このコラムは、Podcastラジオ “社労士吉田優一の「10分で労務がわかるラジオ」” 第224回の配信をもとに書かれた記事です。
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ご家族の介護が突然始まり、仕事との両立に不安を感じていませんか。
この記事を読めば、介護休業や介護休暇を利用できるか判断し、いつまでに何を申請すれば、いくら給付金がもらえるかという「両立のロードマップ」を理解できます。
「介護休業」と「介護休暇」の違いは?目的・期間・給付金を比較
介護休業と介護休暇は、どちらも家族の介護のために仕事を休める育児・介護休業法に基づく制度ですが、その目的や取得できる期間、給付金の有無に大きな違いがあります。
介護休暇は時間単位で取得できる短期の休みであるのに対し、介護休業は介護と仕事の両立体制を整えるための長期の休みです。
それぞれの制度の目的を理解し、状況に応じて適切に使い分けることが求められます。以下の表で主な違いを確認しましょう。

短期・単発の付き添いや手続きに利用する「介護休暇」
介護休暇は、要介護状態にある家族の突発的なニーズに対応するための制度です。
具体的な使い方としては、病院への通院の付き添い、役所での介護保険関連の手続き、ケアマネジャーとの面談などが挙げられます。
対象家族が1人であれば年に5日、2人以上であれば年に10日まで取得可能です(「年」は、会社が特に定めていなければ4月1日から翌年3月31日までの1年間です)。
法律上、会社に賃金の支払い義務はなく、無給とする会社が多いのが実情ですが、年次有給休暇とは別に取得できるため、有給休暇を使い切ってしまった場合でも利用できるのが特徴です。
時間単位での取得も可能なため、半日だけ付き添いが必要といった場合にも柔軟に活用できます。
なお、2025年4月の法改正により、入社6か月未満であることを理由に介護休暇の対象外とすることはできなくなりました。
介護と仕事の両立体制を築くために利用する「介護休業」
介護休業は、本格的な介護が必要になった際に、仕事と介護を両立できる体制を長期的な視点で構築することを目的とした制度です。
この期間を利用して、介護サービスの選定や契約、自宅のリフォーム、家族内での役割分担の話し合いなど、腰を据えて準備を進めます。
介護休業は、仕事と介護を両立できる体制を整えるための期間として設計された制度で、厚生労働省も「介護に専念するためではなく、両立のための準備期間」と位置づけています。通算93日という日数は、長期の介護をすべて担うには足りないためです。
通算93日の期間を有効に活用し、介護のプロの力も借りながら、持続可能な介護体制を整えることが制度の趣旨です。
介護休業は誰がいつまで取得できる?対象者と期間の基本ルール
介護休業の取得には、対象となる労働者や家族の範囲、取得できる期間に明確なルールが定められています。
これらの要件を正しく理解しておくことで、スムーズな申請と取得が可能です。
原則として、日雇い労働者を除くすべての労働者が対象ですが、勤続1年未満の方や週の所定労働日数が2日以下の方などは、労使協定で対象外とされている場合があるため、自社の就業規則を確認することが重要です。
休業期間は対象家族1人につき通算93日で、3回まで分割して取得できます。

介護休業を取得できる労働者の雇用形態と条件
介護休業の対象者は、正社員、パート、アルバイト、契約社員など、原則としてすべての労働者です。
ただし、日々雇用される労働者は対象外となります。
また、有期契約労働者の場合は、休業の申出時点で「休業開始予定日から93日を経過する日から6か月を経過する日までに、労働契約(更新される場合は更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと」という条件を満たす必要があります。
なお、以前は「同一の事業主に1年以上雇用されていること」も要件でしたが、2022年4月の法改正で撤廃されています。
ただし、労使協定により、入社1年未満の労働者などが対象外とされている場合もあるため、事前に勤務先の就業規則を確認してください。
対象となる家族の範囲と「常時介護を必要とする状態」の定義
介護休業の対象となる家族の範囲は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫までと定められています。
この家族が「常時介護を必要とする状態」にあることが休業取得の条件です。
この状態は、要介護認定を受けているかどうかだけで決まるものではありません。
厚生労働省の判断基準では、病気やケガ、心身の障害により2週間以上にわたり常時介護が必要な状態として、①介護保険の要介護2以上であること、または②座位保持・歩行・移乗・食事・排泄・衣類の着脱・意思の伝達・服薬管理・日常の意思決定など12の項目のうち、「一部介助が必要」が2つ以上、または「全面的介助が必要」が1つ以上あり、その状態が継続すると認められること、のいずれかに該当する場合とされています。
2025年4月からは、障害のあるお子さんや医療的ケアが必要なご家族を介護する場合も含まれることが明確になりました。
取得可能な合計日数(通算93日)と分割取得の回数(3回まで)
介護休業を取得できる日数は、対象家族1人につき、通算で93日までです。
この93日は、3回まで分割して取得することが可能です。
例えば、最初に30日間取得して介護体制を整え、その後状況が変化した際に再度30日間、さらに最後の調整で33日間といった柔軟な使い方ができます。
以前は原則1回しか取得できませんでしたが、2017年1月の法改正により3回まで分割して取得できるようになり、より実態に合わせた利用が可能になりました。
ただし、93日を使い切ると、法律上は同じ家族の介護で再度介護休業を取得することはできません(会社が独自に法を上回る制度を設けている場合を除きます)。
介護休業を利用する上で最も気になるのが、休業中の収入でしょう。次に、経済的な支えとなる介護休業給付金について解説します。
休業中の収入を支える「介護休業給付金」の要件と支給額
介護休業中、会社に賃金を支払う義務はありませんが、雇用保険の被保険者であれば、要件を満たすことで介護休業給付金を受け取れます。
主な要件は、介護休業開始前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上(または就業時間が80時間以上)ある月が12か月以上あることです。
支給額は、原則として「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%」です。対象家族1人につき通算93日・3回まで支給され、給付金は非課税です。
なお、休業中に会社から賃金が支払われる場合、その額が休業開始時賃金の80%以上であれば支給されず、13%を超えると減額されます。
また、育児休業と異なり、介護休業中は社会保険料(健康保険・厚生年金保険)の免除制度はありません。この点も含めて、休業中の家計を事前に見積もっておくことが大切です。
介護休業の基礎知識に関するよくある質問
介護休業制度は複雑な部分もあり、いざ利用しようとすると様々な疑問が浮かびます。
ここでは、介護の基礎として特に質問の多い点について、簡潔に解説します。
制度の使い分けや緊急時の対応、給付金がいつ受け取れるのかなど、実践的な知識を身につけておきましょう。

