このコラムは、Podcastラジオ “社労士吉田優一の「10分で労務がわかるラジオ」” 第209回の配信をもとに書かれた記事です。
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休職からの復職を控えている際、元の職場に戻るべきか、それとも配置転換を希望して環境を変えるべきかは、多くの人が直面する重要な問題です。
復職後の安定した就労のためには、自身の心身の状態や休職に至った原因を正しく理解し、適切な選択をすることが求められます。
この記事では、同じ職場への復帰と配置転換、それぞれのメリット・デメリットを比較し、労働者と企業双方の視点から判断基準や具体的な交渉方法、法的な注意点について解説します。
休職からの復帰は元の職場が原則?まずは基本を理解しよう
休職した労働者の職場復帰においては、基本的に「元の職場(部署・業務)に戻ること」が原則とされています。
これは、厚生労働省が示すガイドラインにもとづく考え方であり、多くの企業で復職支援の基本的な方針として採用されています。
しかし、この原則は絶対的なものではなく、労働者の状況や休職に至った原因によっては、柔軟な対応として配置転換が検討されることも少なくありません。
まずはこの基本原則とその背景を理解することが、適切な判断の第一歩となります。

厚生労働省が推奨する「原職復帰の原則」とは
厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、職場復帰は原則として休業前の職場に戻る「原職復帰」が望ましいとされています。
これは、慣れた業務や人間関係のなかで復職するほうが、新しい環境に適応するストレスが少なく、労働者の負担を軽減できると考えられているためです。
企業側にとっても、労働者が持つスキルや経験を活かしやすく、円滑な業務再開が期待できます。
この原則は、あくまで復職をスムーズに進めるための基本的な考え方として示されています。
会社が配置転換を検討するケースとは
「原職復帰の原則」がある一方で、企業が配置転換を積極的に検討する特定のケースが存在します。
最も代表的なのは、休職の原因が元の職場における人間関係のトラブルやハラスメント、過重労働など、環境要因に起因することが明らかな場合です。
このような状況で原職復帰させると、症状が再発するリスクが極めて高いと判断されます。
また、主治医から「環境調整が必要」との具体的な意見が診断書に記載されている場合も、企業は安全配慮義務の観点から配置転換を考慮する必要があります。
同じ職場復帰か配置転換かを選択するための判断基準
休職からの復職にあたり、同じ職場に戻るか配置転換を希望するかは、個々の状況によって最適な選択が異なります。
この判断を下すためには、いくつかの基準を基に総合的に検討することが重要です。
具体的には、「休職に至った原因が何か」「現在の自身の心身の状態はどうか」「復職後にどのような働き方を望むか」といった点を客観的に分析し、それぞれの選択肢がもたらすメリットとデメリットを冷静に比較検討する必要があります。

同じ職場に復帰するメリット
同じ職場に復帰する最大のメリットは、慣れた環境で仕事を再開できる点です。
業務内容や手順、職場の人間関係を既に把握しているため、新しいことを一から覚える必要がなく、復職後の業務への再適応がスムーズに進みやすい傾向にあります。
これにより、新しい環境への適応に伴う精神的な負担、いわゆる「リロケーション・ダメージ」を避けることが可能です。
また、キャリアプランや給与体系が大きく変わる可能性が低く、復職後の生活設計を立てやすいことも利点として挙げられます。
同じ職場に復帰するデメリット
同じ職場への復職には、デメリットも存在します。
休職の原因が職場の人間関係や業務負荷にあった場合、根本的な問題が解決されていなければ、同じ環境に戻ることで症状が再発するリスクが高まります。
周囲の同僚や上司からの視線を過度に意識してしまい、精神的な負担を感じることもあるかもしれません。
また、休職前と同じようなパフォーマンスを期待されるプレッシャーから、自身のペースを取り戻す前に無理をしてしまい、再び心身のバランスを崩してしまう可能性も考えられます。
配置転換(部署異動)を選ぶメリット
配置転換を選択する最大のメリットは、休職の原因となったストレス要因から物理的に離れられることです。
人間関係や特定の業務内容が不調の原因であった場合、環境を根本的に変えることで再発リスクを大幅に低減できます。
これにより、過去のトラブルを引きずることなく、心機一転して新しいキャリアをスタートさせることが可能です。
また、これまでとは異なる業務に携わることで、新たなスキルや知識を習得する機会となり、自身のキャリアの幅を広げるきっかけになる可能性も秘めています。
配置転換(部署異動)を選ぶデメリット
配置転換には、新しい環境への適応という大きな課題が伴います。
新しい業務内容を一から習得し、新たな人間関係を構築していく過程は、心身ともに大きなエネルギーを要する可能性があります。
復職直後の不安定な時期には特に大きな負担となり得ます。
また、異動先の部署や職務内容によっては、給与や役職といった労働条件が以前と変わる可能性も考慮しておく必要があります。
【企業担当者向け】復職者の配置転換を検討する際の法的注意点
休職者から配置転換の希望があった場合、企業担当者は本人の意向を尊重しつつも、法的な観点から慎重な判断を下す必要があります。
特に「安全配慮義務」と、企業が持つ「人事権」のバランスは重要な論点です。
本人の同意なく不利益な条件変更を行ったり、再発リスクが高いにもかかわらず原職復帰を強行したりすると、法的なトラブルに発展する可能性があります。
ここでは、復職者の配置転換を検討する際に押さえておくべき法的な注意点を解説します。

