このコラムは、Podcastラジオ “社労士吉田優一の「給与設計相談室」” 第111回の配信をもとに書かれた記事です。
Podcastでは、給与・報酬の設計を中心に、会社を経営していくうえでぶつかる人事の課題についてお話ししています。ぜひフォローをお願いします!
日々多くの企業の労務管理に携わっていると、残念ながら「この会社、このままでは成長が難しいだろうな」と感じる場面に出くわすことがあります。言い換えると、そうした企業にはいくつかの共通点があるということです。
今回は、社労士という第三者の立場から見えてくる、成長を阻む要因についてお話しします。もしかすると耳の痛い内容もあるかもしれませんが、今の状況を変えるきっかけにしていただければ幸いです。
特徴1:事業計画がない
初めてお会いする経営者の方には、必ず「この会社を今後どうしていきたいですか?」とお聞きしています。この質問に明確に答えられるかどうかで、その会社の将来性がある程度見えてきます。
目指すゴールによって、必要な労務管理のレベルや優先順位は大きく変わります。たとえば、株式上場を目指すのであれば、厳格なコンプライアンス体制が求められます。事業承継や企業買収を視野に入れている場合は、それに応じた組織づくりが必要です。
一方で、具体的なゴールがない会社は、どうしても場当たり的な対応になってしまいます。目の前の問題に追われるばかりで、優先順位をつけた改善ができません。
ゴールがないということは、そこに経営者の志がないということです。志のないリーダーに、優秀な人材はついてきません。優秀な従業員が集まる企業を見ると、共通して経営理念やビジョンが現場まで浸透しています。この質問に詰まってしまうような会社は、組織としての推進力を失い、成長のチャンスを逃してしまう傾向にあります。
特徴2:社会保険の未加入
以前より減りましたが、いまだに「社会保険は希望者のみ加入」や「試用期間中は社会保険に入れない」という運用をしている会社があります。本来は、入社日から手続きが必要であるにもかかわらず、社会保険料の負担を避けるために、手続きを意図的にしない行為です。これは明確な法令違反です。
経営者が「保険料がもったいない」と考える背景には、短期間で辞めてしまう人が多いという悩みがあるのかもしれません。しかし、本来目を向けるべきは「なぜ数日で辞めてしまうのか」という点です。
新しい環境で頑張ろうと入社した人が、わずか数日や数週間で退職を決断するのは、会社側に何らかの不備がある可能性が高いと言わざるを得ません。目先のコストを惜しんで不正に手を染める姿勢は、従業員との信頼関係を根底から破壊します。
適切な福利厚生を提供することは、企業の社会的責任であると同時に、優秀な人材を惹きつけるための最低限のインフラです。ここを疎かにする会社に、持続的な成長は望めません。
特徴3:労働時間管理の放棄
「うちは自由な社風だから、労働時間は管理していない」と語る経営者がいます。しかし厳しい言い方をすれば、これは経営からの逃げです。
事業を継続させるためには、売上が費用を上回り、利益を出し続ける状態をコントロールしなくてはなりません。企業の費用の大部分を占めるのは人件費です。そして日本の法体系において、賃金と労働時間は密接にリンクしています。
つまり、労働時間を管理しないということは、最大のコストである人件費をコントロールする意思がないということです。原価計算も正確にできていないことを意味します。
適切な労働時間管理は、従業員の健康を守るためだけのものではありません。経営資源を最適に配置するためのデータ分析でもあります。近年注目されている健康経営においても、労働時間の適切な把握は経営の重要指標とされています。時間管理を曖昧にしている会社は、利益を出すための土台が崩れていると言わざるを得ません。
特徴4:変形労働時間制の悪用
制度の趣旨を理解せず、安易に1年単位の変形労働時間制を導入している会社も、成長が危ぶまれるケースです。
この制度は本来、学校の長期休暇や季節による繁忙の差が激しい業種において、年間を通じて労働時間を調整し、公私にゆとりを持たせるためのものです。しかし中には、割増賃金を支払わずにできるだけ長く働かせたいという目的で、この制度を悪用している会社が存在します。
1年単位の変形制を極限まで活用すれば、理論上は年間2,085時間まで基本給の範囲内で働かせることが可能です。しかし今の時代に、そのような効率の悪い環境で働きたいと考える人は少ないでしょう。
無理な労働時間の積み増しは、従業員のモチベーションを著しく低下させ、結果として生産性の低い組織を作り上げてしまうことにつながります。不適切な制度運用を見直し、いかに短い時間で高い成果を出せるかという視点を持つことこそ、現代の成長企業に求められる姿勢です。
特徴5:世間相場を無視した給与設定
「まだ利益が出ていないから、給料は低くても仕方ない」という言葉も、成長しない会社に共通しています。スタートアップや小規模企業において、資金繰りが大変なのは痛いほどよく分かります。
しかし、労働条件はあくまで市場との相対評価で決まります。世間相場を大きく下回る賃金設定では、人材を確保することはできません。手元に資金がないのであれば、金融機関から資金調達を行うなど、適切な労働条件を提示するのが経営者の役割です。
安く雇える人を探すのではなく、適切な対価を払って活躍してもらうという発想がなければ、組織は脆弱なままです。人が離れていき、最終的に苦労するのは経営者自身なのです。労働市場における自社の立ち位置を冷静に把握し、相場を意識した賃金設計を行うことが、採用難の時代を生き抜くためには大切です。
まとめ
プロダクトやサービスが良いことは、事業を伸ばすための絶対条件です。しかしそれだけで会社が成長し続けるわけではありません。強固な労務管理体制やバックオフィスという土台があって初めて、事業計画通りの着実な成長が可能になります。
今回ご紹介した特徴に、心当たりはありませんか。明確な事業計画がない、社会保険の手続きを適正に行っていない、労働時間の管理を放棄している、世間相場を無視した給料設定をしている。これらは、成長を阻む典型的なパターンです。
社労士法人ONE HEARTでは、本記事で触れたような課題を抱える経営者の皆様に対し、急成長する組織に相応しい働き方の設計をサポートしております。労務管理の体制構築や制度設計にお悩みの方は、ぜひ弊社のホームページからお問い合わせください。
また、社会保険労務士法人ONE HEARTはITツールを組み合わせて、効率的な労務管理を作り、会社の発展に貢献します。急成長するスタートアップから、長年続く老舗企業まで、幅広いクライアント様をご支援させていただいています。
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執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)
社会保険労務士法人ONE HEARTの代表社労士。慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。こうした経営者の負担を軽減しながら、自らも模範となる会社づくりを実践したいという想いから、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立。


