コラム

問題社員との面談│進め方と注意点

問題社員との面談│進め方と注意点

このコラムは、Podcastラジオ “社労士吉田優一の「10分で労務がわかるラジオ」” 第202回の配信をもとに書かれた記事です。

Spotifyはこちら

Apple podcastはこちら

Podcastでは、給与・報酬の設計を中心に、会社を経営していくうえでぶつかる人事の課題についてお話ししています。ぜひフォローをお願いします!

目次

問題社員への対応は、多くの管理職や経営者が直面する課題です。

対応を誤ると、パワハラや不当解雇といった法的リスクに発展しかねません。

重要なのは、感情的に対処するのではなく、適切な手順を踏んで面談に臨むことです。

面談の目的はあくまで対象社員の改善を促すことにあり、その過程を記録し、言った言わないのトラブルを避けるために録音などの対策も有効です。

この記事では、法的リスクを回避しつつ、問題社員の改善を促すための面談の進め方と注意点を具体的に解説します。

トラブル回避の第一歩!問題社員との面談前に押さえるべき基本

問題社員との面談を成功させる鍵は、事前準備にあります。

場当たり的な面談は感情的な対立を生み、パワハラなどのリスクを高めるだけです。

面談の目的を明確にし、指摘すべき内容を客観的な事実に基づいて整理することが不可欠です。

また、万が一のトラブルに備え、面談記録を正確に残す体制を整えるなど、周到な準備が円滑な対話とリスク回避につながります。

面談の目的は「改善の促進」であり「懲罰」ではないことを理解する 

面談の目的は、社員を罰することや退職に追い込むことではありません。

あくまで、問題となっている行動を具体的に指摘し、本人の気づきと自発的な改善を促すための対話です。

この基本姿勢を忘れると、言動が詰問調になり、相手を追い詰めてしまいます。

冷静な対話を促すため、双方の合意のもとで会話を録音することも、客観性を保つ一つの手段です。

会社として改善を期待しているという前向きなメッセージを伝えることが重要です。

客観的な事実や証拠を整理し、指摘内容を具体的に準備する

面談で指摘する内容は、個人的な感情や主観的な評価であってはなりません。

「仕事へのやる気が感じられない」といった曖昧な指摘ではなく、「〇月〇日の会議で、〇〇の理由により報告が5回遅れた」のように、日時や具体的な行動、それによって生じた業務上の支障などを客観的な事実として整理します。

これらの事実は、後々のトラブルを避けるための重要な面談記録となり、指導の正当性を担保する証拠にもなります。

【準備編】法的リスクを回避!面談を安全に進めるための環境設定 

面談は、話す内容だけでなく「どこで、誰と、どのように話すか」という環境設定も極めて重要です。

不適切な環境は、社員に不要なプレッシャーを与え、パワハラと受け取られるリスクを高めます。

また、万が一、逆上して暴力沙汰になることを避けることや、言った言わないの争いを避けるためにも、安全性を確保した環境を意図的に作り出す必要があります。

ここでは、面談を安全に進めるための具体的な環境設定について解説します。

暴力沙汰を避けるための会議室選びと席順の工夫 

面談対象者が逆上し、暴力沙汰に発展する可能性もゼロではありません。

そのため、ある程度広さがあり、大きな机を挟んで対話できる会議室を選びましょう。

物理的な距離が保たれることで、衝動的な行動を抑制する効果が期待できます。

また、席順は、面談者がすぐに出入り口から退室できる位置に座り、対象者を奥の席に案内するのが安全です。これにより、万が一の際に退避しやすくなり自身の安全を確保できます。

