止めすれば、無効と判断されるリスクは高くなります。特に、更新上限の後付け設定は紛争に発展しやすいため注意が必要です。

こうしたトラブルを防ぐためには、最初の契約を締結する段階で、更新の有無と判断基準(業務量、勤務成績、会社の経営状況など)、更新上限を設ける場合はその内容を、労働条件通知書や雇用契約書に明記しておくことが重要です。初回から示しておけば、有期契約労働者は契約の終期をあらかじめ認識でき、後の紛争を防ぐことにつながります。

さらに、2024年4月・2026年10月の法改正により、有期契約労働者への労働条件の明示ルールは段階的に強化されています。改正に沿った書面の整備と、丁寧な説明・記録を徹底し、判断に迷うケースでは早い段階で専門家に相談しましょう。


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吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)
執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)

社会保険労務士法人ONE HEARTの代表社労士。慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。こうした経営者の負担を軽減しながら、自らも模範となる会社づくりを実践したいという想いから、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立。

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