コラム

【休職】休職者と揉めてしまった時の対応

【休職】休職者と揉めてしまった時の対応

このコラムは、Podcastラジオ “社労士吉田優一の「10分で労務がわかるラジオ」” 第198回および第199回の配信をもとに書かれた記事です。

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目次

トラブルを防ぐ就業規則の設計と復職実務のポイント

「休職期間が満了したのに、本人はまだ戻れると言って譲らない。どう対応したらよいのか…」

そんなご相談を、経営者や労務担当の方からいただく機会が増えています。

休職制度は本来、療養に専念してもらい、回復した従業員に元気な姿で職場へ戻ってもらうための仕組みです。本人にも会社にも望ましい着地が用意された制度ですが、運用を誤れば、復職可否の判断をきっかけに深刻な紛争へと発展してしまうことがあります。

今回は、休職者と揉めてしまったときの実務対応に加え、そもそも揉めない仕組みをつくるための就業規則の設計と運用のポイントを整理してお伝えします。

休職をめぐるトラブルが「出口」で起きやすい理由

休職に関わるトラブルは、休職に入る場面よりも、休職期間満了時において、復職か退職かを判断するタイミングで生じやすくなります。

期間が満了しても病気が癒えず、これまでと同じように働ける状態に戻らなければ、就業規則上は休職期間満了による退職となるのが一般的です。しかし本人としては、療養中の心細さもあいまって、職場という居場所や肩書を失うことへの不安が募り、「なんとか復職させてほしい」と訴えてきます。

一方の会社側にも、安全管理や職場秩序の観点から復職を慎重に判断せざるを得ない事情があります。足元がおぼつかない健康状態のまま高所作業の現場へ復帰させれば、本人だけでなく周囲の安全にも関わります。職場の人間関係が揺らいでいたり、他のメンバーに過度な負担がかかっていたりするケースもあります。

両者の見解が真っ向からぶつかり合った末に、会社の退職通知を引き金として「まだ復職する権利がある」と争いに発展する、そうした泥沼化した相談は決して珍しくありません。

会社の経営体力に見合った「休職期間」の設定

トラブルを未然に防ぐための第一歩は、自社の就業規則が会社の規模や経営体力に見合っているかを見直すことです。

休職制度は法律で一律に義務付けられているものではなく、制度の有無や期間の設定は会社の裁量に委ねられています。そのため、大企業の就業規則をそのまま模倣して「休職期間2年」といった身の丈に合わない長期の規定を設けてしまうと、会社側に極めて重い負担がのしかかります。 在籍が続く限り社会保険料の会社負担は発生し続けますし、現場で負担をカバーしている他の社員との公平性や納得感を損ねる原因にもなりかねません。

とはいえ、休職期間を極端に短く設定するのも避けたいところです。期間が短すぎると、実態を伴って機能していないと判断されかねず、紛争で会社側に不利に働きます。

中小企業の現実的な相場感としては、3か月から6か月程度を目安に、自社が無理なく約束を守れる範囲で設計するのが妥当な水準です。

休職開始時の手続きにひそむ運用上の落とし穴

どれだけ就業規則を整えても、実際の運用がルール通りでなければ意味がありません。実務で特に落とし穴になりやすいのが、休職をスタートさせる際の手続きの不備です。

例えば、就業規則に「一か月間連続して欠勤した場合に休職を命じる」と定められているのに、欠勤が始まって数週間しか経たないうちに、会社が拙速に休職命令を出してしまうケースが見られます。従業員が年次有給休暇を消化していた場合、有給は法的に認められた権利であって「欠勤」には該当しません。本来であれば、休職の要件を満たしていないことになります。

こうした初動のズレは、後に意見が分かれた際に致命的な弱点となります。「休職に入った手続き自体が無効だから、期間満了による退職も認められない」と主張されれば、会社側はきわめて厳しい立場に立たされます。

休職に入らせる際には、休職期間の始期と終期、期間内に復職できなかった場合の取り扱い、休職中の社会保険料の精算方法などを明記した休職辞令や休職命令書を交付し、書面で合意しておきましょう。自社にこの雛形が用意されているか、一度棚卸ししておくことをおすすめします。