「安全配慮義務」と「人事権」のバランスの取り方
企業は労働契約法第5条に基づき、労働者の生命や身体等の安全を確保しつつ労働できるよう配慮する「安全配慮義務」を負っています。
一方で、企業には業務上の必要に応じて従業員の配置を変更する「人事権」があります。
休職からの復職においては、この両者のバランスが問われます。
特に、休職の原因が職場環境にある場合や、主治医が環境調整の必要性を指摘している場合、企業の人事権は一定の制約を受けます。
安全配慮義務を優先し、再発リスクを回避するための配置転換を検討することが、法的なリスク管理の観点からも重要です。
本人の同意なしで配置転換や労働条件の変更は可能か
就業規則に配置転換を命じることができる旨の規定があり、その命令に業務上の必要性が認められる場合、原則として本人の同意がなくても配置転換を命じることは可能です。
しかし、復職者に対する配置転換は、その目的や経緯が慎重に判断されます。
例えば、復職の条件として本人の意に反する不利益な配置転換を行うことは、権利の濫用とみなされるリスクがあります。
労働条件の変更、特に賃金の減額などを伴う場合は、本人の個別的な同意を得ることが原則となり、より慎重な対応が求められます。
配置転換に伴う給与や待遇の変更で気をつけるべきこと
配置転換によって職務内容が大きく変わる場合、それに伴って給与や役職などの待遇が変更されること自体はあり得ます。
ただし、その変更は就業規則や賃金規程に基づいた、客観的で合理的な理由が必要です。
休職したという事実のみを理由として、一方的に給与を引き下げるなどの不利益な取り扱いを行うことは認められません。
待遇を変更する場合は、変更後の職務内容や責任の程度に応じたものであることを本人に丁寧に説明し、理解を得るプロセスが不可欠です。
まとめ
休職からの復職において、同じ職場に戻るか配置転換を選ぶかは、その後の職業生活を大きく左右する重要な決断です。
厚生労働省は「原職復帰」を原則としていますが、休職の原因や本人の状態によっては、配置転換が再発防止と安定した就労継続のための最善策となる場合も少なくありません。
労働者側は自身の状況を客観的に把握し、医師などの専門家の意見も交えて冷静に希望を伝えることが大切です。
企業側は安全配慮義務の観点から、本人と対話し、最適な復職の形を模索する姿勢が求められます。
また、社会保険労務士法人ONE HEARTはITツールを組み合わせて、効率的な労務管理を作り、会社の発展に貢献します。急成長するスタートアップから、長年続く老舗企業まで、幅広いクライアント様をご支援させていただいています。
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執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)
社会保険労務士法人ONE HEARTの代表社労士。慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。こうした経営者の負担を軽減しながら、自らも模範となる会社づくりを実践したいという想いから、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立。