1対1は危険!上司や人事担当者など複数名で面談に臨む

面談は1対1で行うべきではありません。

感情的な対立に発展しやすく、後から「言った言わない」の水掛け論になるリスクが高いからです。

上司と人事担当者など、必ず複数名で対応しましょう。

複数で臨むことで、客観的な視点を保ちやすくなり、冷静な対話が促進されます。

また、同席者は面談の証人となり、議事録を作成する役割を担うことで、指導の事実を正確に記録できます。

面談時間をあらかじめ設定し長時間の拘束を避ける

長時間の面談は、それ自体が精神的なプレッシャーとなり、パワハラや退職強要と見なされるリスクがあります。

面談時間は30分から長くとも1時間程度を目安とし、あらかじめ相手にも伝えておきましょう。

話が長引く場合は、「今日はここまでにして、続きは後日改めて時間を設けましょう」と打ち切ることが重要です。

時間を区切ることで、論点を整理し、効率的で中身の濃い対話が可能になります。

【実践編】パワハラにならない面談の進め方4ステップ

準備が整ったら、次はいよいよ面談本番です。

面談の進め方を誤ると、こちらの意図が正しく伝わらないばかりか、パワハラと受け取られかねません。

重要なのは、感情的にならず、決めつけをせず、あくまで客観的な事実に基づいて対話を進めることです。

ここでは、パワハラと見なされるリスクを避け、社員の改善を促すための具体的な面談の進め方を4つのステップに分けて解説します。

ステップ1:まずは問題行動に関する客観的な事実確認から始める

面談の冒頭では、いきなり改善を要求したり、叱責したりしてはいけません。

まずは、事前に準備した客観的な事実を提示し、「〇月〇日に、このようなことがありましたが、この事実に間違いはありませんか?」と、本人に事実関係の確認を求めます。

この段階では、評価や解釈を挟まず、あくまで事実の確認に徹することが重要です。

これにより、冷静な対話の土台を築きます。

ステップ2:感情的にならず、具体的な改善点を冷静に伝える

事実確認が取れたら、その行動が就業規則や業務命令にどう違反しているのか、また、周囲や業務にどのような具体的な影響を与えているのかを冷静に伝えます。

このとき、「なぜそんなことをしたんだ」と詰問するのではなく、「この行動は、チームの計画に遅れを生じさせる可能性がある」というように、あくまで「行動」とその「影響」に焦点を当てて話すことが、相手の反発を招かないためのポイントです。

ステップ3:本人に改善の意思を確認し、具体的な目標と計画を立てさせる 

会社としての懸念を伝えた後は、本人に改善の意思があるかを確認します。

その上で、「今後、同じことを繰り返さないために、どうすればよいと思いますか?」と問いかけ、本人に具体的な改善策を考えさせます。

会社側から一方的に改善策を押し付けるのではなく、本人の口から目標や計画を述べさせることで、主体的な行動変容を促し、後の評価基準も明確になります。

ステップ4:次回の面談日程を決め、継続的なフォローアップを約束する

面談の最後には、必ず次回の面談日程を設定します。

これにより、今回の面談が一度きりの「言いっぱなし」ではないこと、そして会社が本気で改善を期待し、継続的に関与していく姿勢であることを示せます。

設定した改善計画が実行されているかを進捗確認し、必要に応じてサポートを行うことで、着実な行動改善につなげるとともに、指導の記録を積み重ねていくことができます。

【状況別】問題社員のタイプに合わせた面談の切り返し方 

問題社員と一括りにいっても、その特性や問題行動の背景は様々です。

そのため、画一的な対応ではうまくいかず、相手のタイプや反応に合わせた柔軟なコミュニケーションが求められます。

能力不足の社員、勤務態度が悪い社員、あるいは反発してくる社員など、それぞれの状況に応じた適切な切り返し方を心得ておくことで、面談をより円滑に進め、本来の目的である改善へと導くことが可能になります。

能力不足・スキル不足を指摘された社員への指導方法

能力不足を指摘する際は、本人のプライドを傷つけないよう配慮が必要です。

「君には能力がない」と断じるのではなく、「この業務を遂行するには、〇〇のスキルがもう少し必要だ」と、具体的な業務とスキルを紐づけて客観的に伝えます。

その上で、研修の受講を提案したり、目標設定を見直したりするなど、会社として育成・支援する姿勢を示すことで、本人の前向きな改善意欲を引き出します。

遅刻や態度の悪さなど、勤務態度が不良な社員への伝え方

遅刻や無断欠勤、協調性を欠く態度など、勤務態度に関する問題を指摘する場合は、就業規則の該当条文を示しながら、ルール違反であることを明確に伝えます。

その上で、「あなたの行動が、他のメンバーの士気やチーム全体の生産性に影響を与えている」と、周囲への客観的な影響を具体的に説明し、組織の一員としての責任を自覚させることが重要です。

「なぜ自分だけ」と反論・逆ギレする社員への冷静な対話術

指導に対して「他の人もやっている」「なぜ自分だけが言われるのか」と反論してくるケースがあります。

この場合、感情的に言い返すのは逆効果です。

まずは相手の言い分を一度受け止めた上で、「他の人がどうであるかは問題ではなく、今はあなたの行動について就業規則に照らして話をしています」と、冷静に論点を戻します。