復職判断における主治医の診断書と会社の対応

復職時に従業員と会社の意見が食い違ったとき、まず確認すべきは主治医の診断書です。本人の健康状態を最もよく知る医療の専門家の見解は、判断の出発点となります。

ただし実務では、患者でもある従業員から「どうしても復職可能と書いてほしい」と懇願された結果、比較的容易に診断書が発行されるケースもあります。明らかに業務に耐えられないと見える従業員が「復職可」の診断書を携えてきたとき、会社はどう対応すべきでしょうか。

選択肢の一つは、産業医がいる場合に面談を設定し、客観的な見立てを仰ぐことです。もう一つは、主治医がどのような前提で復職可と判断したのかを、丁重な照会状で確認する方法です。

主治医は会社の具体的な業務内容まで把握していないことが少なくありません。デスクワーク中心の事務職であれば復職可能でも、運転業務や高所作業のように一瞬の不調が事故につながる仕事であれば、判断が変わってくる余地は十分にあります。実際の業務内容を整理して伝えることで主治医の見解が変わることもあり、本人や第三者を事故から守るためにも欠かせない実務だと感じています。

復職時に検討したいリハビリ勤務の活用と注意点

復職前に短時間勤務や出勤訓練といった「リハビリ勤務」を導入するかどうかも、現場でよくご相談を受けるテーマです。

メンタル不調からの回復期は、生活リズムが整ってきたとはいえ、自宅療養から一気にフルタイム勤務へ戻ると本人の負担は大きく、再発のリスクも見過ごせません。慣らし期間を設けて職場の緊張感や通勤リズムに少しずつ適応していく考え方には、一定の合理性があります。

一方で、リハビリ勤務中の事故に対する会社の責任や通勤災害の扱いといった論点もあり、専門家の間でも導入の是非については意見が分かれます。

私自身は、まず自社で対応できる人員体制が整っているかを冷静に見極めたうえで、制度として明文化するのか、個別対応にとどめるのかを判断するのが現実的だと考えています。リハビリ勤務すら継続が難しいという事実が、本人と会社の双方が納得する形で今後を話し合う材料になる場面もあります。

まとめ

休職をめぐる労務トラブルは、以下の3つを積み重ねることで、その多くを未然に防ぐことができます。

  1. 自社の身の丈に合った就業規則の設計
  2. ルールに沿った厳格な開始手続き(書面化)
  3. 医学的見地や業務実態を踏まえた慎重な復職プロセス

とりわけ「出口」での紛争を回避するためには、「入口」段階の手続きの精度が鍵を握ります。定期的に社内の書面や運用の流れを点検しておきましょう。

それでも意見が食い違ってしまった場合の判断は非常に繊細です。会社独自の判断で進めると、思わぬ紛争リスクを抱え込みかねません。少しでも迷われた際は、早い段階で専門家へご相談ください。

私たち社会保険労務士法人ONE HEARTでは、急成長を遂げる企業の皆様が後悔しない働き方を設計できるよう、休職・復職をめぐる労務トラブルへの対応や、自社の実態に合った就業規則の見直しを、現場の実務に即してサポートしています。

休職者対応や復職判断にご不安をお持ちの経営者様・人事担当者様は、ぜひ一度当社のホームページからお問い合わせください。初回のご相談は無料で承っております。貴社の状況に合わせた最適な進め方を、一緒に考えてまいりましょう。

また、社会保険労務士法人ONE HEARTはITツールを組み合わせて、効率的な労務管理を作り、会社の発展に貢献します。急成長するスタートアップから、長年続く老舗企業まで、幅広いクライアント様をご支援させていただいています。

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吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)

執筆:吉田 優一(社会保険労務士法人ONE HEART 代表・社労士)

社会保険労務士法人ONE HEARTの代表社労士。慶應義塾大学中退後、社会保険労務士試験に合格。その後社会保険労務士法人に勤務し、さまざまな中小企業の労務管理アドバイス業務に従事する。その中で、正しいノウハウがないためヒトの問題に悩む多くの経営者に出会う。こうした経営者の負担を軽減しながら、自らも模範となる会社づくりを実践したいという想いから、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立。

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