このコラムは、Podcastラジオ “社労士吉田優一の「給与設計相談室」” 第109回の配信をもとに書かれた記事です。
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毎月の給与明細を見るたびに、「総支給額はこんなにあるのに、手取りがずいぶん減っているな」と感じたことはありませんか。給与明細に記載された天引き項目について、従業員から「このお金は一体どこに行っているんですか」と質問されることは珍しくありません。
こうした疑問に明確に答えられることは、従業員との信頼関係を築く上で大切です。今回は給与から天引きされるお金の行方と、その仕組みについて解説します。
給与明細の基本構造を理解する
給与明細のフォーマットは会社によって様々ですが、基本的には勤怠、支給、控除という3つの項目で構成されています。
勤怠欄には出勤日数や労働時間、残業時間などが記録されます。支給欄には基本給や各種手当など、会社から支払われる合計額が記載されます。そして今回の本題である控除が、天引きの項目です。
控除項目は給与計算において複雑な部分です。何が、どのような理由で引かれているのかを整理することで、給与明細の内容が理解しやすくなります。
給与計算のミスを見逃さないために
給与計算はミスが珍しくありません。担当者の思い込みや法改正の見落としなどにより、誤った金額が天引きされているケースも存在します。
従業員から「この金額はおかしいのでは」と相談を受けた場合や、労務担当者自身が違和感を覚えた場合は、早めの確認が大切です。過払いなら返金の手間が発生し、不足していれば従業員に不利益を与え続けることになります。
後から遡って修正するのは事務処理の負担も大きくなります。気づいた時点で迅速に対応できる体制を整えておくことが大切です。
実は税金より重い社会保険料の負担
多くの人は税金の負担が一番重いと感じているようですが、実態は異なります。ほとんどのケースで、税金よりも社会保険料の方が高額になっているのです。
月収30万円の人を例にとると、所得税は6,000円から7,000円程度ですが、社会保険料は約4万5,000円にのぼります。およそ15パーセントが社会保険料として天引きされている計算です。
消費税の増税には敏感な方が多い一方で、段階的に引き上げられてきた社会保険料率についてはあまり意識されていません。
健康保険料と介護保険料が支える医療と介護
天引きされる社会保険料のうち、代表的なものが健康保険料と介護保険料です。
健康保険料は病院にかかった際の医療費を補填するために使われています。窓口で支払う自己負担額は原則3割ですが、残りの7割はこの保険料で賄われています。だからこそ私たちは高度な医療サービスを比較的安い金額で受けることができるのです。
40歳以上から徴収される介護保険料も同様です。少子高齢化が進む中、介護サービスの需要は高まっています。介護施設を利用する際の自己負担以外の費用は、この保険料から支出されます。これらは自分や家族がいざという時に安心してサービスを受けるための、社会全体での備えといえます。
厚生年金保険料と雇用保険料の役割
天引き額の大きな割合を占めるのが厚生年金保険料です。将来の老齢年金の財源となるだけでなく、現役世代を支える世代間扶養の仕組みでもあります。
年金には障害年金や遺族年金という機能もあります。若くして亡くなった場合や重い障害を負った場合に、本人や遺族を支える貴重な財源となるのです。
雇用保険料は失業時の手当だけでなく、育児休業給付金や教育訓練給付などの財源としても活用されています。労働者が安心して働き続け、キャリアを形成していくために不可欠な要素です。
所得税と住民税の使われ方
天引きされる主な税金は所得税と住民税の2つです。
所得税は国の運営費として使われます。国防費や社会保障費、教育の振興など、国全体のインフラやサービスの維持に充てられます。一方、住民税は都道府県や市区町村に納める税金で、ゴミの収集や消防、教育、福祉といった地域の行政サービスを支えています。
会社によっては法定項目のほかに親睦会費などが引かれている場合もあります。何のための費用なのかを明確にしておくことで、従業員も納得感を持って仕事に取り組めるようになります。
まとめ
給与明細から天引きされるお金には、私たちの生活や将来を守るための重要な役割があります。しかし計算や運用は複雑で、法改正も頻繁に行われるため、正しく管理し続けることは容易ではありません。
社会保険労務士法人ONE HEARTでは、急成長を遂げる企業が後悔しない働き方の設計を行えるようトータルでサポートしております。給与計算の適正化や従業員への説明の仕方、福利厚生の設計など、労務に関するお悩みがあればぜひご相談ください。
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執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)
社会保険労務士法人ONE HEARTの代表社労士。慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。こうした経営者の負担を軽減しながら、自らも模範となる会社づくりを実践したいという想いから、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立。