あくまで客観的な事実とルールに基づいて対話を続ける毅然とした態度が求められます。

メンタルヘルスの不調を訴えられた際の適切な初期対応

面談中に本人がメンタルヘルスの不調を訴えてきた場合、深追いは禁物です。

まずは業務上の指導を一旦中止し、本人の話に耳を傾ける姿勢を見せましょう。

その上で、産業医との面談を勧めたり、専門の相談窓口を案内したりするなど、会社として必要な配慮を行うことを伝えます。

安全配慮義務の観点からも、健康問題と業務指導は切り分けて慎重に対応する必要があります。

面談を重ねても改善しない社員への段階的な対応策

誠実な面談と指導を繰り返しても、残念ながら問題行動が改善されないケースも存在します。

そのような場合、会社としては組織の秩序維持や他の従業員への影響を考慮し、次の段階の対応を検討せざるを得ません。

ただし、いきなり解雇などの厳しい処分に踏み切るのは法的リスクが高すぎます。

指導のレベルを段階的に引き上げ、その都度記録を残していくという、慎重なプロセスが求められます。

指導書・警告書を交付し、指導の記録を文書で残す

口頭での注意・指導を重ねても改善が見られない場合、次のステップとして「指導書」や「警告書」といった書面を交付します。

書面には、具体的な問題行動、改善すべき点、改善期限などを明記します。

これにより、会社の本気度を伝えるとともに、「指導を行った」という客観的な証拠を明確に残すことができます。

この記録の積み重ねが、後の懲戒処分や解雇の正当性を基礎づける上で極めて重要になります。

就業規則に基づき、譴責・減給などの懲戒処分を検討する

書面による指導後も改善が見られない場合は、就業規則に定められた懲戒処分の手続きに入ります。

懲戒処分には、始末書の提出を求める「譴責」や、給与を減額する「減給」など、いくつかの段階があります。

処分の選択にあたっては、問題行動の悪質性や頻度などを考慮し、社会通念上、相当と認められる範囲の処分でなければなりません。

最終手段としての退職勧奨の進め方と注意点

懲戒処分を経てもなお改善が期待できず、雇用契約の継続が困難と判断される場合には、最終手段の一つとして「退職勧奨」を検討します。

これは、会社から社員に対して合意退職を促す行為です。

ただし、あくまで「お願い」であり、応じるか否かは社員の自由意思に委ねられます。

執拗な勧奨や、拒否した後の不利益な取り扱いは「退職強要」と見なされるため、慎重な進め方が求められます。

普通解雇が法的に有効となるための証拠の積み重ね方

退職勧奨にも応じず、問題行動が続く場合、最終的に普通解雇を検討することになります。

しかし、日本の法律では解雇権の濫用が厳しく制限されており、解雇が有効と認められるハードルは非常に高いのが実情です。

解雇の有効性を基礎づけるためには、これまでの度重なる面談の記録、指導書や警告書、懲戒処分の通知書など、会社が改善のために手を尽くしたことを示す客観的な証拠の積み重ねが不可欠です。

まとめ

問題社員との面談は、法的リスクを十分に理解し、適切な準備と手順を踏んで臨むことが不可欠です。

面談の目的は懲罰ではなく、あくまで社員の行動改善を促すことにあります。

感情的にならず、客観的な事実に基づいた対話を心がけ、その過程を記録として残していくことが、会社と他の従業員を守ることにつながります。

もし対応に迷う場合は、弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談することも有効な手段です。

また、社会保険労務士法人ONE HEARTはITツールを組み合わせて、効率的な労務管理を作り、会社の発展に貢献します。急成長するスタートアップから、長年続く老舗企業まで、幅広いクライアント様をご支援させていただいています。

ONE HEARTに労務のご相談をしたい方、ONE HEARTでのお仕事に興味がある方、吉田とお話ししてみたい方など、ホームページの問い合わせフォームやX(旧twitter)のDMからお気軽にご連絡いただけると幸いです!

Spotifyはこちら

Apple podcastはこちら

X(旧twitter)はこちら

ONEHEARTのホームページはこちら


オンラインで完結

60分間

個別無料相談
ご利用ください

吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)

執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)

社会保険労務士法人ONE HEARTの代表社労士。慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。こうした経営者の負担を軽減しながら、自らも模範となる会社づくりを実践したいという想いから、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立。

代表 吉田がお話を聞きます!

30分間無料相談を申し込む

社会保険労務士法人ONE HEART