介護休業と介護休暇はどのように使い分けるのが効果的ですか?
介護休業制度は複雑な部分もあり、いざ利用しようとすると様々な疑問が浮かびます。
ここでは、介護休業の基礎知識として特に質問の多い点について、簡潔に解説します。
制度の使い分けや緊急時の対応、給付金がいつ受け取れるのかなど、実践的な知識を身につけておきましょう。
介護休業と介護休暇はどのように使い分けるのが効果的ですか?
介護休暇は、通院の付き添いや役所の手続きなど、時間単位や1日で済む単発の用事のために使うのが効果的です。
一方、介護休業は、ケアプランの作成・調整や介護サービスの契約、家族会議など、腰を据えて両立体制を整えるための長期的な準備期間として活用します。
突発的な対応は「休暇」、体制構築は「休業」と、目的によって使い分けることが重要です。
家族が急に倒れた場合でも、介護休業はすぐに取得できますか?
介護休業の申出は、法律上、休業開始予定日の2週間前までに書面等で行うこととされています。
2週間前より遅れて申し出た場合でも、会社は申出を拒むことはできず、申出日の翌日から2週間を経過する日までの範囲で休業開始日を指定できるにとどまります。つまり、遅くとも申出から2週間後には休業を開始できます。
それまでの間は、当日の申出でも取得できる介護休暇や、年次有給休暇を活用する方法があります。
なお、会社は要介護状態を証明する書類(診断書など)の提出を求めることができますが、書類がそろわないことを理由に休業を認めないことはできません。
就業規則に緊急時の取り扱いが定められている場合もありますので、まずは会社の担当部署に速やかに相談してください。
介護休業給付金は、休業中に毎月受け取れますか?
介護休業給付金は、休業中に毎月支給されるわけではありません。
原則として、介護休業が終了した後、会社を通じてハローワークに申請し、休業期間分をまとめて受け取る仕組みです。休業を分割した場合は、それぞれの休業が終わるごとに申請します。
申請期限は、休業終了日の翌日から2か月を経過する日の属する月の末日までです。休業終了から振り込みまでには1〜2か月程度かかると見込んでおくと安心です。
そのため、休業中の生活費は事前に準備しておく必要があります。
なお、会社側にも2025年4月から新たな義務が課されています。従業員から家族の介護に直面した旨の申出があった場合の制度の個別周知と意向確認、40歳前後での介護両立支援制度の情報提供、研修や相談窓口の設置などの雇用環境整備が義務となり、介護期のテレワーク導入は努力義務とされました。
まとめ
介護休業は、家族の介護が必要になった際に、仕事と両立できる体制を整えるための重要な制度です。
短期的な介護に対応する介護休暇との違いを理解し、自身の状況に合わせて適切に活用することが求められます。
雇用保険の要件を満たせば、休業中の収入の一部を介護休業給付金で補うことができます。
制度を利用するには、対象者や期間、申請手続きなどのルールを正しく把握し、計画的に準備を進めることが不可欠です。介護離職を防ぐため、これらの公的制度を有効に活用しましょう。
社会保険労務士法人ONE HEARTはITツールを組み合わせて、効率的な労務管理を作り、会社の発展に貢献します。急成長するスタートアップから、長年続く老舗企業まで、幅広いクライアント様をご支援させていただいています。
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社会保険労務士法人ONE HEARTの代表社労士。慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。こうした経営者の負担を軽減しながら、自らも模範となる会社づくりを実践したいという想いから、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立。


