コラム

いわゆる「シフト制」とは?曖昧な契約が招くリスクと正しい労務管理【基礎編】

いわゆる「シフト制」とは?曖昧な契約が招くリスクと正しい労務管理【基礎編】

このコラムは、Podcastラジオ “社労士吉田優一の「10分で労務がわかるラジオ」” 第222回の配信をもとに書かれた記事です。

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目次

「うちはシフト制なので、契約書の労働時間の欄は『シフトによる』とだけ書いています」

飲食店や小売店の経営者の方とお話ししていると、こうした答えが返ってくることがあります。手を抜いているわけではなく、現場の実態に合わせていった結果、そうなっているケースがほとんどです。

ただ、この一言が後々の労務トラブルの入り口になる場面を、私は何度も見てきました。シフト制は人員配置を柔軟に組める仕組みである一方、契約の中身が曖昧なまま走り出すと、会社にもスタッフにも不利益が生じやすい働き方でもあります。

今回は基礎編として、シフト制とはそもそも何なのかという整理から、実務で起きやすいトラブル、そして経営の視点から見たシフト管理の考え方までをお話しします。

シフト制とは?労働基準法に定義のない「一般用語」

意外に思われるかもしれませんが、労働基準法の中に「シフト制とはこういうものである」という規定は存在しません。

1か月単位の変形労働時間制やフレックスタイム制は法律に定めのある制度ですが、シフト制という言葉は専門用語というより、世の中に広く浸透した一般用語に近いものです。

一般的には、契約の時点では労働日や始業・終業時刻が固定されておらず、毎月のシフト表が作成・明示されて初めて、いつ何時から何時まで働くのかが決まる働き方を指します。

通常の働き方と比べると分かりやすいと思います。土日祝日が休みで、平日は朝9時に出社して18時に退社する。こうしたルールが契約時点で決まっているのが通常の労働時間制です。

一方のシフト制は、フルタイム、週3日勤務、1日5時間程度といった大枠だけが決まっていて、実際の出勤日は前月の後半など、直前にならないと確定しません。労働日と労働時間が都度変動していくのが、いわゆるシフト制の特徴です。

シフト制と変形労働時間制の違い|混同しやすい二つの仕組み

労務管理の現場でよくある勘違いが、シフト制と1か月単位の変形労働時間制を同じものとして扱ってしまうケースです。

この二つは相性が良く、変形労働時間制を導入している会社の多くがシフト制を採用しています。ただし、イコールではありません。

例えば、出勤する日はシフト表で毎月変わるものの、出勤した日の労働時間は9時から18時までと完全に固定されていて、法定労働時間を超えるような調整は行わない。こうした運用であれば、シフト制ではあっても変形労働時間制を適用する必要はありません。

変形労働時間制は必要ないが出勤日だけ変動させたい場合は、シフト表の作成方法や周知時期といったルールを就業規則等に定めておく必要があります。一方で、変形労働時間制で求められるような労使協定の締結が当然に必要になるわけではありません。

ここを混同すると、不要な手続きに時間を割いたり、逆に本当に必要なルール整備が抜け落ちたりします。二つの仕組みの違いは押さえておきたいところです。

労働条件通知書の「シフトによる」がトラブルの火種になる理由

実務でとくに多く、かつトラブルにつながりやすいのが、労働条件通知書や雇用契約書の書き方です。

飲食店や小売店でアルバイト・パートスタッフを採用する際、時給や契約期間は書かれているのに、肝心の労働日や労働時間については「シフトによる」の一言だけ。この状態は、認識のずれを生みやすい契約形態です。

例えば、週3日で働きたいと考えて入社したスタッフに対し、人手が足りないという会社側の事情で、恒常的に週4日、週5日のシフトを組んでしまう。就業規則等の定め方によっては違法とまでは言えない場合もありますが、問題はその先です。

短い時間で働きたいスタッフの多くは、家庭の事情や学業、ダブルワークなど、フルタイムで働けない事情を抱えています。会社の都合でシフトが増え続ければ、離職につながるのは自然な流れです。

厚生労働省も、シフト制で働く方の雇用管理について留意事項を示しており、その中では出勤日数や時間帯の目安をできる限り明示することが求められています。契約の曖昧さを人手不足の調整弁として使う運用は、適切な労務管理とは言えません。

シフト削減で退職に仕向ける運用は、会社側のリスクが大きい

さらに注意していただきたいのが、会社都合で一方的にシフトを減らすケースです。

あのスタッフは能力が足りないから入れたくない、勤務態度が気になるので関わりたくない。そうした理由で、週3日の約束だったシフトを週2日、週1日と意図的に減らし、自主的な退職を待つ。労務管理上、とても危うい対応です。

シフトを減らしただけで文句も言わずに働いているのだから問題ない。会社側はそう考えがちですが、スタッフの側が、本来は週3日入れる約束だったのに不当に減らされていると認識し、採用時のメールのやり取りや面接時の説明を記録に残していれば、後から大きな問題になります。

労働基準監督署に相談が持ち込まれれば、会社都合による休業と評価され、休業手当の未払いを指摘されて行政指導の対象となる可能性があります。未払い賃金の請求に発展した場合も、明確な合意なく一方的にシフトを減らした会社側は説明に苦しむことになります。

能力に不足があるなら教育や研修を、態度に問題があるなら適切な注意と指導を行う。遠回りに見えても、それが本来の解決策です。

シフト管理は経営管理そのもの|曖昧な約束が招くもの

最後に、労働日数や時間を曖昧にしておきたいと考える経営者の方に、あえてお伝えしたいことがあります。

店舗運営の基本は、目標とする売上に対して原材料費や人件費を予算化し、計画どおりに実行して利益を残すことにあります。とくに飲食店や小売店では、人員配置がそのまま損益に直結します。スタッフが多すぎれば人件費が予算を上回り、少なすぎればサービスの質が下がって売上の減少を招きます。

過不足のない人員配置を実現したいと考えるなら、あなたは週3日、あなたは週4日と一人ひとりと明確な約束を交わし、その約束どおりに出勤してもらう体制が欠かせません。予定どおりに人が揃うからこそ、店舗が円滑に回り、数字も計画に近づいていきます。

シフトによるという言葉で柔軟性を持たせているつもりが、実態としては計画的な運営を手放してしまっている。そうしたケースは少なくないと感じています。

まとめ:シフト制の労務管理を見直し、後悔しない働き方の設計を

シフト制は柔軟な働き方を実現できる仕組みですが、契約内容が曖昧なままだと、会社都合でのシフト増減といった運用に流れやすく、労務トラブルの火種を抱え込むことになります。シフト制で働く方の労働条件を明確にしていくことは、現在の雇用管理における重要なテーマの一つです。

スタッフとの間に不要な摩擦を生まないためにも、計画的で健全な経営を続けるためにも、入社時の労働条件通知書での明確な記載と、それに沿ったシフト運用を意識していただきたいと思います。

私たち社会保険労務士法人ONE HEARTでは、シフト制の運用ルールづくりをはじめ、成長段階にある企業が「後悔しない働き方」を設計できるようサポートしています。曖昧なシフト管理から抜け出したい、就業規則を見直したいといったご相談にも対応が可能です。

社会保険労務士法人ONE HEARTはITツールを組み合わせて、効率的な労務管理を作り、会社の発展に貢献します。急成長するスタートアップから、長年続く老舗企業まで、幅広いクライアント様をご支援させていただいています。

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吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)

執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)

社会保険労務士法人ONE HEARTの代表社労士。慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。こうした経営者の負担を軽減しながら、自らも模範となる会社づくりを実践したいという想いから、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立。

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